*コイの季節
「エース、エース。」
ニャーニャーニャーニャー。春になれば動物たちにも春が訪れる。
お気に入りを見つけては、過剰なスキンシップを望み、いつの間にか増えていることも無きにしもあらず。
この世界の動物たちも、何ら変わらない。
ただ、対象が人間になるだけで。
体を密着させる猫の、喉をなでてやる。嬉しそうに鳴くと、更にすりよる体。どうやら接触がお望みらしい。
「なー、エース。イイコトしよう、な、な?」
「ナギ。今読書中なんだ。それに僕は男。」
「そんなことわかってるって〜」
どうやら、猫たちにも春が訪れたようだ。主人にべったりとはりつく野良には多少疑問が湧くが、最近は野良として思えないから気にしまい。今更一匹増えたところで問題も…。
「マキナは、静かだね。」
我が家の猫は、鳴かない。ベッドを陣取り、微睡みの中にいる。名前を呼ばれて、やっと顔を上げたと思えば、無言でエースの顔を見つめ、また枕に隠れてしまった。寝ぼけているようだ。
「枯れてるんじゃないかー?」
「静かに越したことはないけど…」
もしや、いつの間にかいい相手でも出来たのかもしれない。喜ばしいことなのだが、なんだか寂しくもある。
「エース…」
か細い声が、聞こえてきた。一層強く枕を抱きしめ、尾も耳も垂れていく。
「俺、おかしいのかな……」
「おかしくない。個人差だってある。」
訝しげな視線は、何を訴えているのだろう。解答を間違えてしまったことだけは確かである。
++++
エースの私物でオn
12.8.27
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