終幕

 気付けば、跡部達は旧校舎の入り口に立ち尽くしていた。辺りはまだ、夕闇迫る時間らしく、空には橙色と濃紺の二色が浮かんでいる。
「御門は?」
「それに、狐も花子さんもいねえな」
 ひゅう、と抜けた風は少し涼しい。探しに行こうと誰ともなしに言い出した時に、旧校舎から人影が近づいてきた。
「ええか、稲荷神からのお達しやからな、破ったら稲荷神に突っ返したる」
「すまんの」
「まあ、尻尾戻してもろて良かったんやろけど」
「しっかり仕えるぞ」
 狐の襟首を摘まんだ御門だった。どうやら狐は、あの元凶のものと同じらしいが、すっかり子狐のサイズになっている。御門はぶちぶちと狐に文句をつけながらも、最終的にそれを肩にのせた。
「御門!」
「おー、旧校舎七不思議は終いやで」
「大丈夫か」
「跡部、花咲堂の栗蒸し羊羮と玉露に、金平糖追加でよろしゅう」
 御門は笑って、旧校舎入り口に置かれていた鞄を手にしてさっさと歩き出した。呆気に取られた跡部達だったが、あわてて彼の後を追いかけた。
「なあ御門、その狐の名前はなんなんだ?」
「えーと、向日やったっけ?そらコンや、狐やし」


 御門に対する数多疑問を残したまま、旧校舎七不思議は解決した。それから御門は、テニス部正レギュラー達にやたらと絡まれるようになったとか。

 それからもうひとつ。

「ぎゃあ!」
「忍足くん、会いに来たわよ!」
 七不思議問題以降、忍足の自宅トイレに花子さんが訪れるようになった。



END.


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