えふえふ | ナノ



*存在依存

ジタンは、一人いるのは嫌いな性分だ。
元々明るく人見知りはしない性格であるし、いつも一緒にいるのが活発で元気な青年である。騒がしい部類に入れられているのも知っている。
だから、この夜の静けさが大嫌いである。

「はぁ」

愛用ダガーを磨きながら、何度目かのため息が漏れるが、見張りなのだから仕方がない。
横で警戒心なく大の字で眠りこける、バッツを恨めしく思う。時折「ボコ」という寝言が聞こえるが、己のペットを思ってる故か、はたまた仲間の一人を指す代名詞かはわからない。
それはさておき、暇である。

「ったく。スコールはどこに行ったんだよ……」

「周囲を見回してくる」と言い残していなくなった連れに文句の矛先を変え、またため息をつく。見晴らしがいいから、という理由で選んだ丘の上が、更に寂寥感を生んで逆効果になってしまった。背中の木に背を預け、ふてくされながら黒い空を見上げた。
ふと、気配を感じた。
上を見上げると、枝葉から覗く星々が見える。そして、明らかに自然の物ではない布が葉の間から見える。
敵意は感じない。ちょうど話し相手もほしかったし、名を呼ぶことにした。

「クジャ」
「なんだい」
「何してんだよ」
「別に」


拗ねたような声だが、素直に返事が返ってきた。機嫌が悪いようにも聞こえるが、これでも機嫌はいい方である。機嫌が悪かったら普通に無視を決め込む兄なのだから。些細な違いすらわかるようになってしまった自分に苦笑するしかない。
居場所がばれても動きはないし、害はない。夜襲にきた訳ではないようだ。

「お前らにゃ城があるだろ」
「あんな奴らのところにいたくない。君達にも帰る場所くらいあるだろう」
「クリスタルもないのに、今は帰れねぇ」
「ふぅん。頑張るねぇ」
「ムカつく言い方」

つんけんとした言い方ではあるが、いつも通りだから気には止めないことにしている。
敵であり、なんとかコミュニケーションをとっているというレベルではあるが、顔は自然と笑ってしまう。話し相手がいるだけで、こんなに楽しくなるとは思わなかった。

「な。隠れてないで降りてこいよ」

しばらくの沈黙。少し機嫌を損ねてしまったらしい。
このまま無視を決め込まれるかと思い、ダガー磨きを再会すると、風が人工的に動く音がする。
もう一度視線を上げると、ゆっくりと降りてくるクジャの姿。むすっとしながらもジタンの傍に降り立ち、肩に頭を置く。羽のような髪がくすぐったいが、我慢しようと思う。

「カオスの仲間はダメでも、オレは合うのか?」
「……幾分君の方がマシなだけだよ」

眠いのを我慢していたようだ。
目を細め、いつ寝息が聞こえてもおかしくない惚けた表情をしている。いつも気を張っているところばかりだから、これは夜にしか見れない特権である。
もう言葉は交わさなくなった。無言で手入れをするジタンと、不規則な揺れに身を委ねるクジャ。そのうち、ジタンにもたれながら寝息が聞こえてきた。
最初は夜襲にきたのかと思った。いつも見えるか見えないかという所に身を隠し、ただ居るだけだった。
毎晩的確に居場所を突き止められることには焦りはしたが、何もしてこない。それが一週間も続いていたら、日常として認識されてしまうのが恐ろしい。
そのまま勢いで声をかけてみれば、案外素直に返事が返ってきた。それからだ。ジタン見張りの日には、一緒にいるようになったのは。

(黙ってれば綺麗なのにな)

奇抜な服装と、過剰な自信が目立ってしまうが、元は悪くない。男に言うことではないが、綺麗な部類に入る。
眠る頬を撫でてやると、小さくうめき声がしたが、目覚める予兆はない。

「さて、どうしたもんかな」

起きればまた、戦いになるだろう。自分で誘っておきながらも早速後悔をしてしまう。
だが逃げようにも、仲間がいるから逃げられない。

(まぁ……元から逃げれないか)

一緒にいて安心するのもわかる。故郷の匂いがするからだろうか、因縁を感じるからだろうか、それともこの感情に関係するのだろうか?
やめだ。不覚考えるのは得意ではない。とりあえずは眠る兄の顔でも眺めよう、とダガーを膝において微笑んだ。
1人じゃない夜が、こんなに静かでいいものだと知らなかった。教えてくれたクジャには感謝している。願わくば、いつまでもこんな日が続けばいいのに。

(ああ、依存だな、こりゃ)

+END

+++++
真面目にジタクジャ

修正16.8.1

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