2.他の友達と変わらない私
(ベルゼブブ視点)
※(1.また、冗談でごまかした)と別視点
一私は、君のなんなんだい?アザゼル君?
「べーやん。」
聞き慣れた声に振り返ると、見慣れた赤い髪と角。揺れる尻尾はいい獲物を見つけたと言わんばかりに上機嫌に振られている。
「なんやの。そないな顔せんでええやろ。」
「何はこっちの台詞だよ。なにか用ですか?」
付き合ってやりたいが今は面倒だ、目線を逸らすと猫なで声が耳をくすぐった。
「べーやーん。」
「だからなんだって聞いてんだろ。」
このまま放っていても延々とこのやりとりが続くだけだ。諦めて彼に構ってやるしかない、とベルゼブブが振り向くと眩しいくらいの人懐っこい笑顔があった。
「べーやんはクソ食う以外に興味ないん?」
…油断した。笑顔に気を取られていればとんでもなく失礼なことを言われた。なによりもこの趣味を愚弄されることをよしとしない、ベルゼブブの性質の話題はタブーだとわかっているはずなのに。あまりに彼は悪そびれなく言ってのけたため怒る気もわかない。
「高尚な趣味だと言いなさいッ!君が低俗なセックス以外に興味がないのと同、いや比べることすら失礼か。」
「失礼なんはそっちとちゃうんか?」
表情がコロコロと代わる彼に自然と笑みがもれた。他の良識ある悪魔たちならベルゼブブに対し粗相をしようとはしない。野心や欲望まみれの悪魔だが、命は大切に決まっている。だがアザゼルは別だ。自分のやりたいように動き生きる、まさに自由奔放。下級悪魔と嘲笑っている反面羨ましく思っていることもある。
「なあ、もしワシがべーやんともシたい、…って言うたら、どないする?」
彼、いや彼の友人を。
今まで疎遠になるほど身分や実力の差はハッキリりしている。だからこそ魔界では最近になって増えてはいるが、つるむことは多くはない。
(他にも、君なら相手をしてくれる奴はいるだろう)
「何を血迷ったことを。」
「男同士でも気持ちいいもんは気持ちいいで。な、男やったら興味あるやろ?」
一何故、性欲に興味のない自分を誘う。
「いくら飢えているからって私を変な目で見るのはやめてください。」
「なんや、つまらんのう。」
「つまらなくて結構。アナタの友人とよろしくやればいいじゃないですか。」
(今、近くにいるから、か)
今いるのがベルゼブブ以外でも、彼はその存在に対して同じ言葉を投げかけるのだろう。他の友人と同じ、いやそれ以下なのかもしれない。中性的と言える美しい容姿は自覚しているし、性に疎いベルゼブブはヤりやすいのだろう。
別にそれは事実だし興味がないため構わない、いや構わないはずなのだが、湧き上がる嫌悪感がある。この感情と心の痛みを認めるわけにはいかない。
(なんなんだ、その目は)
何か言いたい、しかし言いたくない、そんな悲しみと怒りの入り混じるものを自分にぶつけて、なにがしたい。
(泣きたいのはこっちだ)
(他の友達と変わらない私)
+END
++++
恋愛音痴の一方通行
11.8.1
修正:11.10.17
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