愛は与えるものでしょう?2 | ナノ




凌牙の大きな手が背中に回り、引き寄せられて、首筋に顔を埋められた。濡れた唇が素肌に触れて下へ降りていくのを、遊馬は歓喜に湧いた思考で受け止めた。
(これ……ずっとこうしてほしかった)
どんなに忙しくても毎日言葉は交わしていたし、軽い抱擁やキスもしていたけれど、最後に身体を重ねたのは数週間前だ。セックスが全てとは言わないけれど、やはりこうしている時間は特別に思う。普段は触れないところに触れて、深いところで繋がりあう。愛しているとか、好きだとか、改めて言葉にするには気恥ずかしい想いも、触れ合ったところから伝わって、じんわり体温に馴染んでいく。互いの心を肌で感じるこの行為を、遊馬はずっと待ち望んでいた。
胸はエプロンで隠されていたけれど、凌牙は布ごと乳房を掬い上げ、脂肪の膨らみをエプロンから覗かせる。寄せて盛り上がった素肌に口付け、舌を這わせた。
「んっ……凌、牙……邪魔なら取るから……」
手を首の後ろに回して、エプロンの紐を解こうとする。けれどその前に止められた。
「せっかくそそられる格好してんだから、このまま最後までやろうぜ」
「最後までって……ひゃあっ」
布地を押し上げている胸の頂にキスをされた。唾液を含んだ舌で押しつぶされる。布越しの愛撫にじれった疼きが湧き起こった。
「うお……エロ……」
凌牙の呟きにつられて視線を落とす。そして後悔した。遊馬が着ているのは桜色のエプロンだ。唾液で濡れた部分が薄く透けて、乳首の色が覗いている。淡い桜の生地にうっすら浮かび上がった赤に、遊馬の顔も真っ赤になった。
「ヤ、ヤダ!バカバカバカ!恥ずかしいっ……!」
腕で隠そうとしたが、両方とも手を掴まれて、シンクの作業スペース部分に押し付けれた。
「可愛いぜ。隠すなよ」
「んやぁっ……!」
再び唾液を擦り付けるように唇が押し当てられた。逃げようとしても、両手を縫いとめられている状態では身動きが出来ない。与えられる刺激に身体を震わせるしかできなかった。
「はっ……ぁ、りょーがぁ……」
遊馬は乳首を攻められると弱い。強烈な快楽とまではいかないが、力が抜けてしまうのだ。踏ん張る足が徐々に崩れて、凭れかかったシンクに体重を預ける形になった。呼吸が荒くなり、下着をつけていない下腹部がジクジクと疼いた。
(触ってほしい……)
遊馬の思考を読んだかのように、片方の手が外れて、股の奥へと入り込んできた。
「んぁあ!」
「……すげえ濡れてるな」
凌牙が感嘆の息をついた。
そこは解す必要もないほど濡れぼそっていた。軽く指を入れられただけで蜜が滴る。ぐちゅりと鳴る水音にいたたまれない羞恥が襲ってきた。
洪水状態を目の当たりにした凌牙は、とても愉しそうに口角を上げた。
「もしかして欲求不満だったか?」
「ッ」
「自分から裸エプロンするくらいだしな。食ってくれって言ってるようなもんだ。聞くまでもねえか」
「う……」
視線を外して俯いた。凌牙を労わるためだと自分に言い聞かせてやったことだが、3割くらいは自分のためだった。凌牙を愛し、そして愛されたかった。久々の夫婦の時間に甘い期待を募らせていたのは否定できない。
「っ、ああそうだよ!俺は凌牙とこうしたかったの!」
半ばヤケになって答えると、凌牙はますます破顔した。
「なら、もっと可愛がってやらねえとな。これ、銜えてろ」
そう言うと空いてるほうの手でエプロンの前掛け部分をめくり、端っこを遊馬の口に押し付けてきた。隠れていた陰部がむき出しになり、濡れた部分がひくりと蠢く。途方もない羞恥を感じた。
「さ、さすがにそれは嫌なんだけど……」
銜えたら、自分から秘すべき部分を晒す格好になってしまう。愛撫してくれと性器を露出させるなんて、あまりの羞恥に消え入りたくなる。自分から裸になるほうがずっとマシだ。けれど凌牙はエプロンを外すことを許してくれず、遊馬に恥ずかしい行為をねだった。
「ずっと触ってほしかったんだろ?さっきから締め付けて俺の指を離さねえくらいなんだし」
「んやぁッ……!だめっ、動かさないで……!」
「ここ、舐めてほしくねえか?」
わざと淫靡な音を立てて蕾を掻き混ぜながら、凌牙は遊馬を掻きたてた。蜜で濡れた指で膨らんだ秘豆を弄られる。直接的な快楽が電流のように脳髄まで駆け抜け、きゅうっとお腹に力が入った。
「ぁっ、アァ……ッ!」
「どんどん溢れてくるぜ。意地を張らずに言うこと聞いとけよ」
「んあっ……も、意地悪するなよぉ……!」
「俺はお前の好きなところを触ってるだけだぜ?もっとしてやるって言ってるんだ。どこが意地悪だよ?」
「だめ、だめェ……!」
「……本当に嫌ならやめるけどな」
「あ……」
秘部を行き来していた指が引き抜かれた。物足りなさから腰が揺れてしまう。そんな遊馬に気付いているくせに、凌牙は不敵な表情でどうするかと尋ねてくる。差し出されたエプロンの布端を躊躇いがちに見やった。
(触ってほしいけど、でも……)
はしたない、という思いが抜けない。他の誰に見られているわけではないが、ただでさえ凌牙から与えられる快楽に乱れてしまうのに、自ら痴態を晒すなんてとても受け入れられなかった。
(けど……凌牙はそうしてほしいんだよ、な)
そう思うと心は揺れた。もともと今日は凌牙の好きにさせるつもりだった。羞恥や躊躇いなどかなぐり捨てて、彼の求めには何でも応じようと決意していたのだ。きっと疲れているだろうから凌牙が動くのは難しいと考え、騎乗位でも御奉仕でも何でもこい!と覚悟をしていた。少々方向性は違ったが、これだって求められていることには変わりないだろう。
「………」
したくないことを拒否する権利は当然ある。けれど遊馬は、躊躇う心を脇に押しやると、小さく口を開けた。凌牙が目を細めて指を押し込んでくる。中指と薬指で、奥に引きこもろうとする舌を挟んで引っぱられた。エプロンを用いたこの行為に、どうしても恥じ入らずにはいられない遊馬の心を引き上げようとしているようだった。
くちゅり、と唾液が絡む音が鳴る。
遊馬は頬を染めて目を閉じた。おずおずと凌牙の指に舌を絡める。
セックスは身体だけではない。心と心の触れ合いでもある。一方が求めてばかりいるのは不公平だ。同じだけの気持ちを返して初めて、心も身体もピタリと重なる。性的欲求ばかりでなく、そうした瞬間に満たされたものを感じる。
「んあ……」
口腔で絡み合った指が出て行った。上がった息を整えると、再びエプロンの布地を押し当てられる。今度は口を開いて凌牙の求めに応じた。




意図せずとも濡れた音が上がって、凌牙の興奮を煽った。キッチンのフローリングに跪き、開かせた股の間に顔を埋めた彼は、先ほどから遊馬の性器を直に愛撫していた。彼女はすっかり全身をとろけさえ、シンクに肘をついて背中から凭れかかっている。
「ふっ、うう……!」
くぐもった喘ぎ声が頭上から降ってくる。求められる気持ちを示してほしくてエプロンを銜えさせたが、甘い啼き声が聞けないのは残念に思った。遊馬が感じているのは、布地を銜えていても漏れてしまう吐息と、ずぐずぐに溶けた女陰から伝わってくる。とりわけ反応のよかった部分を何度も舌でねぶると、膣の奥から大量の蜜が流れ出てきた。それを味わいたくて、指で入り口を割り開く。舌先を内部に埋め、愛液を舐め取った。膣壁がピクピクと蠢く。離れ難くて吸い付くと、また蜜が溢れ出てきた。再び喉を鳴らして甘い蜜を嚥下する。終わりのない行為に思えるが、遊馬の膣は小刻みに収縮をくり返していた。あとひと押しで絶頂へたどり着くだろう。
「ナカが震えてるぜ。一度イっとくか?」
顔を上げて尋ねると、耳まで火照った遊馬が、髪を振り乱して嫌がった。
「俺に遠慮すんな。言ったろ?可愛がってやりてえってな」
実際、乱れた痴態を見せる遊馬を見ているだけで、凌牙の息も上がっていた。ズボンに収まっている股間も随分キツくなっている。遊馬の性器はすっかり解れているからこのまま挿入したい衝動に駆られたが、自分の欲を満たすより、まずは遊馬を満たしてやるのが先だと逸る心を押しとどめた。
親指の腹で顔を覗かせた秘豆を押しつぶすと、感極まった様子で遊馬は涙を滲ませた。内股が忙しなく震えている。なのに遊馬は絶頂を拒否するように首を横に振り続け、崩れ落ちそうな脚を懸命に叱咤していた。
「何がそんなに嫌なんだ?」
疑問に思って立ち上がり、遊馬の口から布を引き抜いた。すっかり唾液に濡れてぐしょぐしょになっている。銜えたままではしゃべれないだろうと思ってしたことだったが、口が自由になった途端、遊馬は抱きついて凌牙の唇に自分のそれを押し当てた。
「んっ!?」
思いがけない行動に目を見開く。遊馬は余裕のない様子で舌を差し込んできた。やや乱雑に凌牙の口腔を荒らしまわる。抱きつく手も背中から表に移って、シャツのボタンを外そうとしてきた。
「ふっ……俺ばっか、不公平だ!俺だって凌牙を気持ちよくしたい……!」
熱に浮かされた顔の中にも、強い意志を失っていない瞳に、はっと胸を衝かれた。
遊馬は強い女だ。下手をしたら、メンタルは凌牙より数段強いかもしれない。辛い時や苦しい時にも自分を見失わない彼女の眼差しは、こんな時にも健在だった。最初に自分から上になってもいいと言っていた遊馬だ、受け身ばかりでいるのが不本意だったのかもしれない。
凌牙が遊馬を愛したいように、遊馬も同じ思いでいてくれるのは嬉しかった。
(だが、ここで同じことをされると俺がマズい)
シャツを脱がせてズボンにも手を掛けようとした彼女を押しとどめた。
「やめろ」
「やだッ!俺もする!」
「やめてくれ。……俺だって余裕ねえんだよ」
自分の状態を告げるのは気恥ずかしかったが、そうも言ってられない。暴れる遊馬の手を取って股間に押し付けると、感じた質量と熱にぴくりと手が震えた。
「え……なんでおっきくなってんの?」
いとけない疑問に溜息を吐いた。
「お前が欲求不満だったように、俺だってそうなんだよ。どれくらいシてねえと思ってんだ?やっと抱けると思ったら、俺以上に期待して、こんな格好で待ってる嫁がいるしよ。興奮しないわけがねえ」
触れてもいないのに張りつめたそこは、少しの刺激で爆ぜてしまいそうだった。童貞でもあるまいし、そんな醜態をさらすわけにはいかない。
「一緒にイこうぜ、遊馬」
抱きしめて額をくっつけると、花開くように遊馬は微笑んだ。その笑顔を見て凌牙は思う。
彼女を可愛がりたいのは、遊馬の望みではなくて、凌牙の欲求だ。構ってやれなかった日々の埋め合わせという意味合いの他にも、凌牙の手によって乱れる遊馬の姿に征服欲を感じていた。
けれど求めるだけでは心まで満たされない。相手からも求められて、応えて、自分の求めにも応じてもらう。そうしたやり取りから心の通い合いを感じる。
遊馬も、同じことを凌牙にしたかったのだろう。そうした気持ちが嬉しいし、愛しく思う。重なり合う心を感じながら、身体も重ねたかった。


「あっ!ア、ぁあっ、あ、ぁ……っ」
濡れぼそった蜜壷が凌牙の怒涛を受け入れ、ぐぷぐぷと呑み込んでゆく。遊馬はシンクに手をつき、背中を凌牙に向けている体勢だ。立ちバックが一番負担がかからないだろうと選んだ体位だったが、裸エプロンでこれはなかなかの破壊力だった。前面と違って後背部はエプロンの紐が絡んでいるだけで、ほとんど裸だ。前掛けからはみ出た桃尻にたまらなくそそられた。そもそも裸エプロンの醍醐味は、見えそうで見えないところにある。大事なところが隠れているから、露出している部分に欲が煽られるのだ。
(これが嫌いな男はいねえよな)
汗ばむ白い背中に熱く口付けると、肩甲骨の部分がピクリと揺れて、膣が締まった。思いがけない刺激に息を呑む。遊馬のナカは温かくて、柔らかくて、離さないとばかりに食いついてくるから、すぐにでも出してしまいそうだ。しばし動きを止めて射精感をやり過ごすと、片脚を抱えてより奥へ自身を埋め込んだ。
「アアッ!」
遊馬が強い嬌声を上げた。愉悦とも苦痛ともつかない声に焦る。
「痛かったか?」
「う、うん……少し。なんか、いつもより奥にきてる気がするんだけど……」
「……ああ」
そういうことか、と胸を撫で下ろした。慣れない部分まで開かれて驚いたらしい。
後ろから挿入する体位は、そもそも奥まで入りやすい。立ったまま繋がっているので、重力により子宮の位置が下がっている。
挿入の深さからくる圧迫感をやり過ごそうと、何度もお腹から息を吐く遊馬を労わって、肩口にいくつもキスをした。腰は動かさず、内壁に凌牙の熱が馴染むのを待つ。久方ぶりとあって痛いくらいに締め付けられたが、凌牙のモノを覚えていたのだろう、やがて膣内の緊張が取れて、柔らかい粘膜が絡みつくように蠢いた。
「動くぜ」
「ん……」
片脚を抱え直し、ズルズルと性器を引き抜いた。惜しむように収縮する膣の感触に重たい熱が溜まってゆく。入り口まで戻ったところで、一気に奥へと突き進んだ。
「アァあッ!」
甘い善がり声が放たれる。勃ち上がった肉棒を突き挿れる度に華奢な肢体が跳ねた。肌がエプロンと同じ桜色に染まっていく。揺れる腰が可愛くて、遊馬を愛しく思う気持ちが胸を占めた。脚を抱えているのとは逆の腕を、脇からエプロンの下に差し入れた。地肌を抱きしめて、汗ばむ背中と胸をピタリとくっつける。
「好きだぜ……遊馬」
「んあっ!お、俺も、好き……!あッ」
直接胸の頂を摘んでやると、触れ合った背中がぞくぞくと震えた。奥まで入り込んだ性器がぎゅうぎゅうに締め付けられる。瞼の裏に白い光が走って、早くも絶頂がすぐ近くまできていることを悟った。
「りょ、りょーが……!俺、無理だ!もうっ……」
潤んだ瞳が背後の凌牙を見つめる。指と舌だけで高められていた遊馬だ。凌牙も久々に感じた遊馬の熱に、神経が思いのほか高ぶっている。
「遊馬……っ」
「ふっ……なにっ……?」
「痛かったら言ってくれ」
「え…………あぁあアアッ!?」
悲鳴同然の声が喉からほとばしった。張りつめた性器が加減なく内部を穿つ。手を胸から腰へ移動させ、性感帯を狙いすますと、遊馬の上体が崩れ落ちた。シンクに伏せて悶えている。臀部を突き出す格好なものだから、凌牙からは瑞々しいお尻も、菊門も、蜜を飛び散らせている結合部も丸見えだった。腹の下で渦巻く熱が白波を上げて波打ち、押し寄せてくる。
「やべえっ、出る……!」
「アアッ!ア、ぁあッ……ンぁ……!」
深く入り込んだ奥で、熱を吐き出した。つられて遊馬も達したようだ。細い嘶きのような声を上げて、膣が一際きつく締まった。色づく肌がぴくぴくと震えている。髪の間から覗く耳も赤かった。
「ゆま……」
誘われるように耳の後ろに口付けると、とろけた顔がこちらを向いた。りょーが、と舌ったらずに名前を呼ばれて、たまらずその唇を塞ぐ。姿勢が苦しくて舌先を舐めあうだけだったけれど、そんな触れ合いにもほっとする温かさを覚えた。








『お風呂にする?ごはんにする?それともわたし?』
新婚の定番文句を口にした夜、その全てを凌牙に美味しく頂かれ、並んでベッドに寄り添いながら、夫の寝顔を盗み見た。何だかんだ言っても疲れていたのだろう。普段は遊馬のほうが早く寝入ってしまうのに、横になった途端、寝息をたて始めた凌牙の寝顔は安らかで、遊馬はほっとした。結局凌牙の好きに翻弄されてしまったけれど、少しでも慰めになったのならよかったと思う。
「明日からお休みだし、今度こそ俺が頑張るからな」
肌蹴たパジャマに唇を寄せて、こっそりキスマークをつける。愛されるのは嬉しいけれど、遊馬だって愛したい。
眠りながらでも遊馬が側にいるのを感じたのか、抱き寄せる腕に身を委ねながら、凌牙の肩に頭をくっつけて彼女も目を閉じた。



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