「なんつー面白そうな事、俺抜きでやってんだよ」
「クロうざいよ。黙って食べて」
「秋刀魚以外のおかずが手抜きなんですけど結さん?異議申し立て」
「仕方ないじゃん。梟谷マネになってたんだから。それにこれ七輪で焼いたんだよ?庭で」
「お隣さんに文句言われなかった?」
「おすそ分けしたらすごい喜ばれた」
「ならいいや」
「いやいやいやいや!お隣さんとの関係も大切だけど、七輪焼秋刀魚超旨いけど!?」
「なんか文句あるんなら明日の秋刀魚入りお弁当無しだよ」
「結、クロのお弁当無しでいいよ」
「いじめかよ」

相変わらず忙しいらしい両親。子供たち3人で食卓を囲む。七輪秋刀魚で精いっぱいで、たしかに他のおかず全然作れなかった。仕方ないじゃん、結構帰り遅くなっちゃったんだから。流石にお湯入れるだけでできる味噌汁出しちゃったのはどうかと思ったけど。ていうかクロに文句言われる筋合い無いよね!孤爪家の食卓なんだけど!研磨なんて文句ひとつ言わずに食べてくれるのに。

「ちゃっかりアップルパイ作ってる辺り、俺のモヤモヤ感が半端無い」
「優先順位」
「俺のが低いってか」
「むしろ最下位」
「お前俺の事嫌いなの?」
「研磨、おいしい?」
「おいしい」
「無視やめろ。飯がアップルパイとか俺は認めん」
「クロ五月蠅い」
「本当に五月蠅い」
「お前ら…!」

なに?文句あるのなら秋刀魚下げるよ?そういうとクロは押し黙って黙々と食べ始めた。よし平和。御飯が食べ終わったところで机に置いていた携帯電話が鳴る。見るとメールで。あ、国見君からだ。

「お、例の国見君か?」
「クロうっざい」
「なに、なんて書いてあんの?」

早く読めよ、とにやにやするクロをガン無視する。
研磨、眠いならお風呂入ってもう寝なよ。アップルパイ片手に船を漕ぐ研磨に声を掛けメールを開く。

【こんばんは、今家に着きました。電話しても良いですか?】

で、電話だと…。今この状況で電話はちょっと嫌だなぁ。ごめんね、と返そうとしたらクロに携帯電話を奪われた。「ちょっと!返してよ!」と奪い返そうとするも、クソ背の高いクロの手から奪い返せるわけもなく「えーっと、国見君の電話はー・・・っとこれか」そして電話を耳元へ。ちょっと待てクロこの野郎、なんであんたが電話かけてんの。

「あ、もしもし?噂の国見君?俺結の友達の黒尾鉄朗、以後よろしくー」
「死ね、クロ」
「ご…っ!?おま。脛は反則……っ」
「え?もっと急所の方がよかったって?」
「恐ろしいわお前!」
「取り敢えずそれ返せ」
「クロ…いい加減にしなよ。さっさと帰って」
「研磨ひでぇ」

はいはい、邪魔者は帰りますよー。やっぱりすこしニヤニヤとするクロは私に携帯電話を返す。絶対帰る気ないでしょクロ。画面には国見君の名前と通話中という文字。はぁ…私は溜息を吐く。「帰らなくていいから取り敢えずリビングから出るな。出たら死ぬものと思え」と釘を刺し、私は自室へと向かった。


「もしもし…お待たせしました」
『あ、先輩。吃驚しました』
「馬鹿がごめんね」
『…いえ…彼氏ですか?』
「ア?」
『あ、いやなんでもないです』

想像以上に低い声が出て自分でもびっくりした。「いやいや違うんだよ国見君」私はさっきの言葉を否定するように口を開く。

「クロは弟の幼馴染だよ」
『弟、ですか?』
「うん、お母さんが再婚したときお父さんと一緒に弟もできたの。1つ下の」
『どうせ可愛がりまくってるんでしょ、先輩の事だから』
「大正解だよ国見君。これが可愛くって可愛くって…飛雄ポジションだよ」
『可愛がってる図は容易に想像つきます』
「あははは!」
『…すこし、ずるいなって思います。先輩の近くに居られる弟が』
「うん?国見君は私の弟になりたいの?」
『それは嫌です』

迷わずに間髪入れずに嫌って言われた。流石に悲しい。

『弟は、いつになったって弟じゃないですか』

弟じゃ、嫌です。
そういう国見君に悶えた。やばい、ツボる可愛い可愛いほんとに可愛い。今すぐ抱きしめたい。ずるいってなんだよ、嫉妬可愛い。うう。ずるいのはどっちだよばか。

<< | >>