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【及川徹の話】



「ほんっとにムカつく!」

この1週間、いくらメールを送っても、いくら電話を掛けてもあかりからの応答は無かった。メールはそもそも開いているかも怪しいところだ。少し前からラインのお友達かも?の欄にあかりの名前が追加され、そちらにもメッセージを送りまくっているが既読と付く事は無かった。つまりガン無視。


「というかなんでラインに追加?」
「アプリ落としたんだろ」
「なんで?」
「…いや、なんでって聞かれても。友達で来てライン交換しようってノリじゃねーの?お前みたいに」
「あいつにラインする友達出来ると思ってんの?ないないないない。彼氏とか?いや絶対ない。あいつのあの性格で都会人彼氏…ねーよ絶対ねーよ!あかりまぁまぁ可愛いけど絶対ないないない」
「…なんか、いや何も言うまい…」

呆れ顔の岩ちゃんに首を傾げながら、震えるスマホをポケットから取り出した。マッキーかな、それとも昨日ラインID交換した女の子かなぁ、なんて画面を見ると通知が。…ん?首を傾げながら俺はアプリを起動させる。なんかグループの招待受け…【あかりちゃん大好き人間の集い】…は?

「なにこれ」
「及川早く着替えろよ」
「…は?」
「は?じゃねーよなに喧嘩売ってんだぶん殴るぞ」
「ちょちょちょちょ!岩ちゃ」
「うるせぇ!」

ゴッ、と鈍い音がした。岩ちゃんマジ殴りしやがった…!涙目になりながら「これこれ!岩ちゃん見て!」とスマホの画面を岩ちゃんの顔面に押し付ける。見えねーよ!とまた殴られた。

「…まぁ、名前の通りなんじゃないか?」
「俺あかりだいすきじゃないし!」
「そーかい」

ほんっと意味わかんない!メンバー誰だよ!!と参加マークを押してメンバーを確認する。「…参加するのかよ」と岩ちゃんの声はスルーした。えっと…クロ・徹君だよ☆と表示されていた。

「って誰だよ!クロって!」
「しらん。あといい加減着替えろ」

制服に着替える岩ちゃん。そういや部室もう俺ら以外居ないじゃん。ていうか及川さんまだジャージなんですけど。もういいやジャージで帰る。荷物をまとめているとぴょこぴょこと通知音。俺は画面を睨みつける。




<とりあえずメンバー三人で>

--やくもりがグループに参加しました--

<おい、俺を数に入れるな>
<あとグループ名は変えろって言ったろ。あかりが居た堪れない>

<夜久もちゃっかり参加してんじゃねーかw>
<既読2ってことは及川兄みてるー?>
<ハジメマシテ、あかりちゃんの先輩のクロ(男)ですw>

「岩ちゃん…男だった…しかもあかりの事名前で呼んでる」
「めちゃくちゃ煽ってんなこいつ」
「ちょっと岩ちゃん、このグループ招待するから入って」
「なんでだよ」
「なんでって…」

だってさぁ…と言葉を詰まらせている間にもぴょこぴょこと通知が鳴るスマホ。取り敢えず何か返信してみろよという岩ちゃんに俺はスマホの画面を睨みつける。


<はじめましてっ☆くそ可愛くないあかりの兄の徹君です!>

「これでどう?」
「あー?いいんじゃね」
「画面見ずに言わないでくれる!?」
「どうせ下らねーこと書いてんだろ、見なくてもわかる」


<敵として認識>
<俺用あるから2人でやってくれ、じゃあ>



「俺帰るわ」
「ちょっと岩ちゃん!?」
「ほら、あっち側も1人帰るみてーだし?2人で言い合いしてろ。鍵よろしく」

そう言って岩ちゃんは本当に帰ってしまった。というか部室もう誰も残ってないんだけど。溜息を吐き、椅子に座る。もうちょっとしたら、出よう。


<夜久の用ってなに?>
<あー…>
<なんだよ>
<お前今どこ>
<研磨ともう直ぐ家着く>

<おーい?>
<夜久ー?>
<おちた?>

2人で話すんなよ、俺は入れないじゃん。と思いながら画面を見つめる。やくもり…夜久と呼ばれる人物の返信が遅い。暫くして


<あかりとデート>

「はぁあああああ!?」
<!?ha!?は>

<リエーフも一緒>
<ただ飯食いに行くだけかよ!夜久のくせに騙しやがって>
<いつもの仕返しだ>
<俺お呼ばれしてないんですケド>
<あかりが黒尾やだってさ。本格的に嫌われてんぞお前w>

スマホを握る手が震える。随分とあかりと仲が良さそうで腹立つ。イライラする。あかりとご飯、ずるい。俺なんか、メールの返信ひとつ無いというのに。つーかこいつら個人で話せよ。こんな、俺に見せつけるようにさ…。俺は、文字を打つ。イライラする、むかつく。何勝手に、あかりと仲良くなってるんだよ。

<お前ら、あかりの何?>
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