ライバル一掃計画/くくvs鉢→タカ←綾
 


「つか、れた…」
「お疲れ様です、タカ丸さん」
「あ、綾部くん…」

なにか重たいものでも背負うかのように、げっそりとしながらタカ丸が食堂に入ると、そこには喜八郎が待ち受けていた。
いつもと変わらず無表情だが、タカ丸と顔を合わせると少しばかり和らぐ喜八郎の目元。極度の疲れからかタカ丸はそれに気付かず、遅い夕餉をとる。その様子をじっと見つめたままの喜八郎。少し居心地が悪い気もするが、先刻の出来事よりも随分ましなので、タカ丸は気にせず白米を口に運んだ。

「大変そうでしたね」
「…見てたの?」
「ええ、まぁ。面白かったので」
「見てたなら助けてよ…」

先程の喧騒を思い返し、また重たい溜め息をついてタカ丸は箸を止める。なんだか食欲もなくなってきてしまった。
その騒動とは毎日の恒例行事のようになってしまった兵助と三郎の口喧嘩のことである。潮江文次郎と食満留三郎のような暴力沙汰になるわけではないし、普段の仲は変わりないのだが、タカ丸が絡むと話が別になるのだ。その口喧嘩にタカ丸は毎回巻き込まれるという、とても損な役回りをしている。

『タカ丸さんを先にイかせた方が勝ちだからな』
『上等だ。タカ丸さんは私のもの決定だな』
『ふざけんな!三郎には渡さん!』
『毎日シミュレーションしている私に死角はない!』
『それはただの妄想だろ!タカ丸さんを汚すな!』
『兵助だって毎晩タカ丸さんで抜いてるくせによく言えるな!』
『うっ、うるせぇ!変態のくせに!』
『なんだと豆腐小僧!』

毎日このようなやり取りが廊下や教室や食堂でされているとタカ丸が知ったのは、随分も前のこと。恥ずかしくて死にたくなったのを今でも覚えている。
自分をネタに喧嘩されるというのも後味が悪いが、二人には公共の場というものをもう少し弁(わきま)えてほしい。そして二人の口喧嘩が、もうどうしようもなくなると雷蔵たちがタカ丸を呼ぶ。こんなケダモノ二人を自分にどうしろと言うのだ、とタカ丸はずっと悩んでいた。

「次からは助けてあげましょうか」
「えっ、ほんと?どうやって?」
「タカ丸さんが私のものになれば一件落着ですよ」
「…え、」

天の助けのような喜八郎の一言に、タカ丸はぱっと顔を上げて身を乗り出すように彼を凝視する。しかし喜八郎から飛び出た意外な一言に固まらざるを得なかった。




(フリーなままだとそのうちお二方に襲われますよ)
(…ねぇ、それって遠回しに告白してるの?ていうか本気?)
(ええ、そのつもりですが)
(…)



お題配布:モノクロメルヘン

 
 
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