ライバル!?
※小鳥視点
大好きな彼の恋のライバルは、女の子と誰が決めたのだろう。いや、普通ならばライバルは"同性"と決まっている。普通ならば、当たり前のことだ。
そこで重要になってくるのは、"普通"という言葉である。
しかし、想い人の遊馬は例外がいるのだ。それが、最近小鳥の頭を悩ませている人物・アストラルである。
「本当に遊馬とアストラルって仲がいいわよね」
「そうか?」
『そうだろうか』
見事にハモった2人に、小鳥は嫉妬してしまった。
遊馬はいつもアストラルと一緒だ。そして大切な仲間であり、相棒。だが、最初2人は喧嘩をしていたのを聞いていた。アストラルの姿は見えなかったが、デュエル以外では顔をだしていなかったのだろうか、遊馬の独り言も少なかった。
しかし、小鳥も姿が見えるようになった時にはアストラルは常に遊馬の側にいた。遊馬との触れ合いを望むように様々な質問を繰り返していた。
『遊馬。今食べている"唐揚げ"とは、どのような味がする?』
「んー……サクサクして、口の中にジワーっと肉の味が広がって…」
『サクサク、ジワーっ?』
「食べたいならゼアルになるか?」
『無理に今することはないだろう。時間はたくさんある』
遊馬に甘い表情で微笑むアストラルに、小鳥は拳を握りしめた。
(アストラルは…遊馬が好きなんだ)
アストラルの表情が変わるときは、必ず遊馬が関わってくる。それは、アストラルの世界は遊馬が中心に回っているということ。遊馬を特別な目で見ているということ。
相棒を見ている目ではなく、恋をする目で。
「そうだな!俺たち、ずっと一緒だ!」
『ああ。一心同体だ』
(アストラルばっかりズルいよ…遊馬とずっと一緒にいて……)
皇の鍵の事もあり、二人が離れられないのはわかっている。だがそれを差し引いても仲がよい二人。
アストラルと遊馬は友情を超えた絆で結ばれている。しかし、その仲の良さの度が些か過ぎているのだ。
(遊馬は、アストラルの事が"好き"になっちゃったのかな…)
男同士ではあるが、アストラルは中性的だ。
そして時折遊馬が見せる優しい表情。幼なじみの小鳥すら、あまり見ることの出来ない顔に気が急いてしまっている。
このままでは、遊馬が取られてしまう。
「ねえ。皇の鍵がなかったら、アストラルは遊馬についてこられないの?」
「んー。そうだな。昔体育の時にロッカーに入れてたら、コイツの姿を見なかったっけ」
『しかし、No.96に君が捕まった時は皇の鍵を所持していた鉄男ではなく、遊馬に私の声が聞こえていた』
「そういやそうだったな」
『もしかしたら、愛の力だったのかもしれない』
さりげなくアピールをするアストラルに、小鳥は掴んでいた卵焼きを落としてしまった。しかし顔を赤らめ遊馬にすり寄るアストラルに、遊馬は軽く相槌をうつだけ。本気にしていない遊馬に、小鳥は安堵の息をついた。
「愛の力か。アニメや映画みたいだな!」
「あの時は、アストラルも一緒に取り込まれていたからじゃない?だから近くにいる遊馬には聞こえたとか」
「あ、そっか」
目に見えて落ち込むアストラルに、小鳥は不謹慎ながらも勝ち誇ってしまった。
それに気づいたのか、小鳥を見て眉を顰めたアストラルは、皇の鍵へと消えてしまった。
「おい、アストラルー」
遊馬が鍵を叩いて呼びかけるが返答はこない。
「いきなりどうしたんだ?変な奴」
「遊馬が無神経なことを言うからじゃないのー?」
「なんだよそれ!何も変なこと言ってねーだろ!」
「そういうところが無神経なの!」
無自覚も時には罪。ライバルではあるが、アストラルが他人事と思えず気の毒に思えてしまう。
(なんでこんな奴を好きになっちゃったんだろう!)
頬を膨らます小鳥に、同意するように光る皇の鍵。最大のライバルは、遊馬自身の鈍感さかもしれない。
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小鳥たちがアストラルをライバル認定する話が書きたいです。
14.12.28
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