負けられない
※百合百合しい
※リバ
ドリモゲモンを追い、デジタルワールドへ。そこでまんまと彼の罠にかかった大は、地中深くへと落とされてしまう。
見据えども見据えども、暗い闇。
そんな中でも、先にドリモゲモンを追って行ったトーマと合流することは出来たのだが……
「お前、怪我してるじゃねえか。」
いつもの容認すかした態度でいるものの、時折しかめられる顔。原因は彼の左足。青い生地に赤黒い跡、怪我だなんてバカでも一目でわかる。
「なんてことはない。気にするな。」
「…つっても血がかなり滲んでるぞ。」
気にするな、と言われても気になるに決まっている。傷口に触れると顔はしかめるし、染みへとかわる血の量は明らかに軽症ではない。
「ったく。」
勿論、怪我をするなんて予定にはなかったし、清潔なものなど土の中に存在するはずがない。悪態と同時に、まずはベルトに手をかけた大だが、トーマの戸惑った顔を見て、止めた。目標を足首へと変え、傷口を露わにした。
「やっぱり深いじゃねえか…」
晒された傷口は予想以上に深いことに、トーマ自身も目を逸らしてしまった。赤い血は絶え間なく流れ出し、しばらくは固まる気配はない。しばらく酸素に触れていれば、赤黒く固まる……はずだった。
生暖かいものが足を這う。凝固しそこねた血が吸われる感覚がする。気持ち悪く、くすぐったい感覚が。
「な、何をやっているんだ君は!」
「ん?治療だよ。都合よく消毒液なんて持ってるわけないだろ。」
「だからって……、血液型などの問題があるだろう!」
「もしなにかあるとしたら俺だけだろ。こまけえこと気にすんなよ。」
ワザとか単に不器用なのか、卑猥な水音に覗く大の赤い舌。経験はなくとも男である、体が火照り興奮してくるのは仕方がない。
「ガオモンっ」
「は、はいマスター!」
硬直している相棒を払うが、無知なアグモンに空気を読むなどの芸等は期待出来ない。そこはガオモンの仕事である。無理矢理腕を掴むと、引きずるように出口を探しに消えていった。
「マ、マサル…」
「ほら、次は上脱げよ。」
邪魔者がいなくなった矢先、上着に侵入する手。。誘っているのか天然なのか、勿論大は後者であり何も考えていないであろう。
(キミが、悪いんだ)
相手がどう考えていようが関係ない。これはチャンスだ。上がってきた顔を、優しく包みこむ。
そんなときの目的などただ一つ。
舌で味わう薄まった鉄の味と、よくわからない感覚。ゾワゾワするような、ゾクゾクするような不思議な感覚が脳を痺れさせる。
大も何故か抵抗しない。大人しく首に掴まれ、抵抗もない。慈しむように啄むように唇を重ねていると、ふと大の呆れた顔と目が合った。
「…ヘタクソ。」
可愛い顔を期待していたのに、返ってきたのは憎まれ口。
別に自信があったわけではないが、ムカつくものはムカつく。
「経験がある…わけはないだろうね。」
「ないけど、お前がヘタなのはわかる。」
「キミが言えた義理じゃあないだろうに。」
「強がれるのも今のうちだぜ?」
「何を…っうぁ……」
指を這う、熱いもの。これは先程まで触れていた舌に違いない。形を確かめるように、器用な動きをやってのける舌に、トーマからは熱い吐息がもれてしまう。
「感じてやんの。」
手、腕についた小さな傷……挙げ句の果てには首筋にも這わされチクリと痛みが走る。
「マサル!それはやめろっ」
「いいじゃん。マーキング。」
「そこは隠せない、ひぃ……っ」
「何で隠す気なんだよ。」
真剣な顔で、頭へと直接囁かれたような奇妙で鳥肌のたつ感覚。舐められ、息を吹きかけられ、生暖かさを強く意識させられ体の力が抜ける。
「男の甲斐性っていうだろ?」
いつもの無邪気な笑顔に戻った、と思えば似合わぬ勢いで唇にがっつかれた。
強すぎる抱擁に、優しさや気遣いがないのは彼らしいといえば彼らしい。だがむしゃぶりつくされるような荒々しさに、頭がボーっとしてくる。
気持ちがいい、ではない。単なる酸欠だ。
「ばっ、バカかキミは!!」
「力抜けてんぞ?よかったんだろ?」
「苦しかっただけだ!」
バランスを失った体を支えながら、勝ち誇った顔をされるのは非常に腹ただしい。
「じゃあ次は上着脱げよ。」
「いや、キミこそ怪我はしていないかい?消毒してあげよう。」
「足腰立たねえクセに何言ってやがる。」
「それは怪我のせいだろう!」
不毛な口喧嘩に、密着する体。見つめ合う、というよりいがみ合う二人は、周囲の環境も伴い異様な空気を醸し出す。
「観念しやがれトーマ!」
「キミこそ大人になりたまえ!」
「アニキ〜。こっちは行き止まりだったぜ〜。」
「空気読め!」
「空気を読みたまえ!」
身に覚えにないことで怒られ、アグモンが拗ねたのは別のお話。
++++
空気を読んでいるようで、覗き見てるのがガオモンだと思う
「右へ行ってくれ。私は左に行く。」とか言っておいて回れ右
12.6.5
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