きみに甘える弱いぼく/カナタマ
 
 
きみがすき。
どうしようもないほど、君が好きなんだ。俺はどうしてしまったのだろう。こんなに君に溺れてしまうなんて思ってもみなかった。いや、思いたくなかった。
君を想うたびに『リニット』としての自分が消えていってしまうような気がして。いつか自分自身さえも消えていってしまうのではないかと、いつも怖くなる。
ねぇ、俺は『リニット』なんだよ?
俺はナイツオブラウンドなんだよ?
俺は、君を裏切っているんだよ?
だからお願い、早く気付いて。いや気付かないで。
 
「カナエ…?」
「ん?どうしたの?タマキ君」
「どうした、じゃない」
「…え?」
「元気、ない」
 
ああ、俺は情けない。弱い自分はもう遠の昔に捨てたはずなのに。でも俺はやっぱり誰よりも弱いままなんだ。
君に気付いてほしくて、でもやっぱり気付いてほしくなくて。矛盾している。馬鹿だ俺は。
だめだ、このままじゃ、だめなんだ。じゃあ俺はどうすればいい?分からない。自分がどうしたいかなんて答えは、もうとっくに出ているのに勇気がなくて踏み出せない。
 
「そんなことないよ」
 
だから俺はいつものようにへらへら笑って誤魔化す。そんな簡単なことは朝飯前だから。
ああ、やっぱり気付かないで。
違う。気付きたくなかった。君を想うこの気持ちにも、弱すぎる自分自身の不甲斐なさにも。余計に惨めになるだけだから。
 
「無理、するなよ…」
「っ、」
 
突然ふわりと温かい温もりに包まれる。同時に安心感のある彼の、タマキ君の匂いで肺が満たされてゆく。
抱き締められた(というよりは抱き付かれたという方が適当だろうか)驚きと緊張で体が固まる。一瞬なにが起こったのか分からなかったが彼の体温に安心した自分がいた。果たして抱き締め返してもいいのかと、俺の両腕は宙を彷徨う。しかし本能には適わなかった。
 
「…カナエ、」
「ごめん、タマキ君…もう少しこのままで、」
「いいよ」
 
痛い、苦しい。きみの優しさが。辛い、悲しい。きみに嘘をついていることが。
できることならばいっそ、奪ってしまおうか。そんなことできないのは分かっている。分かっているけれど、心の片隅で願うだけならば神様も許してくれるかな。
今ここに誓おう。絶対に君を守ると。たとえこの身が切り裂かれようとも君だけは守り通したい。
 
(神様、ごめんなさい)(俺は一生償えない罪を犯しています)(…でも、この罪をひとりで背負って生きるには)(どうにも重すぎます)
 
 
(少しは、甘えてもいいですか───…)
 

 
 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -