未完成なぼくら/次さも←孫
 

未完成なぼくら/次さも←孫


ふと目に入ったのは孫兵と楽しそうに会話をしている左門。相変わらず左門は可愛いなあ、とか、孫兵は左門だけ特別扱いかよ、とか、俺の左門なのに、とかいろいろ考えつつ何だか三之助には不自然に見えるところがある。いくら無自覚といえどもそれはすぐさま気付いた。

「、おい」
「おお、三之助!」

また迷ってるのか、という左門のセリフも耳に入らないほど三之助は平静を失っていた。孫兵が特に左門を気に入っていることは知っている。左門以外の人間には興味も関心も持っていないことだって知っていた。
しかしそれはないだろう、と三之助は頭を抱えたくなった。

「なんで手ェ繋いでんの?」

並んで歩いていただけならまだしも、二人は手を繋いでいたのだ。しかも互いの指と指を絡ませた恋人がする繋ぎ方で。
三之助が憤(いきどお)るのも無理はない。大事な恋人が自分以外の人間と恋人のように歩いていれば、誰であっても不愉快ななるはずである。それに、孫兵は三之助にとって最も警戒している要注意人物なのだ。

「迷ってしまったんだ!」
「だから繋いでいるだけだけど?」

それがなにか問題でも?とでも言いたそうな孫兵の目にますます頭に血が上る。
酸素を肺いっぱいに吸い込んで体内で二酸化炭素に変えて吐き出す。怒りに任せて孫兵を殴ってしまいそうな自分を深呼吸で落ち着かせた。
とにかく震える拳をほどいて自身の額に持って行く。

「言っておくけど、俺の、だからな」
「ああ、これはこれは、大変失礼いたしました」

左門の空いている方の手をとり釘をさした。刺々しい嫌みな孫兵の言い方に再び青筋がたちそうなのを必死に抑える。大人になれ、俺!と心の奥で呟いて再度きつく拳を握りしめた。爪の跡が手の内側につくくらいに。

「さ、三之助、どこ行くんだ?」
「帰ろう左門」
「おまえらの部屋はそっちじゃないだろう」

送っていってやるから手ェ繋げ、と上から目線な孫兵に苦虫を潰したような表情を浮かべる三之助。左門は二人がどうして険悪の雰囲気を醸(かも)し出しているのか理解できない、もしくはそんな雰囲気など微塵も感じていない様子である。いつものようにぽかんと開いた口がその証拠だ。

「やらねぇからな」
「いつか奪う」
「っ、んのヤロー…!」

孫兵と左門と同じように三之助も左門の指に自身の指を絡める。左門の知らないところで、左門が理解できないような戦いが繰り広げられていることを左門は全く気付いている様子はなかった。

(俺の左門だ)
(近い将来は僕の左門だね)
(孫兵には譲らねぇ!)
(悪いけど諦める気はないから)

 
 
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