青城との練習試合だ。俺は準備をしながらそっと向こうの選手を盗み見た。隣に居た影山も、そちらを見る。そっと口を開く、多分ひとり言だったんだろう。


「金田一と国見、レギュラーか…」
「ねぇ王様」
「おいその呼び方止めろ」
「国見ってやつどれ?天城の幼馴染の」
「あ?…あの真ん中分けの奴。さっきお前と田中さんが喧嘩売ってた金田一の隣の」
「ふーん、アイツね。なんかイメージと違った。天城といつも一緒に居たって感じだったからもっと、天城に似てるのかと思った。取り敢えず王様、あれといざこざあったんでしょ?煽ってきてよ」

は?と影山は不機嫌な顔をした。だってちょっとくらい遊んでいいじゃない。あの澄まし顔してる奴に。天城は、あんまり元気ないのにさ。「いやいやお前も澄まし顔じゃねーか」「王様も人の事言えないよ」「あ?」ツッキー!そこで喧嘩始めるの止めて!山口の声で一度言い合いはストップした。



◇◆◇


「…なんかお前、影山とその隣に居るでかいヤツに睨まれてね?」
「知らない」
「いやー…確実に」

確かに、影山と…いやどちらかと言うとその隣の眼鏡の奴にガン見されていた。しかも目が合うと嘲笑うかのような笑みを浮かべるのだ。なんで俺煽られてんの?なるべく目を会わせないようにする。そういえばさくら烏野だったな。影山はさくらに会ったんだろうか。面識はそれほどなかったはずだけど、顔は知っている筈。…あれから、さくらの姿をみていないな。俺はぼんやりとさくらの姿を思い浮かべる。

「おい国見」
「なんですか岩泉さん」
「この前までの荒れたバレーは許さねーからな」
「、大丈夫です」

それ、この前吹っ切れましたから。もう、後手に回るつもりありませんし。そういうと、岩泉さんは後ずさりした。なんですか、その反応。

「いや、お前天城以外の前でも笑えるんだな」
「…岩泉さん、俺の事なんだと思ってるんですか」
「ははは!悪い悪い。及川の奴、この前は余計なことしたんじゃないかって思ったけど…まぁ、なんだ。頑張れよ」

バシッ!と背中を叩かれた。岩泉さん自分の腕力自覚してください。ひりひりと痛んだ背中。まったく…練習試合だから程よくサボる気満々なのに。未だに煽る様な表情でこちらを見る眼鏡に、俺も睨みを入れた。及川さんが来るまでは、まぁ程よく相手してやろう。「お前がちゃんとアップしてるだと…」と驚愕の表情を浮かべる溝口コーチのセリフりちょっとやる気が下がった。



◇◆◇


「ツッキー、なんか国見君?に睨まれたね」
「そうでなくっちゃ。煽ってるんだから」

なんか、楽しそうだねツッキー。当然。性格悪いかもだけど、僕は人を煽るの得意だし。これが良い方向へと向かえばいいんだけど。そう思っていたら菅原さんに「なんか月島やる気あんなー?」と言われてしまった。そこまでわかりやすいかな、僕。

「菅原さん、昨日はありがとうございました」
「んー?ああ、さくらちゃんな。月島に言われた通り警戒心あるんだか無いんだかわからない子だなぁ…ちょっと意地っ張りで」

でもまぁ、俺の事孝支君と呼ばせることに成功したぞー!という菅原さんに僕の動きは止まった。いくらなんでも、仲良くしすぎではないだろうか。

「可愛いよなぁさくらちゃん」
「…菅原さん」
「どうした、月島?」

僕は顔を押さえた。菅原さん、何かを勘違いしているのではないだろうか。にこにこと僕を見る菅原さんは何処か自慢げで、言ってしまえば僕を煽っているように見えて


「今日さくらちゃんにも応援しに来てもらえばよかったな、月島が出る試合なんだし」
「…菅原さん、とりあえず後で話を…」

僕は断じて天城を好きというわけではない。

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