*声
「はぁ、」
青空、快晴。そんな清々しい天気に似合わず木に座り込み溜め息をつく青年がいた。
銀髪の青年はクジャ。わけあって敵であるコスモス陣付近にいる。
別に用があるわけじゃない。ましてや争う気もさらさらない。
一人の少年を見にくるため。
「はぁ」
目的の少年も同じような溜め息をついていた。
いつの間に傍に来ていたのだろうか。少年、ジタンはクジャのいる木の根本に座り込み隣の青年に話しかけていた。“気づいたとき”というのは自分の思案にふけっていたため、本当に気がつかなかったのだ。
一体何の話をしているのだろうか。聞き耳を立てて思わず体を乗り出してしまう。
「オレは本気で悩んでるんだぜ!?聞いてるのか!?」
聞こえてきたのは悩み相談。
困った顔をして聞いているのは、茶髪の男。確か無口な彼は少年という年だったか、ふと魔女のどうでもいい言葉を思い出す。
「俺じゃなくて壁にでも話したらどうだ。」
「だってお前が通ったし。」
「恋愛相談ならセシルにしたらどうだ。結婚してるみたいだろ。」
(色恋沙汰の相談かい?軽くて考えなしの君が珍しい)
敵の中に見つけた少女は一人。それとも元の世界の記憶が残っているのだろうか。さすがに神にはプロポーズ出来まい。
必死な表情にちくり、と胸の痛みが走る。
「悪いが俺は行く。相談事は苦手だ。」
「待てよスコール!」
冷たく立ち去る少年を見ながらクスクス笑う。見ていて愉快なやりとりだ、胸の痛みも軽くなった。
女が好きなジタンには酷な話だが、破局してしまえばいいとまで思う。そうすれば心配することもなくなるのに、とまで考えて我に返った。
(心配って、何?)
「相変わらず無愛想だなー。ちぇっ」
そそくさと立ち去る薄情な友人を見送り、ジタンはどかりと座り直すと鼻息を鳴らす。
ざまあみろ、とは思うが話の続きは気になってしまう。だが自らが行けば、争いになるだけだ。ジタンとは宿敵同士なのだから、本来はこんなに近寄れない。
それでも、隠れてまで一緒にいたくて、いつも敵陣にまで来てしまう。意図なんて認めたくない、認めたくないが認めざるはおれない。
(ジタンにそんな顔をさせるのは誰?)
寂しそうに遠くを見つめる表情を見るたびに、ちくちくと謎の痛みが胸を襲う。
人は関係ないだろう、と言うが大有りだ。もし相手がわかれば、容赦なく攻撃してしまうだろう。
それほどまでにこの病気を患っているのだから。
(本当は戦いたいわけじゃないのにさ)
(今日は“アイツ”、こないのな。一人でいるとくるクセに)
同時に溜め息をついたが、互いは気づかない。何を考えているかすら、わかるわけもない。
(レディじゃないのにな…髪が長いから、化粧してるからレディと見間違うのか?)
(敵、しかも間抜けな小猿が気になるなんて…僕もどうかしてる)
(アイツの、もっともっといろんな顔を見てみたい)
(認めたくない、認めたくないけど……君のことが好きなんだと思う)
(次会ったらゆっくり過ごせるかな、ああ早く)
「会いたい」
待ち人がこんなに近くても気づけない。本当の気持ちも声も届かない。
のばした手が絡まるのは一体いつになるだろうか。それは神にすらわからない。
++++
ジタ→←クジャを書きたかった。楽しかったがオチがない
09.12.23
修正16.8.2
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[mokuji]
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