勘違い妄想バカヤローと脳天気バカヤローのバカップル/ 作さも
 
 
左門が口付けを拒んだ。いつものように軽い口付けを幾度か交わし、左門の唇を割ってより深い口付けをしようと思ったら、顔を思いっきり逸らされた。
たったそれだけ、いや、俺にとってはかなり重大なことで。もしかして俺のことが嫌いになってしまったのだろうか、と嫌な想像ばかりが頭を過(よ)ぎる。
 
「左門…」
「あっ、ごめっ…」
 
なぜ謝る?それは俺のことが嫌いになったってことなのか?そういうことなのか?他に、好きな奴でもできたのか…?
今すぐにでも問い質(ただ)したい。俺を拒む理由が知りたい。どうしてなんだ、と。
しかし、頬を朱に染めて今にも泣き出しそうな左門の顔を見ると、悲しくて怖くなる。そして伸(の)しか掛かる独占欲と醜い嫉妬心が僅かな憤りに変わり、俺の眉間に皺が寄った。
 
「っ…チッ…!」
「さ、作…わっ、んぅッ…!」
 
左門の腕をぐいっと引っ張り、彼の小さな体を引き寄せて、再び口付けを交わす。そして無理矢理その唇を己の舌でこじ開けて、より深く口内を犯した。
怒りに任せた乱暴な口付けに、左門は激しく抵抗するが、力で負けるはずはなかった。歯列をなぞり、上顎を執拗に舐めあげてから舌を絡ませる。そのとき左門の方がびくりと震え、大きな瞳からぼろっと真珠のような涙が零れた。
 
「あっ、左門…」
「ふ、ぅう…」
「…悪ィ」
 
そんなに嫌だったのかよ、と自然と下がる眉にオロオロと行き場のない手。泣きてぇのはこっちだっつーの。
どうしたらいいんだよ俺は。左門にフられるのか?
当然と言えば当然か。拒否されてそれでも無理矢理口付けて、泣かされたとなれば、誰だって愛想を尽かさないはずがない。
俺の人生終わったも同然だ。もう死んだ方がマシかも知れない。
 
「左門、俺、」
「作兵衛のバカヤロー!」
「っ、」
「口内炎に当たって痛かったじゃないか!」
「…は?」
 
口内炎って、炎症によって口の中や舌の粘膜にできるできもの、のことか?いや、それしか有り得ないよな。
えっと、じゃあ俺の勘違いで、つまり別に左門は俺のことが嫌いになったわけでもなく、他に好きな奴ができたわけでもなく、俺はフられてないってことで。
 
「うー…」
 
左門は口元を右手で押さえて、涙目で俺を恨めしそうに睨む。ああ、左門の言う通り俺はバカだ。大バカヤローだ。
そして左門の脳天気さに少しだけ笑みが零れ、吹き出しそうになる。けれど、今この状況で笑ったらきっと左門は意味が分からないと不審に思って、さらに俺を訝しげに睨むだろう。
 
「ごめんっ!左門、ごめんな!痛かったよな!悪ィ!」
「まったくだ!」
 
ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向くこの脳天気バカヤローがたまらなく愛しい俺は、やっぱり勘違い大バカヤローなのだ。
 
 
 
(あのー…お取り込み中、失礼しますが…)
(あっ、三之助!俺のかわいい左門を見てんじゃねーよ!)
(三之助!聞いてくれ!作兵衛がな!ひどいんだ!)
(…とりあえず俺を部屋の中に入れろ。話はそれからだ)


 
 
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