言の葉を紡いでー番外編ー

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それは、澄みきった秋晴れが心地いい日の出来事。



「名前姉ちゃん!!あのさ、あのさ!!
今回も手伝って欲しいんだってばよ!!」

『………へ?』



いつものように家で家事を済ませ、時間もできたので公園に行って歌を歌おうと準備をしていた時、ナルトくんが突然家へとやってきた。


『えっと……何を手伝えば……?』

「そんなの一つしかねぇだろ!?よし、じゃあ今から一緒に行くってばよ!」

『えっ、ちょ、まだ私何も……っ!』


私に拒否権はないのか、ナルトくんはグイグイ腕を引っ張り目的地へと歩き出した。









たどり着いたのは、とある空き地。そこにはサクラちゃんと1人の男性が立っていて、その2人を見て何を頼まれるのか瞬時に理解した。


『…ナルトくん、まだ諦めてなかったの?』

「お!名前姉ちゃんやっと分かったか!?そう…俺達の極秘Sランク任務!題して――『うん、そうだね。カカシさんの素顔ね。』


声を被せてそう言うと、ナルトくんは「…なんか姉ちゃん、冷たいってばよ…」と肩をすくめた。
そんな彼をそのままにサクラちゃんと男性に視線を向ける。


『サクラちゃん、久しぶりだね!ずっと歌を披露するって言ってたのに出来てなくてごめんね。』

「そんな事気にしないで名前さん!むしろ元気になってよかったです!カカシ先生から入院してるって聞いた時、本当に心配してたから……でも歌も聴きたいし、また名前さんの大丈夫な時に聴かせて下さいね!」


可愛らしい笑顔でそう言ってくれるサクラちゃんを見て、少しだけ安心した。
サスケくんが里抜けをしたと聞いてから、サクラちゃんがどれだけ自分を責めていたかずっと心配だったから。


『それと、スケアさんもお久しぶりです。えっと…風邪ですか?』


その男性…スケアさんは前に会った時と違い、今日はマスクをしていた。


「名前さん、お久しぶりです。いえ、これは風邪ではなく花粉症でして…」

「何言ってんだスケアの兄ちゃん、今春じゃねぇじゃん!花粉なんか飛んでねぇってばよ!」

「ナルトくん、花粉は春だけじゃないんだよ?秋にも飛んでたりするんだ。」


そう言うとスケアさんは、くしゅんっとくしゃみをして鼻をすすった。


「ふーん……そんな事より名前姉ちゃん!!本題に入るってばよ!」


自分から聞いておいて"そんな事"とはなんて自分勝手な……と思いつつ、ナルトくんの次の言葉を待つ。



「名前姉ちゃん、カカシ先生と付き合ってんだろ!?今度こそ誘惑して欲しいってばよ!」



ゲホッゴホ!!

その言葉にスケアさんが思い切り咳き込み、私は声を詰まらせた。


『な…っちょっと待ってどこでそんな話…!』

そう問いかけると、サクラちゃんがニヤリと笑みを溢す。

「何言ってるのよ名前さん!私の情報網甘く見ないでよ?もう〜やっぱり2人ってそういう関係だったのね!家ではラブラブしてるんでしょ?なら、今だったらキスを迫るぐらい名前さんできるわよね!?」

『キ……っ、待って私そんなこと…!』


そこまで言いかけ、はた、と考える。


(……私って、カカシさんと付き合ってるの?)


そういえば…そういった話はした事がない。
確かに想いは伝えたし、カカシさんも好きだと言ってくれて心も身体も繋がった。
でも、正式に"お付き合いしましょう"とは言葉では伝えていなかった。


(…それにあれ以降、手は繋ぐけどキスも抱きしめられる事も…触れ合う事は何もしていない…)


私が黙ってしまった事を不思議に思ったのか、
サクラちゃんが首を傾げる。


「…?名前さん、どうし『…してないかも』





『私…カカシさんとお付き合いしてないかも』

「「「…………………っはぁ!?」」」



見事に3人の声がハモった。


「えっ、ちょっと待って名前さん…!なんでそんな風に思っ「何を言ってるんです!!」


サクラちゃんの声を遮り、スケアさんがガシッと私の肩を掴む。


「貴女とカカシさんは、正式にお付き合いをされている恋人同士でしょう!?」

『あの…実はそういった言葉は伝えてなくて…』

「こ、言葉…!?いや、言葉なんてなくても貴女達は心も身体も「待って待ってスケアさん!なんでスケアさんがそんなに慌ててるのよ!」


スケアさんのあまりの剣幕に若干恐怖を感じ狼狽えていたら、サクラちゃんが間に入ってくれた。そのおかげでハッと我に返った彼は「すみません…つい。」とバツが悪そうな顔をして私から手を離す。


「もう…で?名前さん何でそんな風に思うの?」

『えっと…お互いにね…好きだって話は…したんだけど…付き合おうとか、そういう事は言ってなくて…それにキ、キスとかも…全然してないし…』


吃りながらもそう3人に伝えるとスケアさんが何か言いかけたが、それに被せるようにサクラちゃんが言葉を発した。


「…ちょっと待って。カカシ先生肝心な言葉を言い忘れてるってこと!?しかもキスも全然してないの!?いつもあんないかがわしい本読んどいて何奥手になってんのよカカシ先生!!」

「確かにあんな本読んどいて女心が全然わかってねぇってばよ、カカシ先生」

ナルト、アンタも女心を語るのは100年早いわよ!!

そう言ってサクラちゃんはナルトくんの頭を叩く。


その2人のやり取りを見ていたら、スケアさんが慌てた様子でこちらに近づいて来た。


「……名前さん、きっと何か誤解があるんじゃないですか?ほら、カカシさんも気を遣ってるのかもしれませんし…まだ退院して間もないんですよね?」


そう言われるが、だんだんと自分に自信がなくなってきてしまった。


『そうなんでしょうか…もしかしたら私に魅力がないだけかもしれません…』

「そっ、そんな訳ないじゃないですか!!一体どれだけ我慢してると……っ!!」

『……え?』

「……いえ、何でもありません。」


スケアさんの言動に違和感を覚えていると、再度サクラちゃんが口を開く。


「…ちょっとこれはマズイわね。元々名前さんにカカシ先生を誘惑してもらって素顔を暴こうと思ってたけど、予定変更だわ!」

「名前さん、言われないなら言わせればいいのよ!それに今時、女性がグイグイ攻めるのも大事なの!そうと決まれば!名前さん、今からカカシ先生と1日デートして!!」

『……へ!?デ、デート!?』


その言葉に目を見開いて驚く。


(…そういえば、あの時の出かけるって約束も叶えられてない…)


私には記憶はないけれど、カカシさんと2人で出かけると約束していたあの日。
私は大蛇丸という人に攫われたと話を聞いていた。それからは長い間病院生活が続いていたし、こうして出歩くようになったのもここ最近の話で、カカシさんと2人で出かけるなんて事はずっとしていない。


『……デート、したいかも。』


私の言葉に、サクラちゃんは目を輝かせた。


「そうでしょう!?……よし、じゃあこのデート中に全ての目的を果たせるようなプランを考えるわよ!!名前さん、ちゃんと覚悟を決めて頑張ってね!!」

『えっと…出来る限り頑張るけど、あんまり積極的にはできな「そこを今頑張らないでいつ頑張るのよ!」


……怖い、恋愛事となるとサクラちゃんがとっても怖く見える。


そんな話をサクラちゃんとしていたら、隣でナルトくんとスケアさんが話す声が聞こえた。


「…じゃあ、そういう話なら僕は必要ないね。このまま帰らせてもら「なぁに言ってるんだってばよ!スケアの兄ちゃんがいなきゃ写真撮れねーだろ!」

「えっとね…2人を邪魔しちゃいけないと思うんだ。だから今回はやめに「絶対やめねぇってば!!」

「俺、明日からエロ仙人と修行にでて暫く帰ってこれねーし、もうチャンスは今日しかないんだってばよ!!それにカカシ先生は絶対名前姉ちゃんとのデートで隙を見せるはずだ!!そこをプロのカメラマンとしてしっかり写真に収めてもらわなきゃ困るんだってば!!」

「いや、それもそうなんだけどね……」


暫く2人のそんな攻防が続いたが、結局スケアさんが折れてそのままいてくれる事になった。

その後サクラちゃんとナルトくんと3人でデートの内容を話している時、スケアさんは「デート…影分身って…」と何やら一人ブツブツ呟いていた。


         







「………え?何で名前がいるの?」

本来サクラちゃんとの待ち合わせなのに、その場に私がいることにカカシさんは目を丸くし驚いた表情を見せた。そんな彼に先程打ち合わせした通りの言葉を伝える。


『えっと…サクラちゃん、急用ができたみたいで来れなくなったって…それを代わりに伝えにきたんです。』

「あぁ、そういうことか。…ったくサクラも名前に頼まなくてもいいのに。じゃあ俺も用事がなくなったし…名前、一緒に家まで帰るか。」


そう言って手を差し伸べてくれたけれど、その手を取れずしどろもどろする。カカシさんはそんな私を不思議に思ったのか、先程と同じ言葉を口にした。


「…?名前、ほら一緒に帰『いっ今からデートしませんか!?』


その言葉を遮り発した声は少し上ずってしまった。
それにきっと今、私の顔は真っ赤に染まっているに違いない。それだけ熱が集まっているのが自分でも分かるし、心臓の鼓動が早くなっているから。

恐る恐る、彼の顔を見上げる。
すると先程よりも目を大きく見開き、その場で固まっている彼がいた。そんな姿を見て急に不安になり、慌てて今の発言を取り消そうと言葉をかける。


『…ご、ごめんなさい!迷惑でしたよね!!やっぱり今の「しようか、デート」


「……俺も、名前とデートしたい。」


彼はそう呟くと、私の左手を握って優しい笑みを向けてくれた。途端に胸の奥が苦しくなり、更に心臓の音が加速する。


(……わ、私の心臓……1日もつかな……)


「…で、どうしようか?どこか行きたいところある?」

『あっ、えっと…もうお昼も近いですし、まずごはんを食べに行きましょう!!最近できた和食のお店が美味しいって、以前紅さんに聞いたので……っ!』


そう言ってこれ以上顔の赤みを見られないように、彼の手を引いてそのお店へと歩き出した。




――――――――・・・・・



「…デートに誘うだけであんなに顔真っ赤にして……これは前途多難ね。名前さん、ちゃんと作戦通りできるかしら?」

「名前姉ちゃんって案外初心なんだな〜。あれじゃ何もできな……って、スケアの兄ちゃん何してんだ?」

「…いや、ちょっとお腹痛くなってきたから帰ろうかと「カカシ先生並みに嘘がヘタクソだってばよ」

「…………。」



――――――――・・・・・






「…へぇ、こんなところに店ができたなんて知らなかったな。」


お店の中へ入り、カカシさんが辺りを見渡す。新しくできたお店というのもそうだが、このお店の特徴はすべての席が半個室になっているということ。
それぞれの席の上半分がすだれで仕切られていて、人目をあまり気にせず食事ができるようになっている。

サクラちゃんもその事を知っていて、半個室というところを利用しない手はない!との事で、その勢いに押されこのお店にカカシさんを連れてきたのだ。

お店の人に案内され、カカシさんが席へと座る。しかし私はこの後の作戦に躊躇してなかなか座れずにいた。


「……名前?座らないのか?」

『え!?えっと…座ります、けど…』


尚も座る事を躊躇していたら、ふと視線を感じそちらをチラ、と見る。すると私達の斜め後ろで、既に席に座りこちらを睨むサクラちゃんの姿があった。


(……っ怖い、サクラちゃん目が怖いよ…!)


まるで「これぐらいグイグイいけないでどーするのよ!」とでも言いたげなその鋭い視線に怖気付き、意を決して席に座る為足を進めた。


「………え?」


ストン、と座ったその場所…それは向かいの席ではなく、カカシさんの隣だった。


「…えっと、名前?向こうに座ら『わっ、私ここがいいんです!』


『…カカシさんの隣に居たいんですけど…だ、だめですか…?』


そう言って、彼を見つめる。するとカカシさんは数秒固まった後、勢いよく口元を手で隠し顔を背けてしまった。


『…?カカシさんどうし「ちょっと今こっち見ないで」


(……ど、どうしよう。怒らせちゃった?)


その態度にオロオロしていたら、暫くして深いため息をついた彼がこちらに振り向く。


「…ホント、お前は俺をどうしたいのよ…」


そう言うと、彼の手が伸びてきてそのまま頭を撫でられた。


(……とりあえず、怒ってはない…よね?)


その表情からは何を考えているのか読み取れなかったが、それでも怒っているようには見えなかったのでホッと息を吐く。


『えっと…っ、何を頼みましょうね!確か日替わりランチが…』


言いながら、サクラちゃんの立てた次の作戦に移る為注文するものを選んだ。

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