えふえふ | ナノ



*囚われ

鬱蒼と茂る、森の中。
暗闇と獣しかいない、闇の中。
一人取り残されたのは、不覚としか言えない。
まさか、伏兵がいるとは思わなかった。こちらにとっては初めてくる地ではあるが、敵には知った土地。暗闇であるにも関わらず、狙いは的確でチームワークにも驚かされた。
マキナも、敵の策略にはまりまんまと分断されてしまった。宛もなく味方の痕跡を探して歩いていたのだが、見つけたものは仲間ではない。
闇に不釣り合いな金の毛。
尾を持っているから、獣かと思った。しかし、ソレは人の形をしており、勢いのまま掴んでしまった尾を睨みながら奪い返してしまった。

「なんだよ、お前。」

それはこっちの台詞である。
獣の尾を持ったヒトなど見たことがない。敵がこのような目立つことをするはずもなく、原住民だという答えが出た。土地にも詳しいかもしれない。
早くレムと合流しなければ。その一心で名前を名乗れば、ふぅん、と気のない返事が返ってきた。

「ジタン・トライバル。ただの劇団員さ。」

名前か、と思った時には素早く進んでいく黄色。
待って。
体は自然と黄色い光を追っていた。

「お前、素直すぎるって言われないか?」
時折振り返りながら、光は問う。
別に。
正直に答えても、光はニヤニヤ笑いながら渋々頷いてやった、という態度。腹は立つが悪い奴ではない。さっきから、魔物を上手く避け、歩きやすい道を選んでくれているのだから。

「こんなところに劇団員がいるって言って、信じるのかよ。」

おかしいとは思ったが、嘘にしては馬鹿げているし、彼が嘘をつくとは思えない。真っ直ぐで、素直で、表情豊かで。
嘘じゃないから信じてるんだ。
目を丸くした少年の顔は、子供じみていてなんだかおかしかった。

「実はオレ、泥棒だからな。」

出たのは広い場所。見晴らしもよく、明るくて。獣も寄り付かない不思議な場所。
夜風に、星空。暗い森の中に浮かぶ丸い空はまるでバケツに閉じ込められた魚の見る世界。

「お前の心も、いつか奪ってやるぜ?」

木の上から差し出されたのは、外へ誘う救いの手だろうか。
魚は、手を取らざるはいられない。

++++
ジタマキいいかも…

12.8.17

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