11力の存在

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***


カーテンの隙間から朝日が差し込む。
その光で意識が徐々にはっきりしてきた。


『…………。』


(……なんで、私布団の上にいるの?)



昨日の夜カカシさんの同僚の方達との飲み会だったはず。暫くはガイさん達と楽しく会話をしてその場を楽しんでいたのは覚えてる。
でもその後アンコさんの発言で食べていたものを喉に詰まらせて、アンコさんから手渡されたものを一気に飲み干した。

…水だと思って飲んだそれは、焼酎だったけど。


『そこからの……記憶が曖昧……』


さぁ、と血の気が引く。

私はどうやって帰ってきた?確か…朧げだけどカカシさんに背負われていた気がする。
……ということは、彼に触れていたと言う事。

そう思った瞬間布団から飛び起き、隣にあるベッドへ視線を向ける。しかしそこにはカカシさんの姿はなかった。


(…もう、任務に出かけたのかな?)


寝室から出てリビングへ行くとやはりカカシさんの姿はなく、かわりにテーブルにメモが置かれていた。


"任務に行ってきます。夕方には帰る。カカシ"


それを見てほっと息を吐いた。

(よかった…今は会いたくなかったから。)


昨日の夜、私が彼に背負われて帰ってきたのなら…もしかしたら、"コエ"を無意識に伝えていたかもしれない。

(でも、眠ってたら伝わる事はないはずだから…大丈夫だよね?)

そう自分に言い聞かせ、湧き上がる不安をかき消すように頭を振る。

『…とりあえず、シャワー浴びよう。』

昨日あのまま寝てしまったので身体が気持ち悪い。

カカシさんが帰ってきた後の事を考えると言いようのない不安が押し寄せてきたが、その思いも全て洗い流してしまおうとお風呂場へ足を進めた。






「…ただいま。」

夕方、カカシさんはメモで伝えてくれた通り帰ってきた。

『カカシさん、おかえりなさい。』

いつものように玄関まで出迎える。
でも、普段と違いその心は穏やかではない。


(…極力、昨日の話題は出さないようにしよう。)


それからいつも通り各々寛ぎ、夕食を食べ終え後片付けをしていた。幸いカカシさんの纏うソレもいつもと変わりなかったので、気付かれないようにホッと息をつく。


(やっぱり、昨日は何もなかったんだ。)


自身の記憶が曖昧だったから不安に思ったけど、私の心配は杞憂に過ぎなかったのだ。
そう考え洗い物を終えカカシさんが居るリビングの方へ足を進めると、ふいにソファに座っていたカカシさんと目があった。




――――その瞬間、背筋が凍りつく。



この目は、よく知っている。



私の…この力に気付いた時の



畏怖の念を抱いた目―――――





「……名前、話がある。」





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