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【東月進夜の話】


さてどうしようかと考える。なにやら実家に帰っていたらしい及川は「取り敢えず荷物置いて…気が向いたら戻ってくるね…」と体育館を出て行ってしまった。あそこまで呆れている及川の顔を見るのは初めてだった。そりゃそうだ、こんなアホみたいな事が繰り広げられているんだから。つーか俺らバスケ部はわりとのんびり部活だけど、バレー部は良いのか。よくないだろ、公式戦とか近いんじゃなかったか?「ナイッサー!」と掛け声を上げるバレー部員。それバスケットボールだから、ナイッサーってサーブ?ただのシュートだぞそれ。「あああああ!」と俺は頭を抱えて声を上げる。

「どーしたよ東月」
「うるせぇ二枝馬鹿二枝阿呆」
「…お、おこなの東月…?」

ああ、激おこだよこの野郎。どう収拾しろっていうんだこれ。バレー部の夜久先輩とやらはバレー部の良心ではなかったのか。わりかし小さめの身長の先輩を見つめる…。うん、楽しんでますね先輩。誰かこいつ等を止める方法を教えてくれ。


「東月ぃー!メンバーチェンジ!ほれ!」
「はー…イッ!!」
「あがっ!?」

取り敢えず先輩の顔面目掛けてボールを投げつけた。「と、東月…おこ…げきおこ…?」とガタガタ震える二枝。たんたんたん…とゆっくり床に転がるバスケットボール。呆然と俺を見るバスケ部員とバレー部員。

「てめぇら部活しろ」

言いたい事はそれだけだ。



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【黒尾鉄朗の話】


取り敢えず、飯奢る奢らないはうやむやになった。バスケ部1年にはとんでもない魔王が居たものだと俺達は震えあがった。どうやらあかりちゃんとリエーフと仲が良いクラスメイトだったようだ。そういえばあかりちゃんクラスで仲良い男子が居るって聞いたな…これはうかうかしてらんないんじゃねーの夜久?にやにや顔で夜久を見る前に魔王もといい、バスケ部の東月が


「誰も気づいてないようなんで言いますけど、及川さっきまでそこ居て、呆れながら寮に戻りましたよ」


呆れてものも言えなかったようです。そんな爆弾を落とした。バレー部の間に冷たい空気が流れる。全員顔色が悪い、一番顔色悪いのはいわずもがな夜久である。


「え、あかりもう帰っちゃったの?」
「…は、リエーフあかりちゃんが来てたの気づいてたのか…?」
「え?はい。何してるのって聞かれたんでバスケしてる!って答えました」
「……いや、その通りなんだけど」


あかりちゃんが白い目を俺達に向ける表情を思い浮かべてしまった。ヤバイ、これはヤバイ。バレー部良心の海が用事で休み、さらに夜久も割と乗り気だった。止める者は誰も居なくて。

「取り合えずあかりちゃんに連絡!って俺ブロックされてるんだっつーの!夜久!」
「この流れで俺もブロックされてたら泣くぞ」
「強く生きろ!夜久!!」
「ブロックされてる前提なんですね…先輩…」

「つーか俺あかりに帰ってきたら部活に顔出せよってメッセージ送ってんだけど…それでこのザマとか…」気持ちはわかるがほんと強く生きろ夜久。取り敢えずメッセージ、いや電話しろ電話!


『…この電話番号は、現在使われておりません。』
「嘘吐けあかり」
『バレー部限定で着拒です。今日はもう顔出しませんからね』
「俺らが悪かった」
『はい、反省してください。遠い目してた東月君にもちゃんと謝ってください』
「すいませんでした」

本人いないのに頭下げる辺り、めっちゃダメージ受けんな。笑う俺に『ちなみに黒尾さんは永久ブロック確定しました、おめでとうございます』なんて言われて本人が居ないのにその場で土下座した。


「と、取り敢えずあかり」
『はい?』
「お、おかえり!」
『…台無しです夜久先輩のばーか』

ぶつんと切られた電話に夜久が倒れた。強く生きろ夜久。
バスケ部が活動する体育館から出る時、魔王様と目が合った。すごい冷たい目を向けられた。心が痛い。


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「なにやってんのクロ」
「お前どこ居た!?」
「バスケなんか出来ないからバレー部の方の体育館居た。なんかあかりがすごい呆れた顔して前通って行ったけど」
「………」

研磨君はゲームをしてました
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