28運命の歯車

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薄暗い部屋の中、男の荒い呼吸音が響く。
その男はすぐ近くにいるカブトの手を借りて、息も絶え絶えに椅子に座る。


「おのれ……猿飛め……」


男が呟くと同時に部屋の中に4人の人影が浮かび上がり、椅子に座る男の前に並ぶ。
そして男はその4人に向け小さく…しかしゾッとする程の低い声で命令を下した。


「機は熟したわ…今すぐ木ノ葉に向かいなさい
…サスケくんを、連れてきなさい。」


それを聞いた4人が頷き部屋を出て行く中、入れ違いに1人の男が部屋の中へと足を進めた。
部屋に入ってきた人物に、椅子に腰掛ける男は静かに語りかける。


「…お前もよ。ここまで長く意識が戻らなかったのは計算外だったわ。」

「…まさか自分以外の人間をこちらに送るだけで、こうも長く眠ることになるとは…俺も思いませんでしたよ。」

「御託はいい。チャクラも回復したのならお前も早くあの女を迎えにいきなさい。その女を回収したら…ここではなく、北のアジトで合流よ。サスケくんよりもお前達の方が先に来ることはわかっているからね。」


男に告げられた人物は「…わかりました」と返事を返しドアの方へ向かう。
そして部屋を出る際、薄く笑みを浮かべ小さく呟いた。



「………楽しみだなぁ………」



「…ちゃんと"約束"…覚えてるかな?」






***





「――…って事で、午前中だけ護衛よろしく」

「……何が“って事で”なんですか」



怪訝な表情をするテンゾウを前に、笑顔で肩をポンと叩いた。


「いや〜今からナルト達の修行に付き合うのよ。で、そのあとは名前とデートなの、デート。だから午前中だけ護衛してくれればいいからって事。」


その言葉にテンゾウは深くため息を吐き、呆れた表情に変わる。


「…よかったですね、漸く想いが通じて。ボクが名前さんに告白した事も綺麗さっぱり忘れるくらい、今先輩浮かれてますよね。」

「いやいや、全然忘れてないから。むしろ忘れるわけないから。…護衛中は名前の前に姿現すの絶対禁止。何かあった時だけにしろ。それと…前の時みたいに手出すなよ?」


笑顔を向けながら殺気を放つと、テンゾウが顔を引き攣らせながら後ずさる。


「…先輩のその独占欲の強さ、少し引きます」

「何とでも言え。もう名前は俺のなの。お前が触れていい相手じゃないの。」

「わかりましたから、早くナルト達のところに行ってください。」

「はいはい。じゃ、後よろしくな。」


尚も呆れた表情で俺を見るテンゾウにそう告げ、ナルト達が待っているであろう場所へと向かった。

        







「……なーんでこうなるかねぇ……」

テンゾウと別れ行き着いた先は第3演習場。今日はここでナルト達の修行をする事になっていた。
しかしその場に到着すると、ナルトとサスケが喧嘩にしちゃ度を越した戦いをしていて、それを止めに入ったサクラを俺が庇う羽目になった。


「サスケ、さっきの千鳥…同じ里の仲間に向ける大きさじゃなかったが…ナルトを殺す気だったのか?」

「………」


俺の言葉に返事をする事なくサスケはフッと姿を消し、それを見ていたナルトもその場から去り、残ったのは涙を流し佇むサクラだけ。


(……チームワークはどこへやら……)


深くため息を吐き先程ナルトが出した術…螺旋丸の事について考えていると背後に知った気配が感じられた。


「…貴方ですか、ナルトに螺旋丸を教えたのは。」


振り向くとそこには、硬い表情をした自来也様の姿。


「暁への対抗手段として教えたつもりだったが…まさか仲間に向けて撃つような奴じゃないと思ってたんだがのォ…お前に用があったが、少しナルトに説教でもしてやるかのォ…」


その言葉にピクリと反応し、自来也様に視線を向ける。


「…貴方がここに帰ってきたということは…名前の事で何か分かったことがあるということですね?」

「あぁ…だがとりあえず話は後だ。お前はサスケを見てやれ。ワシはナルトのところへ行く。」


そう言うと、自来也様はその場からフッと姿を消してしまった。
俺自身も泣いているサクラに「大丈夫、また元に戻れる。」と声をかけ、サスケを追う為その場を後にした。


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