幸せよ、いつまでも
 

※2010年12月31日までフリーでした。
※配布期間は終了しました。

 
 
「タマキ君、行こっか」
「ああ」
 
12月24日。そう、今日はクリスマスイブである。
夜のシンジュクはいつにも増して人で賑わい、街はイルミネーションで装飾されて煌びやかに光り輝いて、所々でサンタクロースの格好をした人を何度か見かけた。
クリスチャンでもないくせに、イベント好きな日本人は人々は浮き足立っている。通りすがる人々が皆カップルばかりだ。
一方、カナエとタマキはどこに向かっているのかというと、シンジュクのスラム街にある古ぼけた教会だった。
 
「ごめんね、付き合わせちゃって」
「いいよ別に、暇だし、ここ静かで落ち着くし」
「ふふっ、ありがとう」
 
カナエはれっきとしたクリスチャンなので、クリスマスやイブはここで過ごすらしい。ボロボロで少し埃っぽいけれど、どこか落ち着くこの場所は、初めて連れてこられたときからタマキも気に入っていた。
なによりもこうして二人で静かに過ごせるクリスマスが幸せだったりする。喧騒(けんそう)とした場所よりもよっぽど落ち着く。
簡単に埃を払ってタマキは椅子に座り、礼拝堂の前に跪いてロザリオを手に持ち祈るカナエをじっと見つめた。その姿は憂いを帯びて儚げで。今にも消えてしまいそうだった。
 
「…」
 
タマキはクリスチャンでも仏教徒でもない無宗教徒だから、カナエがなにをそんなに一生懸命祈っているのか分からないが、とりあえず手を組んで祈る真似をしてみる。
(神のご加護がありますように、っと)
賛美歌を歌うわけでもなく、ましてやロザリオも持っていないタマキにはそれくらいしか祈る手段が分からなかった。
 
「お待たせ、タマキくん」
「もういいのか?」
「うん、もう祈りたいことは全部終わったから」
「…なにをそんなに一生懸命祈ってたんだ?」
 
聞いてもいいのか少し戸惑ったが、やはり気になったので訪ねてみる。するとカナエはにこっと笑って、J部隊のことと、母親のことと、親友のこと、あとは秘密と付け足した。
なんだか少し腑に落ちないが、聞かれたくないこともあるだろうと思って、タマキは一言そうか、と答える。カナエがあまりにも真剣に祈るものだから、自分も神を少しだけ信じてみようか、という気持ちが湧いた。
 
「ケーキ、買っておいたから帰ったら二人で食べよう」
「じゃあチキンもついでに買うか」
「ああ、いいね。キャンドルも灯そう」
「なんかそれ、クリスマスっぽいな」
「ははっ、ぽいじゃなくてクリスマスなんだよ、タマキ君」
「ああ、そうだな、ははっ」
 
そんな会話をしながら、二人は楽しそうに教会を後にした。
家に帰ったらキャンドルを灯して、ケーキとチキンを二人で食べる。そんな幸せがいつまでも続きますように…─────
 
 
 
 
(Happy Merry X'mas)
 
 

 
 
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