禁断の果実/カナ→タマ←ヒカ( パロ)
 

※カナエが天使でヒカルが堕天使、タマキが普通の人間のパロディです。苦手な方はブラウザバックでお戻りください。










俺は天使なのにも拘(かか)わらず神様に背き、大罪を犯してしまった。今では階級も下がり、摂関のため牢獄に幽閉されている。
そこで出会ったヒカルという名の堕天使もまた罪を犯し、俺と同じように足枷(あしかせ)を填(は)められていた。ヒカル君と出会って今日で二日目だが、互いに交わす言葉はまったくと言っていいほどなきに等しい。
二人ぼっちの広すぎるこの空間は静かすぎて、耳鳴りでもしそうなほとである。

「…なぁ」
「なに」
「おまえ、天使のくせになんでここにいんの」
「…」

準天使や見習い天使なら例はあるが、天使が牢獄にいることは滅多にないことなのである。むしろ神に忠誠を誓った天使が罪を犯すことなど、まずないのだからヒカル君が疑問に思うのも無理はない。
しかし、どちらかというと堕天使のヒカル君がここにいるのも珍しいことなのである。堕天使はもともと神に仕えていた天使が悪に身を投じ、天界を追放された天使だ。悪魔でもない堕天使は魔界にも居場所はないが、罪を犯すことに対しては魔王は決して果敢(かかん)しないだろう。神様だって一度追放した者には手を出せない。多少のことならば目を瞑らざるを得ないはずだ。

「おい、カナエ」
「あ、うん…」

そう、俺は天界の掟の禁忌の一つ、人間に恋をしてしまったのだ。最初は見ているだけで十分だったのに、彼が他の誰かと一緒にいるだけで俺は醜い嫉妬に駆られた。
そして己の欲に勝てず、さまざまな掟を破り、彼と身を結んでしまった。そもそも天使が人間に恋をすること自体許されることではない。そのうえ許可もされていないのに勝手に人間界に行き、人間の姿になりすまして彼と接触してしまった。
天使は神様に忠実であらねばならない。それなのに俺は自身の欲望に負け、神様よりも彼を、自分の意志を優先してしまったのだ。

「ふんっ、神なんて糞喰らえだ」
「…ヒカル君は?」
「俺も同じ。人間に恋した」

ただ違うのは、監禁して無理矢理犯した、とヒカル君は少し切なげに遠くを見つめて続けた。
確かに、天使も堕天使も人間と関わるのは禁忌である。そのうえ監禁して強姦したとなれば、魔王は許しても神様は黙ってはいない。神様は人間たちを愛しているから。そんな彼らを日々見守っている。だからこそ、堕天使であるヒカル君が許せなかったのか、と俺は納得した。

「…どうして好きになったのが人間だったのかな」

ぽつりと零した俺の弱々しい独り言は、冷たく薄暗い空間に吸い込まれた。果たしてヒカル君の耳には届いただろうか。
どうせ独り言なのだから、届いていなくてもよかったのだが、きっと届いてしまったのだろう。ちらりと盗み見ると、ヒカル君も寂しそうに俯いていた。



(もう、禁断の赤い実は食べてしまった)
(俺はそれが知恵の実だと知っていた)



(続く)

 
 
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