結局、烏野との練習試合には負けてしまって。ピンサーとして入った及川さんは速攻でどこか行くし、金田一もどこか消えるし。どっちも影山に突っかかりに行った気がする。俺もちょっと影山に聞きたい事があるから…探すか。そう思って体育館を出ると、試合前…というか試合中もガン飛ばしてたメガネが俺を待ち構えていたようにそこに居て。

「…何か俺に用?」
「用っていえば用かな。国見君?」
「…接点、無いと思うんだけど」
「君と直接関わりは無いよ。天城経由って言ったら察しが付く?」
「ふぅん、さくらと」
「そうそう、僕ら天城とオトモダチだからさ」
「ツッキー!楽しそうなところ悪いけど今回は喧嘩売るのやめよう?菅原さんの事といいややこしくなるから!」

なんかもう一人いた。「えーっと、俺ら天城ちゃんの友達の山口と、こっちがツッキー…じゃなくて月島です!」と挨拶をされた。ああ、そう。「国見英」とだけ言うと「知ってるよ」と月島に返された。いちいちムカつくなこいつ。「大事な幼馴染って話は前に聞いたよ。前に」と煽る月島に苛立ちは募る一方だ。こいつにさくらのこと聞くのは癪だ。俺は二人の横を通り過ぎようとする。、が月島に腕を掴まれた。

「ねぇ、天城の事には興味なし?どうでもよくなった?そうだよね、中学の時はよーく君の事天城から聞いてたけど高校入ってから…いや、もう去年の秋あたりからかな?君の事全く聞かなくなったし。半年くらい関わりなくなったら赤の他人だよね」
「…なんなんだよお前。何が言いたい?」
「別に。ただ本当にどうでもよくなったんならもうそれはそれでいいや。じゃあどっかの誰かさんが天城を掻っ攫っても問題ないわけだ」
「それが、あんただって言いたいわけ?お生憎と、先日吹っ切れたから…そう易々と誰かさんにくれてやんないよ」

掴まれた腕を振り払い月島を睨む。すると一瞬だけキョトンとした顔をして月島は笑った。むかつく。中学の時からさくらと知り合いだとか、そんなの俺全然知らない。チッと舌打ちをすると月島は満足そうな顔をした。俺コイツとは絶対友達になれない。

「ツッキー?」
「山口、もうバス出るかもしれないし行こうか」
「…え、え?」
「ほら行くよ。ああ、あとまだただの幼馴染君。掻っ攫うのは僕じゃないから。王様と仲良く話してるところ学校で見たし、僕たちの先輩ともなんだか仲が良いようだから」

じゃあね。と2人は行ってしまった。最初から最後までムカつく奴だった。王様…なにさくら、影山と仲良いの?中学の頃あまり近づけさせないようにしてたのに。それに、アイツらの先輩?ってことはバレー部の誰かってこと?ああもう苛々する。俺の知らないところで知り合いの輪を広げるなよ、ばかさくら。今まで放っておいて後手に回った俺が悪いんだけどさ。はぁ…俺は溜息を吐いた。



◇◆◇


「ツッキー、菅原さんは兎も角、天城ちゃんと影山って仲良いの?」
「前一度だけ天城王様が話してるの見た」
「え」
「一度だけ」

ツッキーは楽しそうに言う。一度だけってそれ、仲良いかわからないじゃん…。「いいんだよ、半年ほったらかしにしてたんだから、少しくらい焦ってもらわないとつまらない」なんてツッキーが言う。国見君不憫だなぁ…、ツッキーが楽しそうだからまぁ…って良くないよ!国見君が色々吹っ切れたって言ってたから良かったものを、これ以上拗れちゃってたら収集つかなくなるよ。まったく…


「あ、ツッキー。俺ちょっと忘れ物しちゃったから取りに行くね。先行ってて!」
「は、忘れ物って」
「ごめん!」

ごめんに色んな意味が含まれてるんだけど、気付かれちゃうかな。きっと、今以上にツッキーがいじり倒すであろう2人にちょっとだけ手助け。急いで体育館前まで戻ると少し先に国見君が歩いていた。「え、えっと…く、国見君!」と呼ぶと国見君は僕の方へ振り返った。よかった、無視されなくて。

「さっきの、山口だっけ?」
「そうそう!さっきはツッキーがごめんね。でもツッキー、天城ちゃんの事を思っての事なんだよ」

そう言うと国見君は少し複雑そうな顔をした。うーん、これはなんだか関係が色々拗れる予感…試合前の菅原さんの勘違いといい…。そう思っていると国見君が口を開いた。


「あのさ、君らってさくらとどこで知り合ったの?」
「え?あ、俺ら中学の頃塾通ってて、その時天城ちゃんと同じクラスだったんだ」
「へぇ…」
「2年の頃は天城ちゃん、いっつも国見君国見君って言ってたんだよ」
「…あっそう、」

だからさ、と俺は続ける。前みたいに、なんだか聞いてる方が恥ずかしくなるような、そんな事をとっても楽しそうに話をする天城ちゃんが見たいよ。


「どういう事情か俺たちは知らないけど、早く仲直りしてあげて。天城ちゃん、ずっと元気ないから」
「…わかってるよ」
「うん。あ、でね。天城ちゃん部活も委員会も入ってないんだけど、毎日6時までは図書室に居るみたいなんだ。そのあと一人で帰るから、6時に烏野に来たら捕まえられると思うよ」
「ありがと。日曜までみっちり部活だけどね」

ま、月曜部活休みだし。なんとかするよ。そういう国見君に俺は笑って頷いた。

「ところでさ」
「うん?」
「影山と仲が良いって何。あと先輩って」
「あー…あれはまぁ、針小棒大っていうか…」
「ああそう、アイツの法螺話ってこと」

ぜ、全部が全部そうってわけじゃないけどね…。なんか菅原さん天城ちゃん、の事気に入ってるみたいだし。影山は知らないけど。不機嫌そうな国見君に「お、俺は国見君応援するから!そ、それじゃあね!」逃げるように俺は駆け出した。
玄関まで走るとツッキーが居て「お節介な忘れ物ゴクロウサマ」なんて言われた。やっぱりツッキーには全部御見通しだった。

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