第一印象
※トリコとココが初対面if
毒の生まれた体に、再びターバンをまき直す。血流が圧迫されることにより、毒の分泌が抑えられ、やっとココは溜め息をついた。
今日は小松と食材集めと言う名のお守りの約束をしていた。目的も簡単な山の幸ということだから、心構えもなにもしていなかった。
だが、オマケがついてくるなんて聞いていない。
一々占うのも面倒くさい事ではあるが、小松が連れてくる人物は、もっと面倒くさいかったことに後悔した。わざとらしく大きな溜め息をつけば、大男は首を傾げて鼻を鳴らした。
「へえ、お前面白い力持ってるのな。」
「誉めてるわけではなさそうだね。」
大男の名前は『トリコ』。美食屋なら誰もが知る、有名な人物の名だ。
だが、誰も会いたいなんて思ってもいなかったし、同業者ということは商売敵。あまりいい気はしない。
だがそんな男に小松がよく同行し始めたらしい。決して嫉妬ではないが、なんだか腑に落ちないのも確かである。
探るようなココの目に、トリコは純粋に首を傾げるだけだった。
「ココさんは、特殊な体質なんです!」
せっかくの小松のフォローであったが、見られては隠すこともないだろう。相手を見下ろしながらもココは補足を入れてやる。
「いいよ小松君。はっきり『毒人間』と言ってくれてもさ。」
自虐ともとれる台詞を流すように聞きながら、興味なさそうにキノコを噛み千切ると、鼻を鳴らして体をかぎまわる。犬のような仕草にココが身をよじったのがわかった。
「毒の匂いもほとんどしねえ。制御出来てるならいいんじゃねえの?」
豪快に肩を組んだと思えば、更に鼻を近づける。嫌悪感に顔を反らそうとすると、がっしりと掴まれてしまった。
「それに、泣くくらいなら自虐は止めろって。」
「な、泣いてなんか…」
「涙の匂いがするぞ。昨日泣いたろ。」
昨日は丁度、気分が優れなくて苦痛に襲われた日だ。それがわかるというのだろうか、この男は。
「困ったら助けを求めたらいいし、自信持てよ、お前。小松だって仲間だっているだろ?勿論俺だっているしな。」
何をそんなに自信満々に笑えるのか。不思議で仕方なかったが、口を閉ざした。
ああ、不器用ながら励ましてくれてるのか、と自然な笑いが漏れた。
「有名な『ココ様』がこーんな優男だったとわな〜。」
「ボクこそ予想外だったよ。有名なトリコが拾い食いばかりのでくの坊な食いしん坊ちゃんだったとは、ね。」
「あ?食べなきゃ力がでねーだろうが。」
互いにイヤミな言い方ではあるが、見つめ合った後清々しく笑いあった。
本当に不思議な男だ。こんなに興味を惹かれたのは、小松以来ではないだろうか。
美食屋トリコ。
予想以上に、面白くドキドキさせられる存在ではある。
+END
++++
小松とトリコの立場入れ替え(知り合い的な意味で)
恋に発展していく様を書いても面白い
14.8.9
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[mokuji]
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