それはまるで甘い果実のような/孫さも
 

小さい小さいきみ。まるで小動物みたいでちょこまかしていて、かわいらしい。一瞬でも目を放すとどこかへ逃げ出してしまうところも、小動物そのものだと思う。
他の人間には興味も関心もないけれどきみだけは、なんだか気になるんだ。いつも目できみを追いかけてる。不思議だな、人間なんか気にかけることなんてないと思っていたのに。きみだけは違うんだ。

「左門、おいで」
「ん、なんだ」

まるでジュンコを呼ぶように左門を引き寄せる。子ども体温の左門の体は暖かくて柔らかくて、心地がいい。左門も人肌に触れて心地いいのか欠伸が一つ零れた。
互いの指を絡めてぎゅっと握る。少し小さいきみの手が僕の手を握り返すのが愛おしくてさらさらな髪の毛を空いている方の手に通す。くしゃくしゃと撫でてもすぐに元通りに戻る。

「、左門…」
「んー」
「愛してる」
「いっ、いいいきなりなんだっ」

目を丸めて、熟れたりんごのように赤みがさした頬に一つ口付けを落とす。ついでに髪の毛も食(は)んでやった。甘い、味がした、気がした。
左門の体なら、どこでも甘い。甘く感じる。そうさせてるのはきみが愛しいから。

「左門、口付けしていい?」
「き、聞くな…!」
「ふっ、ごめん」
「ぅんッ…む、ん」

まるで熟れた果実のような唇に吸い付けば、そこから吐息と鼻にかかった甘い声。遠慮がちな左門の舌を逃がすまいと、しつこいくらいに己の舌を絡める。左門のさらりとした髪の毛をくしゃっと乱して、より深く口内を犯す。
とんとんと軽く胸を叩かれて、名残惜しいが唇を離すと二人の間で繋がる銀糸。左門の口端からは嚥下(えんげ)しきれなかった唾液が伝っていた。その姿は実に艶美で、普段の彼からは想像もつかないほど、妖艶さを醸(かも)し出している。

「左門は美しいね」
「そ、なことっ、言われたこと、ないぞっ…!」

乱れた髪の毛と呼吸を整えながら、口端を腕で拭う。そしてはにかみながら「美しいのは孫兵の方だっ…!」と、か細く、けれども語尾は強く呟いた。
そんな左門の薄紅色の頬がまた艶めかしい。それもまた甘くておいしそうだ。いや、美味に決まっている。
自然と柔らかい笑みを零すと、また左門の頬が紅潮する。それが恥ずかしかったのか僕に胸に顔を埋めて、ぎゅうっと抱き付いてくるきみが愛しくて仕方ない。
細く小さな体を抱き締め返してまた赤い耳を食んだ。やはり、きみの体はすべて甘い。僕だけのかわいい左門。



(おい、アイツら完全に俺たちの存在忘れてねぇか…?)
(もう完璧に二人の世界だよね)
(いいなー、孫兵、俺も左門抱き締めてー)
(孫兵はもう左門を押し倒してしまえばいいよね。そして僕たちにおかずを提供するべきだよね。ていうか毒虫野郎さっさと死ねよ、みたいな)
(かっ、数馬ァァアアア!)

 
 
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