*素朴な疑問
「悪魔から悪魔への力の使用は可能なのですか?」
あるのんびりとした昼下がり。のんびりとした佐隈の一言が、芥辺探偵事務所にある視線を集めた。この部屋の賃貸者興味がないのかは本を読み続けており、しばらくパラパラという規則正しくめくられる本の音だけが聞こえる。
「さく、なにを企んでるんや?」
「いつもロクなことしか考えないと思ってましたが…やれやれ、手遅れでしたか……」
「なんで聞いただけでここまで言われなきゃならないんです!!」
怒る彼女の手が持ち上がり、グリモアと共にアザゼルの頭上目掛けて振り下ろされた。響き渡る悲鳴と、それをも上回る爆発音。アザゼルは本の形をしたチェンソーにでも切り裂かれたかのように肉片と化してしまった。
「さしずめマンダ氏の能力を公使してアザゼルくんをおとなしくさせようという魂胆なのでしょう?そんなことお見通しですよ。」
「う、なんでわかったんですか…」
「貴女の足りないオツムを読むことくらい造作もないことです。」
あまりにいきり立っていた悪魔たちの声が勘に触ったのだろうか、事務所内にドス黒い殺気が渦巻き部屋全体が震え始めた。相手が芥辺となれば部が悪い、悪魔たちは先程までバカにしていた佐隈の背中へと吸い込まれて消えてしまった。
「バカでもソイツらも悪魔だ。互いの呪いを防ぐ方法など熟知している…はずだ。」
「なんやの!?なんでワシの顔を見るんでっか!?惚れた!?惚れたんですかー!?生憎ワシは」
再び調子に乗ったアザゼルの頭が消滅し、鉄の臭いが部屋へと広がる。慣れてはいけないが慣れてしまったのは事実、佐隈も納得のいく答えが知れて満足し、アザゼルのことなど気にも止めない。
「バカなことを言うからこうなるのですよ。」
「ったく…さくもアホよのう!悪魔同士に能力が使えるならべーやんに使っとるっちゅーねん!」
「聞き捨てならない単語が聞こえましたね。バラしてイヌのエサにしますよ。」
放たれる二つの殺気。先に動いたのはペンギンで、アザゼルの腕を跳ね再び血飛沫を生み出した。
「なんやのべーやん!!照れとんのかいな!!」
「言ってる意味がわかりませんな。」
「わかっとるクセにー!!」
何かはわからない、アザゼルに耳打ちされた刹那、白い肌が赤く染まった。が、これは照れなどいう可愛いものではない、友人からの屈辱的な言葉に、だ。
「穴に肉棒をぶち込むしか脳にない低脳め…ワタクシまでも愚弄するとは死ぬ覚悟は出来てるんだろうな!?オォ!?」
舞う血飛沫も仲のよい悪魔のじゃれあいの証。今日も事務所は平和そのものである。
++++
敏感にして犯すぞ、とでも言ったんでしょう
11.7.1
修正:10.14
[ 5/174 ][*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]