カカシ〜君のいない世界でより〜

   



──たまには、本音を言いたくなる時だってある。



『ん〜…疲れたぁ…』

仕事を終え家へと帰宅し、お風呂なども済ませてソファに深く腰掛ける。ここ最近忙しくて通しで働いてばかりだったけれど、漸く明日はお休み。
朝はいつもより遅めに起きて、一日ゆっくりしよう──そう思っていた時、不意に視界に入ったカレンダー。

(そういえば…)

……カカシさんが任務に行ってから、もう2週間経つんだ。

家に帰ってきても疲れてすぐ寝ちゃう生活が続いていたから、考える余裕もなかったけれど…こうしてその忙しさが去って息をついた時、ふと押し寄せてくる感情。

──"寂しい"──

『……』

彼と共に暮らすこの家は、至る所に彼の存在を感じられて。だからこそ余計に、今この場所にいないという事実が…1人きりなのだという事実が浮き彫りになる。

(でも…寂しいなんて言えない)

以前お互いに言葉をちゃんと伝え合おうとは言ったけれど、任務に出ていく彼にそんなこと言ってはいけない。

それでもこの感情を無くすことはできないから、今日はこのまま眠ってしまおうと寝室へ向かう。と、ふとある事を思い立って寝室のクローゼットを開けた。

そこから取り出したのは、いつも彼が寝る時に着ている部屋着。

普段こんな事絶対しないけど、今日はどうしようもなく寂しさが溢れてしまうから…そう自身に言い訳をして、彼の服を抱いたままベッドに横になり目を瞑る。

微かに香る彼の匂いに、少しだけ寂しさが和らいだ気がした。…けれど。

(…やっぱり、本物がいい…)

顔を見たい、声を聴きたい。

一緒にベッドで眠りについて、おはようの挨拶をして。
ご飯を食べて、手を繋いでデートに出かけて。

…あの腕で抱き締めて、優しいキスをしてほしい。

たくさん、たくさん触れ合いたい──……






──……ふわりと、頭に温かな感触。

次に額に柔らかな何かが降ってきて。
それは頬に、鼻に、唇に…首筋に。

『……ん、』
「…ああ、起きた?」

漸く意識が浮上して、でもまだぼんやりとした頭の中で何が起きているのか瞼を開けると、そこには銀色の髪をした彼が私に覆い被さるようにして此方を見つめていた。

『……え?カカシさ…なんで……っん、あ…!』

「なんでって、帰ってきてここに来たらお前があんまり可愛いことしてるもんだから…つい、ね」

イタズラしたくなっちゃった。
そう言って再度首筋にキスを落とす彼に翻弄されるも、心ではその先を期待していて。

…寂しさを募らせていたせいで、こうして願いが叶って彼に触れてもらえる事がどうしようもなく嬉しかったから。

(……今日だけ、)

今日だけなら、この気持ちを言葉にしてもいいだろうか。
…いつもはひた隠しにしている、この本音を。

顔を上げた彼の両頬に手を添えて自分から唇を重ね、すぐに離れる。私の行動に彼が目を見開いて固まっていたけれど、気にせず想いを口にした。

『…寂しかったんです、私…だから──』

そう伝えると、彼は視線を逸らし深く息を吐いて。

「あー…もう、勘弁して」

──可愛すぎ。

言葉を溢すと同時に唇を塞がれ、堪らず彼の首の後ろに腕を回しそのキスに応えた。

離れていた寂しさを埋めるように…この場所に帰ってきてくれたと実感できるように。


─"今日は、沢山愛してください"─



   
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