▼△▼


はじめまして、こんにちは
どうぞ宜しくお願いします






「何か、失礼な事を言われた様な気がする」
「…気のせいじゃないですか?黒尾先輩」

黒尾先輩の性格がひん曲がってるとか、そんなの全然思ってないですし、はい。無事体育館に木兎先輩を連れてくる事が出来た。途中何度寄り道をしたことか…「いやーでかい小学生の面倒見るの大変だっただろ?」そう笑う黒尾先輩に曖昧に首を傾げた。だって本人目の前に居て同意できるわけがない。

「…徹より、扱いが楽です」
「あれ以上の奴が居たら驚きだわ」

まぁ冗談…1割方の冗談は置いといて、「木兎さん勝手にあちこち歩き回らないでください、いっつも迷惑かけて…」とても真面目そうな人が仁王立ちしてさっきの木兎先輩を叱りつける様子を見る。「いつもの事いつもの事」呆れた顔で黒尾先輩も木兎先輩を見る。


「木兎を叱りつけてるのが赤葦、木兎の保護者だ」
「黒尾さん、不名誉なんでやめてください」

赤葦さんというらしい木兎先輩の保護者さん。しっかりしてるし3年生でしょうか「あかりちゃんの1個上だな」黒尾先輩よりしっかりしてらっしゃる「おいあかりちゃん絶対失礼な事思ってんだろ」思ってないです、失礼じゃないです当然のことを思ってるだけです。

「こっちとらあかりちゃんの無表情の中にある感情が見えてんだ、隠し事はできねーぜ?」
「ひひゃひでふくろほへんはい」
「よく伸びる頬だなー」

黒尾先輩、こういうことするからそう思われるんですよ。見てください研磨さんの表情を、なんとも言えない表情です。取り敢えず助けてくれると嬉しいです研磨さん。


「クロ」
「なんだ研磨」
「写真撮っていい?」
「は?」
「その写真をあかり兄に」
「おい馬鹿やめろ」

あ、手が離れた。「お前徹にこんな状況見られたら『なにあかりのほっぺ触ってんの?え?誰の許可得てあかりの素肌に触ってんの?お前つーか羨ましいすごいふにふにしてそうなほっぺ触ってずるい俺だってあかりに触りたいのに頭撫でて肌触れて甘やかして抱きしめて…ああああ、あかりに会えないし触れないのほんと辛い。マジ黒尾殺す絶対殺す』とか言うじゃん!1時間くらい小言言われるじゃん!」
「言われたことあるんだ…小言1時間」
「デレるあかりちゃんの自慢話はしないことにした」
「じゃあさっきの写真送ったら3時間くらいかな」
「やめろ、現実になる」

徹と黒尾先輩はほんとうに仲が良いなぁ。別に羨ましくはない、そう、全く持って羨ましくない。




「…あかりちゃん、何その目」
「俗に言うツンデレとか、そういう類じゃなく羨ましくないです」
「なんとなく察した」
「徹と仲良しな黒尾先輩がいつしか徹のようになるんじゃないかと不安で」
「何その誰も幸せになれない呪い」
「黒尾先輩、徹にならないでくださいね」
「ならねーよ!」


…おい、お前らお喋りしてないで部活始めんぞ…。静かに低く声を発した夜久先輩に黒尾先輩と二人で肩を揺らした。居たんですか夜久先輩…「最初っから居たぞ」それは大変失礼しました。


「夜久さん小さいから見えなかったんじゃないですかー?」
「リエーフ、外周」
「え」
「行け」
「…ウッス」





▼△▼




「…木兎先輩って、すごい人なんですか…?」
「あの人全国で5本指に入るスパイカーだよ…はぁ、疲れる…」

練習試合が始まって1セット目、20-25で相手方…梟谷学園高校がセットを取った。2セット目が始まるほんの少しの時間、ドリンクを配りながら目を見張る。すでに脱力気味の研磨さん、仕方ない。だってすごい、まだ全然素人だけどすごいって分かるスパイクだった。腕もげそう…。全国で5本指のスパイカーって物凄いことなんじゃ…「ちなみにウシワカは3本指に入るぜー」黒尾先輩の言葉に流石若さんだと思った。


「くっそ…相変わらず強烈だな木兎、上手くあがんねぇ」
「1セット目はしゃーねぇわ。つかよく上げてくれてるよ夜久は」
「そもそも上げられないんじゃ話になんねーし。綺麗にセッターに返したいと思ってんだけどな…悪い研磨」
「ん、大丈夫クロがなんとかする」
「俺任せかよ、まぁなんとかするけど」

楽しそうだなぁ、なんて。私には「すごい」って思うだけで楽しいなんて感覚は分からない、そりゃあ選手とマネージャーだから感じ方は全く違うだろうけど。でも。


「うーん……?」
「どうしたー?あかり」

リエーフ君が私の顔を覗きこむ。うん、なんか…違うんだよなぁ…自分の中の何かが。あの時の感覚は、湧いてこない。私は、あの感覚をもう一度味わいたかった。


ジャンプサーブ

徹のジャンプサーブを見た時のあの感覚。カタカタと震える手、響く無音。後の歓声と徹の表情。私が心の底からバレーに惹かれたあの映像。
あの感覚を、もう一度。きっとそれは凄く難しい事。でも、やっぱり見たいもう一度、何度でもあの感覚を。





「…私ってば、隠れブラコンなのかもしれない…」
「…は?」

小さく呟いた言葉は、リエーフ君の耳だけが掬い取った。






------------------

ブラコンでもなんでもなくただ徹君のバレーボールに恋してる乙女あかりちゃん。最近管理人が押してるキャラへの伏線(のつもり)
<< | >>