重ねて、繋いでー番外編ー

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トラウマは、そう簡単に払拭できるものじゃなくて。
私自身未だに"触れる"という行為に抵抗があって、自分から触れるのは勇気がいる。

そんな私に彼は何も言わず、いつも優しい笑顔で手を差し伸べてくれた。

…けれどそんな彼にも、私のように心の内に抱えているものがあるはすで――…






『…長期任務、ですか?』

いつものように夕食を2人で食べていた時、眉を下げた彼が小さく頷く。

「ああ。危険なものじゃないし期間は決まってるから滞在する日数が延びる事もないけど…1ヶ月かかる」

『そうですか…』

サスケ君が里を抜け、ナルト君が修行に出てからというものカカシさんは里外の任務に就く事が多くなり、その日の内に帰ってくる事も減った。

だからこうして一緒にいられることを大切だと、かけがえのない時間だと前以上に思えるようになったのも事実で、2人で過ごすこの一時を大事にしている。

――…けれど。

(…やっぱり、寂しいな)

1ヶ月なんてあっという間だと言い聞かせても、寂しいという気持ちは取り払えない。それに危険じゃないとはいえ、必ずしも安全だとは言い切れない。…現に私は里内で忍同士の戦いを目の当たりにしているのだから。

複雑な思いが胸に渦巻いて視線が下に落ちていたけれど、正面から聞こえた「…ごめんな、名前」という低い声に慌てて気持ちに蓋をして顔を上げた。

『…っ謝らないでください!任務なんですから仕方ないですし、カカシさんがいない間このお家はちゃんと私が守りますから!』

けれどそう伝えても、彼は眉を下げたまま言葉を続けて。

「いや、それはそうなんだけど…でも名前の誕生日祝えないじゃない」

『………へ?』

「へ…って、もうすぐ誕生日でしょ」

慌ててカレンダーへ視線を向けると、確かに1週間後の日付は私の誕生日が記されている。…そして彼が申し訳なさそうにしている理由が漸くそこで理解できた。

「…名前、もしかしてまた忘れてた?」

『はい、すっかり忘れてました…あんまり自分の誕生日を意識したことがなくて…って、でもそれじゃあカカシさんの誕生日もお祝いできないじゃないですか…っ!』

――そうだ、私の誕生日の2週間後は彼の誕生日でもある。カカシさんが1ヶ月の長期任務に出れば、その日も帰ってくる事はできないということ。

「あー…そうだけど、まぁ俺のは気にしなくていいから」

『そんな…っ気にするに決まってるじゃないですか!…そうですカカシさん、任務から帰ってきたらお祝いしましょう?お互いの誕生日!』

任務で当日おめでとうを伝えられないのは悲しいけれど、去年お祝いできなかった分、今年こそはちゃんとお祝いしたい。その気持ちを込めて笑みを向けそう伝える。

きっと彼も同じように、優しく微笑んでくれるだろうと思いながら。

「え?あ、ああ…そうだな」

けれど返ってきた声は歯切れが悪く、その顔もかげしたように昏く見えて。

どうしたんだろう…そう思うも直ぐにいつもの優しい眼差しに戻った為、この時はその疑問を問いかけることはしなかった。





「じゃあ、行ってくるから」
『はい、いってらっしゃい』

そうして翌朝、長期任務へ出立する彼を玄関先で見送り、扉を開ける前にどちらからともなく腕を伸ばして互いの身体を抱きしめる。

いつもならここで彼が口布を下げて触れるだけのキスをしてくれる――…のだけれど、私を抱きしめたまま一向に動く気配が見られない。

その様子に少しだけ不安を覚え始めた時、名前、と彼の口から自身の名が紡がれた。


「…ちゃんとここにいて」


…聞こえた声は、いつもより低くて。
抱きしめる腕の力が、少しだけ強くなって。

私の首筋に顔をうずめている為、その表情を確認することはできない。…だけど明らかに様子がおかしい。
疑問を抱き彼に問おうと口を開いたが、それより先に抱きしめる力が弱まり、彼がゆっくり顔を上げた。

「――…なんてね」

目に映る表情はいつもと変わらず、唯一出ている右目を弓形にし優しく微笑んでいて。それでも先程の言葉と声色がどうしても気になり、彼の目を真っ直ぐ見据えながら問いかけた。

『カカシさん、どうしたんですか?』

「ん?いや〜…名前が心配なのよ。ほら、昔俺のいない間に変な男に言い寄られたりしてたじゃない。仕事終わっても寄り道せずに真っ直ぐ帰るんだよ?」

『そんな…1年以上も前の話じゃないですか…っ!それに輪廻祭でカカシさんがお店に来てから、そういうお客さんもいなくなったんですから!』

「まぁそうかもしれないけど…でもちゃんと言っておこうと思って。…あ、あと変な人についていっちゃ『もうっ!わかってます!!子どもじゃないんですから!!』

「ははっ、前もこんなやり取りしたな。…じゃあ、行ってくる」

笑いながら私の頭をぽん、とひと撫ですると、そのまま扉を開けて出て行ってしまった。閉じていく扉の隙間から見える後ろ姿を見つめながら、先程の言葉を思い返す。


――"ちゃんとここにいて"――


(ここにいてって…どこにも行かないのに)


私の帰る場所は彼が居るこの家だ。それはずっと変わることはないのに――。
彼の言動にますます疑問を抱くも、それは知る術は今は無くなってしまったと小さく息を吐いた。

…けれど数日後、この疑問は解けることとなる。





――じりじりと照りつける太陽。
8月下旬だというのに暑さは和らぐことはなく、備え付けられた風鈴が音を奏でるも、それをかき消す様に耳に届く蝉の鳴き声。

「あ〜…あっついわねぇ…」

小さな声で呟いたのは、お団子を片手に持ちもう片方の手で自身を扇ぐアンコさん。その横には額から汗を滲ませる紅さんの姿も。

1年前に起こった中忍試験での出来事…後に木ノ葉崩しと言われたあの戦争での傷は癒えつつあるけれど、今年は中忍試験が行われることはなかった。
だから前回その試験の試験官だったアンコさんも任務に就く日々が続いていて、こうして3人で集まるのも久しぶりだった。


『本当に暑いですね…でももうすぐ9月ですし、あと2週間もすればきっと今より涼しくなりますよ!』

「その2週間が遠いのよ…って、9月といえば名前、アンタもうすぐ誕生日じゃない!何か欲しいものとかないの?」

『え?いいえ、そんな…っお気持ちだけで十分です!!』

「なぁに遠慮してんのよ!お祝いしたいって言ってんだから素直に甘えなさいよね〜!…あ、ここのお団子全種類ってのはどう!?」

「…アンコ、それを貰って喜ぶのは多分貴女だけよ」

何よ、いい案だと思ったのに〜。そう言いながらお団子を頬張るアンコさんを見て思わず笑っていると、紅さんが此方に視線を移して話を続ける。

「まぁでも、名前の誕生日を祝いたいって気持ちは私もあるわ。折角だから家で集まって誕生日祝いでもしましょうか」

「あ!いいわねそれ!!私酒持ってくわ酒!!…そういえばカカシは今任務にでてたわよね。アイツの事だから誕生日当日祝えない〜って今頃不貞腐れてるわよ、きっと!」

その言葉を聞いてふと数日前の彼を思い出し、それが表情に出ていたのかアンコさんが「…?どうしたの名前」と首を傾げる。

『えっと、不貞腐れてはいなかったんですけど…カカシさん、少し様子がおかしかったんです』

「様子が?」

『はい…私の誕生日もそうですけど、カカシさんの誕生日もお祝いできないから…だから帰ってきたらお互いの誕生日を祝いましょうって言ったんです。でも、あんまり嬉しそうじゃなくて…』

モヤモヤとした気持ちを言葉にした途端、それは更に心の内に溜まっていき持っていたお茶に視線を落とす。すると少しの沈黙の後、最初に口を開いたのは紅さんだった。

「…思い出しちゃうんじゃないかしら」

その言葉に顔を上げると、考える仕草を見せながら話を続けて。

「カカシは1年前のあの日が未だに忘れられないんだと思うわ。アイツの誕生日の次の日でしょう?名前が連れ去られたのは」

「あー…なるほどね。それは私もわかるわ。たぶんまだ引き摺ってんのよ」

『引き摺る…?』

「そ。アンタが入院してた時のアイツ見てらんなかったから」


(…そういえばあの日も、同じようにお互いの誕生日プレゼントを買いに行こうって話してた…きっとそれを思い出してあんな表情を…)

その言葉を聞いて、こないだの歯切れの悪い返事と昏い表情の理由が分かると同時に、もう一つあることに気付く。

それは最近、彼が私と約束を交わさなくなったということ。

私から言うことに対しては相槌は打ってくれる。けれど自分からは口にしなくなった気がする。

"明日はあれを食べよう"だとか、"今度彼処に行こう"という、些細な約束さえも。

…その理由が、約束が果たされないかもしれないという恐怖心からだとしたら?

そして彼が任務に立つ前に言ったあの言葉…あれも1年前のあの日の事が原因だとしたら――…


――"ちゃんとここにいて"――


「まぁでも名前が攫われることはもうないし、カカシが帰ってきたらいつも通り出迎えてやれば――『紅さん、アンコさん…!』

アンコさんの声を遮り名を呼ぶと、不思議そうに首を傾げる2人を見つめ言葉を続ける。

『誕生日なんですけど…プレゼントはいらないので、その代わり一つお願いがあるんですが…』

「お願い…?なによ?」

『あの――…』




***





――里を出立して数週間。
1ヶ月という長期任務は問題も起きず無事に遂げる事ができ、明日には里に帰還できる距離まで戻って来ていた。

いつもなら久しぶりに名前に会える嬉しさが心を満たしている…が、今の俺は別の感情が胸の内を支配していて。

(…また今日も夢に見たな…)

仲間と共に川辺で休息を取る中、今朝見た夢を思い出し思わず溜息が漏れる。

"おかえりなさい"…名前のその言葉を聞けなくなったあの日。俺の手から、また大切なモノがすり抜けていく恐怖を味わったあの日。

それはもう一年も前のことで…けれど俺にとってあの時の恐怖は自分で思うよりも深く心に刻まれていたらしく、最近になってあの日をよく夢に見るようになった。

そしてそれは自分の誕生日が近づけば近づく程頻繁に、より鮮明に脳裏に浮かんで。

(…情けないねぇ、ホント)

"声"は封印されている。言魂の力が発揮されることは、この先二度とない。

感情も目に見えず心の"コエ"だって聴こえない。何の力もない彼女が以前のように狙われることはないと、危険に晒されるようなことは、里にいる限りないと分かっている。

――…それでもまた、あの家から名前が消えてしまうのではないかという恐怖心が身を襲う。


「はたけ隊長、そろそろ行きますか?」
「!…ああ、そうだな」


仲間の1人に声をかけられ我に返ると、余計な雑念を取り払うように里へと足を進めた。







翌日、予定していた通り里に帰還し五代目への報告も済ませ家路につく。陽も沈み辺りは虫の音が小さく響いているだけで、自身の心臓の音がいつもより大きく聞こえる。

この時間だとまだ仕事中かもしれない…そう思うも、進む足は自然と早くなって。

そうしてもう少しで家へ辿り着くという時、微かな気配を感じ頭上を見上げた。視線の先には一羽の伝令鳥の姿があり、俺の元へ降りてきた為足に括り付けられていた手紙を解きそれを開く。

送り主は紅からで、今家に名前がいるから迎えに来るようにと、そういった内容が記されていた。

(名前、仕事じゃなかったのか…でも紅の家って、こんな時間に?)

名前が仕事以外でこんな夜に出かける事は今までになかった。それに彼女には事前に式を飛ばしていたし、今日俺が帰ってくる事を知っているはずなのに――

疑問を抱きつつも、言われた通り紅とアスマの家へ向かい呼び鈴を鳴らした。すると少しの間を置いて扉が開き、紅が笑みを浮かべながら姿を現す。

「あら、早かったのね。任務お疲れさま」

「ああ。名前は?」

「奥にいるわ。どうぞ上がって」

「え?いや、このまま名前と帰「いいから」

半ば強引に家の中へと押し込められ、戸惑いながらリビングの扉を開く。


「ちょっと紅、一体何を――「「カカシ、誕生日おめでと〜!!」」


――次の瞬間、破裂音が幾重にも響き鼓膜を震わせた。それと同時に髪の上に落ちてくる、色とりどりのテープ。

そして目の前にはクラッカーを手に持ったアスマ、ガイ、テンゾウ、アンコ…そして名前の姿。

「…なに、これ」

驚きすぎて何が起こってるのか把握できずにいる俺とは対照的に、目の前のそいつらは始終笑みを浮かべている。

「何って、アンタ達の誕生日祝い!折角だから2人まとめてお祝いしようって話になって、アンタの帰りを待ってたのよ!!」

ほら、こっち座って!!

そうアンコに促され座ると、テーブルの上には色とりどりの料理が並んでいた。全て手作りだと分かるそれらの中には、俺が以前名前に作ってもらい「美味しい」と絶賛した料理もあって。

今の状況を徐々に理解し、それに比例して気恥ずかしさと嬉しさを感じ始めた時、名前が隣に座る気配を感じ視線を向けた。

『カカシさん、お疲れさまです。…それと、お誕生日おめでとうございます』

「ああ、ありがとう。…って名前もじゃない。遅くなったけど、誕生日おめでとう」

『ふふ!ありがとうございます!驚きましたか?』

「そりゃあねぇ…まさか帰ってきてこんなサプライズが待ち受けてるなんて思わないよ」

同僚達も各々忙しい身。だからこうして全員が集まる事なんてここ最近なかったというのに。
態々俺と名前の誕生日祝いをする為に予定を調整したのだと思うと、更に胸の内が温かくなる。

「ほらアンタ達、飲んで食べて!!パァッと楽しむわよ!!」

その言葉と共に始まった俺と名前の誕生日祝い。名前はアンコや紅と楽しそうに話していて、その表情を視界に入れながらアスマに手渡された酒を飲んでいたら、ポロリと本音が漏れてしまった。

「いや〜…いいもんだね」

「お、やけに素直じゃねぇか」

「そりゃ祝われて嬉しくないわけないでしょ。…ありがとね」

恐怖心だとか、不安だとか。
この場に来る瞬間まで感じていたそれらの感情は、いつの間にやら吹き飛んで。

今はただただ、幸せだという気持ちがじわりと心に広がっていく。

素直に礼の言葉を伝えると、アスマは手元の酒を呷いだ後声を抑えながら話し始めた。

「礼なら名前に言ってやれ。この集まりを計画したのは元々名前だからな」

「…へ?そうなの?」

「ああ。名前がアンコと紅に言ったんだとよ。ここ最近集まることがないから、少しの時間でも皆さんと集まりたい。それでカカシさんの誕生日のお祝いがしたいってな。それともう一つ…」


「去年の記憶を塗り替えてぇんだと」


…告げられた言葉を理解するのに数秒。隣に視線を移せば、先程同様笑顔の名前がそこにいて。

――…ああ、なんて。

思わず名前に身を寄せて、ぽす、と肩に頭を預ける。


『へ!?カ、カカシさ「ホント、情けないねぇ俺は…」


任務に立つ直前、つい名前に弱音を溢してしまった。きっとその言葉で敏感に察知して、俺が任務から帰ってくるこの1ヶ月色々と考えてくれたのだろう。

…そして、コイツらも同じように。

「こら!そこ!!イチャイチャすんのは帰ってからやりなさいよね〜!!」

アンコの言葉に我に返り、ゆっくり頭を持ち上げると戸惑う名前の表情が目に映る。

『カカシさん、大丈夫ですか…?酔っちゃいました?』

「いや、大丈夫。…アンコにも言われちゃったし、続きは帰ってからにしようかな」

『…?』

もう少しだけ触れていたい気持ちはあったけれど、今は名前とコイツらが用意してくれたこの空間を存分に楽しもう。

「ぃよぉぉし!!カカシよ!!飲み比べでライバル勝負だ!!」

「え〜なんでそうなるのよ。誕生日祝いなのに勝負なんてしたくないんだけど」

「何を言うか!祝いの席だからこそだ!!」

「…ったく、しょうがないねぇ」

「名前さん、お隣いいです――「テンゾウ、お前も入れ」

「ちょっと待ってください!!ボク関係ないですよね!?」

「うるさいよ。先輩の誕生日祝いなのに誘いを断ろうっての?」

「パワハラ!!というか明らかに名前さんからボクを遠ざけようとしてますよね!?」

「俺と名前の間に入ろうとするお前が100%悪い」




それから数時間、楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので。夜もとうに更け誰もいない夜道を、いつものように手を繋いで名前と二人ゆっくりとした足取りで歩いていく。

「いやぁ…ちょっと飲みすぎたかもな」

『でもカカシさん、勝負に勝ってましたね!他のお2人は潰れていましたし…』

「まぁ俺の方が酒に強いからね。ガイも飲み比べなんて毎回俺に負けるくせに何回も挑んでくるんだから…飽きないよねぇホント」

『ふふ!負けても挑み続けるなんてガイさんらしいですね…っ』

名前も少しだけ酔っているのか、頬をほんのり赤く染めていつもより沢山笑っていて。その表情を見てこちらも思わず笑みをこぼしていると、名前が唐突に『カカシさん、明日はお休みですか?』と言い出した。

「え?ああ、休みだけど…」

『本当ですか!?じゃあ、明日一緒にお出掛けしましょう!』

「…?何処か行きたいところでもあるのか?」

『えっと…行きたいところは特にないんですけど…買い物をしたり、映画を見に行ったり。そのあとはお夕飯のお買い物をして…あ!カカシさんの好きな秋刀魚の塩焼きと茄子のお味噌汁作りますね!』

行きたいところがあるわけではないというものの淀みなく言葉を紡ぐ彼女に疑問を抱いたが、すぐに答えが見つかった。


――ああ、彼女はきっと1年前の約束を果たそうとしてくれているのだと。

去年果たされなかった約束を、今。


その事実だけで更に心が温かくなって。
嬉しさと愛しさと、色んな気持ちが複雑に絡んで。

それが伝わるように握っている手に力を込めると、ふわりと彼女が笑みを浮かべた。


『あ…っそうだ、まだ言ってなかったですね…!』

「…?なにを?」

『おかえりなさい、カカシさん』


いつもの笑顔、いつもの言葉。
けれどそれは、いつも以上に俺の心に響いた。

返事をする代わりに、口布を下げて名前の身体を引き寄せる。
…そうしてその唇に、キスをひとつ。


『な…っ何するんですか急に…!』

「ん?だって誰もいないし」

『だからって…っここ外で――「まぁまぁ、いいじゃない」


手を繋いで、抱きしめて、キスをして。
今はただ、この溢れた想いが伝わるようにと。


『…っ、もう…っ!そ、そういえばカカシさん、お誕生日プレゼント何が欲しいですか!?』

「んー…じゃあ今年も名前で」

『へ!?ま、またそんなこと言って!!』

「ふはっ、この流れでそんなこと聞くお前が悪いよ」


共に過ごす時間も、想いも約束も。
一つずつ、一つずつ重ねていこう。

そうして増えた思い出を、いつの日か"あんなこともあったね"なんて、笑い合って話せるように。


(2021.9.15)

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