ててご | ナノ



*想いを聞かせて

※現パロ




 ルルルルル、ルルルルル。
 深夜未明、急に電話の着信音が響き、ルカは、爛々と輝く電灯から視線をあげた。
眠りかけていた頭を覚醒させるには丁度いいタイミングだった。上品に口に手を当てて欠伸を漏らすと、存在感を主張する端末へと横目を向ける。スマホに浮かぶ名前を確認しては、乾いた笑いが漏れた。
ホラー映画のような非通知ではない。待ち望んでいた相手の名が無機質な活字で書かれており、無下にする理由もない。慌てて手に取れば、青い電話のマークへと指を滑らせた。

「貴方なら起きていると思っていたよ」

 不躾に聞こえてきた声に、反省の色は全くなかったが、眠気が混じったとろんとした声音である。普通の友人や仕事なら怒って無視をするところであるが、恋人なら仕方ない。元より、気難しい人なのだから。

「今日は何の用?」
「別に。なんでもない」
「ふーん?」

 経験則では、なにか不平不満が祟っての愚痴だろうか。あえてなにも言わずにニコニコと頷いていたが、ポツリと漏らす声が聞こえたのだ。

「声が聞きたくなった」
「ん?」
「なんでもない。用はないが、ちゃんと生きているのか気になっただけだ」

 少し汐らしい声音から、そういえば時間が合わず、半年も会っていなかったことを思い出す。
通話はたまにしていたが、ここ数週間はおざなりである。忙殺されていて忘れていた。
たかが数週間、されど数週間。自覚をすると寂しさが沸き上がり、咄嗟に机に飾ってある写真へと目を向けてしまう。写っているのは柔らかく微笑む恋人の顔。声を聞きながらだと、まるで傍にいるような安心感があるのが不思議だ。

「眠るまで話し相手になってもらう」
「おお……私の手が止まるんだけども」
「ならば会話に集中しろ」
「そんな無体な」

 言葉とは裏腹に、表情はにやけてしまう。恋人ではあるが、想いが一方通行でなくてよかったと思う。いつもは話しかけても相槌ばかりであるし、愛を囁いても反応はなかった。
それでも、時折気まぐれに甘えてくれる、それだけで安心する。

「私も、貴方と話したかった」
「……ん」
「このままテレフォンセックスもする?」
「自惚れるなよ特殊性癖」

 流石にそこまではデレてはくれないとは思っていたが、一蹴はさすがに寂しい。「そっか」と寂寥感を隠さず声に含ませると「……休みまで我慢しろ」と、小さく震えた声。
 ああ、彼のことを好きになったのは間違いではなかった。厳しい言動の多い世界的有名なモデルではあるが、常識離れした研究者の恋人には甘い。
幸せを噛み締めて震えていると「妄想はやめろ。気色悪い」と言われなき中傷を受けてしまった。

「貴方のこと、好きだなって思ってただけさ」
「……ふん」
「それより。最近美味しい甘味のお店を見つけたんだ。次のデートで食べに行かないか?」
「貴方のお勧めか。悪くない」
「よかった。個室もあるから好きなものを食べれるよ」
「……パフェ、食べたい」
「ご心配なく。パフェはお勧めの1つさ」

 拗ねたような声も、小さく聞こえる本を捲る音も、舌で下唇を舐めとる音も。どんな些細な音も聞き漏らさないようにと聞き耳を立てる。
これは、作業は明日までかかるだろうなと、顧客のクレームを想像しながらも笑みが止まらない。

「ルカ……」
「ん?」
「……、好き」
「うん知ってる。私もだよ、ジョゼフ」

++++
【囚写語り】2人の電話の通話時間と話の内容について語りましょう。

23.2.6


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