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これが日常なのか
私は昔の私を笑った



「あかりー!」
「リエーフ君、朝練お疲れ様」
「本当に疲れた!夜久さんのおにー!」
「夜久先輩、優しそうなのに」
「それはあかりにだけー!」

ぐでーん、と私の背中に抱きつくリエーフ君。身長的に、だいぶリエーフ君が辛い体制なのでは。いや、辛いのは私なんだけど。まぁいいか、と私は足を踏み出す。…重い。後ろに手を回し、リエーフ君の頭をわしゃわしゃとする。くっそう、サラサラの髪が羨ましい。「んふふー、くすぐったいあかり。俺の頭撫でてどうしたの?」なんてリエーフ君が言ってきた。違う、無言の抵抗だよ、でも通じないので今度はべしべしと叩いてやった。でも効かない。むぅ、もうすぐおでこと膝がこんにちはしそうだよ。ふと、誰かの足が視界の隅に入った。


「…ねぇ、灰羽くん」
「あ、松本さんおはよう!」
「おはよう。…ねぇ灰羽くん、あかりちゃんから退いてあげて?」
「え?」

「おーいリエーフー、なんか及川ちゃんがいつも以上にちっさくなってんぞー」
「及川が潰れてる」
「及川がリエーフおんぶとか無茶振りすぎる…っ!」

そこで漸く私の状態に気付いたらしいリエーフ君が「わー!?ごめんあかり重かった!?」と飛び退いた。漸く離れた体温。重かったとか、そういう次元じゃないよリエーフ君。べしべしとリエーフ君の頭を叩く。勿論効いていない。「これ、あかりが俺にじゃれてるわけじゃなかったのか!」そうリエーフ君が言うと助けれくれた二枝君が笑った。笑い事じゃない。「そうだ、笑い事じゃないぞ二枝、リエーフ」東月君は無表情に言い放つ。


「及川みたいに小さいヤツに、及川2倍くらいの…いや3倍?くらいのリエーフが乗っかったら」
「私そんなにちっさくない」
「身長じゃなくて体重の話な。…でそんなリエーフが乗っかったら及川が潰れるだろ。内臓出たらどうするんだ」
「おっまえなー…それくらいで人間の内臓が」
「出ないって言いきれるのか?俺は出ちまうと思う。うっかりってあるだろ?」
「…マジか…俺何回か東月に突進してんぞ!?」
「実は臓物出そうになってたの何とか飲み込んでた」
「…と、東月…今まで悪かった!今度からは気を付ける…っ」
「お、俺もあかりの内臓出るのやだから気を付けるっ!」

あー…。私と松本さんは見守る。今まですいませんでしたぁああ!と叫ぶリエーフ君と二枝君。東月君が私に近づいてきた。



「あそこまで馬鹿だと将来が心配なんだけど。まぁこれで及川がリエーフにのしかかられる事も無いだろう」

ぽんぽん、と頭を撫でる東月君に私はお礼を言う。


「東月君、ありがとう」
「男女のスキンシップじゃないもんな。嫌なときは嫌って言えよ及川」

じゃないと、というところで東月君の言葉が切れた。ぐぇっ、カエルがつぶれたような声が私の喉から出た。

「あかり!内臓出てない!?大丈夫!?」
「現在、進行形で…っ」
「馬鹿かお前やめろ」
「灰羽くんやめて」

東月君と…あれ?松本さんがリエーフ君の頭を思いっきり叩いた。松本さ…え?「大丈夫あかりちゃん」と私を抱きしめる松本さんにあれ?と思いながらも「大丈夫だよ」と答えた。


リエーフ君が居なかったら、私はこうやってクラスメイトと喋ったり、騒いだりできなかっただろうなぁ。変わるために来た、なんて口先だけの言葉だった。入学式の時、リエーフ君が私に話しかけてくれなかったら私は、結局私のままだっただろうから。



「あかりちゃん、よかったら今日のお昼一緒に食べよう?私の友達がね、あかりちゃんとお話してみたいっていってたの」
「えっ」
「駄目かな?」
「だ、だめじゃない…!」


「リエーフ、及川ちゃんまつもっちゃんに取られたな」
「どうせ俺は夜久さんと地獄のデートだし…考えただけで寒気が」
「バレー部朝も昼も自主練あって気合ってるよなぁ。バスケ部はゆるゆるなのにな」
「お前が不真面目なだけだぞ二枝」
「とっころーでさー、ぶっちゃけた話リエーフって及川ちゃんの彼氏なの?」
「…は?…」
「俺の持論はな、男女の間に友情は――あいたっ!」
「お前リエーフも及川も見るからにド天然なんだから変な事言うな」
「はぁ?だってこいつら見てると」
「はいはいはいはいはいはい」
「聞けよ」

なにやら二枝君たちが騒いでいて、リエーフ君はぽかんとしていた。「あかりちゃん、あんまり気にしなくていいんだよ」と松本さんが言う。


「あ、でも私も恋バナしたいなぁ」
「…え、」
「あかりちゃんは好きな人いる?」
「……みんな、すきだよ」
「もー、そういう話じゃなくてね」


徹の「女の子は恋バナ大好きなんだからさぁ、お前も」みたいな会話を思い出した。その後の「お前も…は、ふっつーに無理だったね。可愛げないし」という言葉も思い出す。


「私、可愛げないから」
「えー?あかりちゃんって笑うとすごく可愛いんだよ」
「……信用、しません」
「じゃあ写真撮ってあげるから笑って?ねっ!」
「むりむりむりむり」



「女子がさぁ、あーやって戯れてるの見るといいなぁ…って思うよな」
「お前煩悩の塊だもんな」
「二枝、あかりたちの事変な目で見ないで」
「お前ら俺をなんだと思ってんだよ」



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オリキャラ3人です。1年3組仲良し組。
ゆるふわ松本さん
阿呆の二枝君
おかん東月君です。
ちょいちょい出てきます。
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