きみとぼくの夢見る新婚生活/ろじ→さこ←しろ
 
 
左近がうつ伏せに寝転がって本を読んでいる。その背中に頭を乗せて左近の髪の毛をしきりにいじる三郎次。左近は別段気にとめる様子もなく読書を続けている。
いいなぁ、いいなぁ。僕も左近の髪の毛、触りたいなぁ。黒くてちょっと癖っ毛で、でもさらさらで。羨ましいなぁ。
 
「あははっ、三つ編み!」
「やめろバカ」
 
三郎次が左近の髪の毛を器用に三つ編みにしたりして遊んでいる。僕も、触っちゃだめかな。
左近は髪の毛をおろすと女の子みたい。かわいいなぁ。でも本人に言ったらきっと怒られる。きっと、顔を赤くして怒るに違いない。そんなところもかわいいなぁ。
僕は膝を抱えて二人の様子を見守る。二人とも大好きだけれどちょっと違う。左近は特別。三郎次とはまた違ったスキ。
怒った左近、困った左近、笑った左近、照れた左近。どの表情もかわいくて大好き。なによりも、左近は口は悪いけどほんとはとても優しい。だから僕は左近が大好きなんだ。
 
「左近の髪の毛っていい匂いするよな」
「食うなよ?」
「そういういい匂いじゃなくて、」
 
あははっ、三郎次が左近に一本取られた。してやったりな顔もまたかわいい。ほっぺにちゅーしたいな。でも、ほんとにしたら左近は絶対怒る。僕は頭が悪いから怒らせる方法しか思い浮かばないや。
でも三郎次のあの手、なんだか気に食わないな。僕だって触りたいのに。三郎次ばっかり、ずるい。でも左近を怒らせたくなくて勇気が出せない臆病者な僕は膝を抱えているのが一番なのかな。
 
「ん?」
「…あ、」
「どうした?」
 
左近と目が合っちゃった。それだけで胸がドキドキする。やっぱり左近はかわいい。
ちょっとだけ、ちょっとだけなら、怒らせてもいいから、触れたい。左近に触れたい。
 
「さこ〜ん…」
「なっ、なんだよっ…!?」
 
僕は思いきって左近に抱き付いてみた。わっ、ほんとにいい匂いがする。甘いっていうか、でも女の子の香水みたいなキツい匂いじゃなくて、なんていうか、ああもうわかんないや。とにかくいい匂い。とても落ち着く。
愛しくなってぎゅっと力を籠めてみた。そしたら左近も起き上がって僕の背中をとんとんと優しく叩いてくれて。それがとても嬉しくて左近の肩口に顔を埋めた。
 
「ちょ、ほんとどうしたんだ?」
「んー…なんか左近に甘えたくなった」
 
少し心配してくれてるみたいでさらに嬉しくなる。もう少し甘えても、いいかなぁ。もっと左近にくっついていたい。
正座している左近の膝にごろんと寝転がる。三郎次がずるいぞって喚(わめ)いてるけれど気にしない。今だけは、左近の膝は僕のだから。
下から左近の顔を見上げると、左近は眉を下げて、ちょっと困ったような照れたような苦笑いをしていて少しホッとする。怒ってない。むしろ優しい。僕の大好きな左近。
三郎次には負けない。負けたくない。やっぱり僕も左近をお嫁さんにしたいからね。
 
 
 
(左近って白無垢が似合いそうだよね)
(はぁ?)
(左近、大好きだよ)
(…はいはい)

 
 
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