俺だけのメイド様 | ナノ


俺だけのメイド様


「凌牙、見てみて!」
彼女の家へ寄った際、得意げに見せられたのは、フリル満点のメイド服だった。
「は……?なんだそれ」
「今度の学園祭の出し物だよ。オレのクラスはメイド喫茶をやるんだ。で、今衣装を作っているところ!」
「メイド喫茶……?」
一時期、旋風のように巻き起こったブームなどとうに過ぎ去ったと思っていたが、凌牙の思い違いだったらしい。一年生の彼女らは、小学生の時と違って自由に出し物ができる中学の学園祭に気合が入っているようだ。目を輝かせて製作途中の衣装を指しては、ここで失敗して縫い直したとか、フレアスカートのふわふわ感を出すために贅沢に布を使ってみたのだとか、凌牙には分からない領域の話をしている。
「そういえば、凌牙のクラスは何をするんだ?」
一区切りついたところで尋ねられたが、その答を凌牙も持たなかった。
「さあ。ホームルームに出てねえから知らねえ。クラスの奴らも俺のことなんか頭数に入れてねえだろ」
「またサボってんのかよ……」
そうは言っても仕方ないだろう。決して居心地のいいクラスではない。登校しないと時間を持て余すし、遊馬に会うことも目当てで学校には行っているが、大人しくクラスに滞在している時間は長くなかった。
「まさか学園祭もサボるつもりじゃないよな?」
問いかけにそっぽを向く。そんな凌牙の態度に返事を感じ取った遊馬は、がしりと凌牙の腕を掴んだ。
「だめだめだめ!絶対参加しろよ!?」
「どうしようが俺の自由だろ。なんてお前が嫌がるんだよ」
「だって!学園祭だぜ?小鳥達と騒ぐのも楽しみだけど……せっかくだから、凌牙ともあちこち回りたいよ……」
じっとこちらを見上げる紅い瞳にぐっときた。つい視線を外し、込み上がった思いを溜息に変えて吐き出す。その様子に遊馬は悲しげに眉を下げた。
「駄目か?気が乗らない?」
「正直言えばそうだが……いいさ、行ってやる。出し物回るくらいなら付き合ってやるよ」
すると遊馬の瞳がみるみるうちに輝き、弾けんばかりの笑顔になった。
「やったぜ!凌牙と校内デートとか楽しみだ!早く学園祭の日にならねえかなあ」
製作途中のメイド服を体に当てて楽しげに鼻を鳴らす彼女に、凌牙の頬も緩む。
惚れた弱味と言ってしまえばそうだが、凌牙はどうにも遊馬に甘かった。彼女のおねだりに否と返せた例がない。
それに彼女と学園祭を回るのは、学校中に遊馬との関係を見せ付けるいい機会だ。遊馬には内面から輝くような魅力がある。そんな彼女を自分のものだと自慢したい思いもあった。
こっそりと苦笑を漏らす。
「……俺も大概惚れてるな」
「ん?何か言った?」
「何でもねえ」
無味乾燥な日々も、遊馬がいるだけで鮮やかな色をつけて映る。どうでもよかった学園祭だが、遊馬との約束により色鮮やかな期待に取って代わった。部屋のカレンダーに大きく花丸で囲まれた日を横目で眺める。学園祭までの日数を心の中でカウントし、早くその日が来ればいいと思った。




そして学園祭当日。幸いにも天気は晴天で、在校生のみならず、保護者や他校生も多く足を運んでいるようだ。広い学園内は活気に満ちている。その盛況ぶりに、昼近くになってようやく登校した凌牙は、Uターンしたい衝動に駆られた。こういう表舞台の賑わいに身を投じるのは場違いな気がしてならない。だが勝手に約束を反故にして帰れば後で遊馬が泣くだろう。あれから彼女は毎日のように、凌牙と回るルートを考えては楽しそうに話していた。遊馬を悲しませるのは望むところではない。仕方なく凌牙は校内へ足を向けた。広い校舎なので、学園祭には使用していないエリアもある。そういう教室は学生の荷物置き場とされており、表よりは人気のないそちらを選んで遊馬の教室へ向かうことにした。
けれど荷物を取りに行き来する学生の数は少なくなく、すれ違う度に「シャークだ……」「来るなんて意外……」とぼやく声が聞こえ、腹の中にイライラが積もった。
(やっぱ来なけりゃよかったぜ……)
遊馬が隣にいない学校など苦痛なだけだ。これまでの行いの報いだと承知し、反省もしているが、好き勝手に噂されるのは我慢ならない。つい声のする方を睨むと、学生らは顔を青くしてそそくさと去っていった。
(これでまたひとつ悪い噂が増えるな)
思わず溜息が出た。落ち込む心を自覚する。
他人から悪く見られていい気分のするはずがない。けれど世の中の酸いも辛いも経験した凌牙が「シャーク」と呼ばれる以前の幼く甘い自分に戻れるはずがなく、黙って苦い感情を噛み潰すしかなかった。
(遊馬には悪いが、顔だけ出したらすぐに帰ろう)
遊馬の彼氏は自分だと声を大にしたかったが、逆に彼女まで変な目で見られそうだ。遊馬に迷惑をかけるつもりはない。メイド喫茶のタダ券を貰っていたので、はりきっているであろう遊馬の姿だけ確認したら、さっさと暇を告げようと思った。
控え室のエリアを抜けると、再び活気ある賑わいの中に戻ってきた。お昼時なのでカフェを営んでいるクラスからいい香りが漂ってくる。人と人の間をすり抜けながら遊馬のクラスを目指した凌牙は、入り口のところに見知った少女を見つけ、あ、と口を開いた。客引きをしていた向こうも凌牙に気付いて目を丸くする。
「シャーク?」
「お前は遊馬の幼馴染みの……」
小鳥とかいう女だ。以前遊馬が見せびらかしていたのと同じメイド服を着ている。さらに肩口にフリルがふんだんに盛られたサテンエプロンをかけ、頭には薔薇のレースをつけたカチューシャを、首元にはスクエアネックを巻いていた。あまり興味のない凌牙から見ても素直に可愛いと思うデザインだ。
作成中の服は見せてもらっていたが、完成した姿は当日までのお楽しみだと言って披露してくれなかった。ひとつひとつのパーツがふわふわひらひらしているな、とは思っていたが、合わさると手作りとは思えない出来栄えだった。
「遊馬に会いに来たんですよね。今呼んできます」
遊馬から話を聞いていたのか、すぐに驚きを引っ込めた小鳥が室内に向かって声を上げた。
「遊馬、指名でーす!ご主人様一名ご案内!」
「はーい!」
明るい声と共に、ぱたぱた走ってくる音が聞こえる。目の前にやって来た姿を見て、凌牙は気持ち後さずった。
「あ、凌牙!来てくれたんだな!」
満面の笑顔を浮かべる遊馬は、可愛かった。惚れた欲目もあるだろうが、可愛かった。
制服以外であまり女の子らしい格好をしない遊馬だから、フリル満点のメイド服姿は新鮮だったし、何より脚が凌牙の心をわし掴みにした。メイド服なんかと侮っていた。フレアスカートの長さだけで言えば、普段の制服姿のほうがよっぽど短いが、今日はそれにニーハイソックスとガーターベルトが付いている。絶対領域と呼ばれる白い太股が眩しかった。首から胸元にかけても、普段晒している首筋にスクエアネックがあるから、隠されたその部分を暴いて触れたくなってしまう。
「ん?なんか凌牙、顔赤くない?」
「い、いや……気のせいだろ」
「そう?」
高鳴る鼓動を押し隠して平静を装った。彼氏の動揺に気付くことなく、遊馬はにっこり笑顔で接客の姿勢に変わる。
「お帰りなさいませ、ご主人様!ただいま席にご案内致します」
ご主人様、の響きに口元を押さえて蹲りたくなったが、凌牙は必死にポーカーフェイスを保った。

遊馬達のメイド喫茶は、なかなかの盛り上がりをみせていた。
もともと平均以上の女子が多いクラスであるし、だからこそメイド喫茶をしようという気になったのだろう。可愛らしいメイド服にきゃあきゃあ騒ぐ女子の姿もあるが、男の客も結構多かった。そのおかげで凌牙も恥ずかしい思いはしないで済んだものの、次第に落ち着かない心地になってきた。
学校一の札付きである凌牙に進んで近づこうという女子がいないのは当然だ。オーダーを受けるのも話し相手をするのも遊馬なのは本望だったが、彼女だってずっと一人の客にばかり構っていられない。クラスの子と一緒に、次々やって来てはお会計を済ませる客の相手をしなければいけないのだ。
学園祭を楽しみにしていたこともあり、遊馬は人一倍働いていた。つまりそれだけ多くの接客をこなしているわけで、可愛らしい格好をした彼女がにこやかに男性客と談笑しているのを眺めるのは、あまりいい気分ではなかった。
教室内の時計に視線を向ける。12時まであと数分だった。遊馬の出番は午前と夕方で、お昼を過ぎれば3時まで自由時間らしい。その空いた時間を凌牙と一緒に回るのに当てる約束だったが、遊馬が忙しく働いているせいで、まだデートのキャンセルを伝えられてなかった。
(どうすっかな)
注文したコーヒーを口に運びながら考えていると、また新たに来客を告げる小鳥の声が上がった。しかも遊馬を指名だ。気になって顔を向けると、鼻を赤くした白髪の爺と長身の青年が入ってくるのが見えた。
(……誰だ?)
凌牙に見覚えはなかったが、遊馬とは知り合いらしい。小鳥とも親しげに言葉を交わしている。近所に住む老人とその孫といったところだろうか。
なんとなく目で追っていた凌牙は、ふらふらとした老人の足取りに眉を寄せた。赤い顔といい、あれは酔っ払っているのではないか。側にいる青年は慣れた様子で老人の椅子を引き、仕事を取られた遊馬が慌てた様子で青年の分の椅子を用意していた。
「しかしおったまげたぞい!馬子にも衣装だな。遊馬がこんな可愛いお嬢さんになるとは!がっはっは」
「師匠、遊馬に失礼ですよ」
「いいよ闇川、気にすんなって。それでご注文は何になさいますか?」
サテンエプロンからメモ帳を取り出し、オーダーを取ろうとする遊馬の格好を、老人は物珍しそうに見た。
「えらいふりふりのスカートじゃないか。どうなっておるんじゃ?」
「ちょっ!」
なんと裾をつまんで捲り上げようとしてきた。遊馬がとっさにスカートを押さえたので露出は防がれたが、それでも白い腿が一瞬だけでも晒された。反射的に凌牙は腰を浮かせる。
「も、もうっ!爺ちゃん何すんだよお!」
「そうですよ師匠!やりすぎです!」
赤面する遊馬と、闇川という青年が目を丸くして抗議するのを、白髪の老人は酔っ払った半開きの眼で受け流した。
「そんな目くじら立てなくてもいいじゃろうに……何を色気づいておるんじゃ。遊馬はまだまだ子どもじゃぞ。なあ?」
笑いながらぽんぽんと遊馬の尻を叩いた。ひっと喉を鳴らして遊馬が飛びのく。
たまらず凌牙は椅子を蹴って立ち上がった。
「てんめぇ……黙って見てれば勝手しやがって……!」
ふつふつと怒りの炎が燃え上がる。頭に血が上った凌牙は、相手が老人だということも忘れていた。近づいて足を振り上げようとした彼に、遊馬が慌てて飛びついた。
「凌牙、ストップ!爺ちゃんに悪気はないんだよっ!」
「どけ、遊馬!一発シメねえと気がすまねえ!」
「駄目だってばあ!!」
そんな大騒ぎが他の客の目につかないわけがなく、店内は何事かとざわめいた。注目を集めていることに気付き、凌牙は舌打ちをする。
「……行くぞ、遊馬」
「え?ちょ、ちょっと!?」
遊馬の腕を掴んで教室を出た。客引きをしていた小鳥が、険しい表情の凌牙に驚いて一歩下がる。引っ張られている遊馬が、すれ違い様に急いで言った。
「ご、ごめん小鳥!あとでちゃんと戻ってくるから!」
「え?な、何があったの?」
事情が呑みこめず戸惑う彼女を置いて、歩を進めた。メイド姿の少女を連れて突き進む少年の雰囲気に圧倒されて、廊下にいた人々は道を開ける。来た道を引き返すように進んだ凌牙は、一般人進入禁止の立て札があるその奥まで行くと、適当な空き教室に遊馬を引き込んだ。
「誰だよあのエロじじい……!勝手なことしやがって!」
掴んだ手首ごと遊馬を壁に押し付けて迫ると、彼女は慌てて弁解した。
「普段はあんな人じゃないよ!婆ちゃんの知り合いなんだ。デュエル庵ってところの主で、凄えんだぜ?手彫りの木像とかあってさあ……!」
「んなことは訊いてねえ」
氷点下の声音で跳ね除けると、遊馬は肩を震わせた。凌牙と壁の間で小さくなって、おずおずと見上げてくる。
「お、怒ってる……よな?」
「当たり前だ」
「うう……で、でも、なんで俺まで怒られなきゃならないわけ?俺、被害者だよな。おかしくねえ?」
怒りで我を忘れていた凌牙は、はたと正気に戻った。遊馬の言うとおり、彼女に当たる理由はない。
ばつが悪くなり、掴んでいた腕を離して顔をそらした。加減なく握った手首は赤くなっている。その部分をさする遊馬を見て自己嫌悪に陥った。
遊馬を自分のものだと見せ付けたい願望は、独占欲からきたものだ。学校一の札付きの彼女と知れれば、仮に遊馬へ好意を抱いている輩がいるとしても、凌牙の陰に怯えて手を出してこないだろう。
誰にも奪われたくなかった。だからあの爺に触れられた時、頭に血が上った。遊馬のためと言うより、自分のためだった。
なのに遊馬はこう言って笑った。
「爺ちゃんに手を……いや、足を上げようとしたのは駄目だけど、でもありがとうな。怒ってくれて、嬉しかった」
赤くなった手首を撫でながら、はにかむ彼女の笑顔に、心が痛んだ。そうじゃないんだと暴露しそうになったが、かろうじて抑え込んだ。本音を吐き出せば心が軽くなるだろうが、こんなみっともない独占欲を告げられても、遊馬は困るだろう。
ちょうどそこへお昼を知らせるベルが鳴ったのをいいことに、話を打ち切った。
「悪かった。戻るんだろ?行っていいぜ」
「うーん……でももう交代の時間だし……いいや。このまま凌牙と一緒に回るよ」
そう言う彼女に、校内デートの中止を告げるのを忘れていたことに気付く。だが先ほど遊馬のクラスで騒ぎを起こしてしまったし、手を引いて歩く二人の姿も目撃された。あの老人のセクハラに気付いた者は少ないだろう。周囲の目には「シャークが絡まれているメイドの女の子を助けた」というより「酔っ払った爺さんに因縁をつけ、止めようとした一年の女の子を攫った」ように映ったはずだ。きっと明日には悪意交じりの噂が飛び交っていることだろう。好意的ではない尾ひれがつくことも予想できる。遊馬に迷惑がかかることは確実だった。その手前、彼女との約束を反故にするのは気が引ける。
「分かった……。さっさと着替えて来い」
こうなっては一緒に回るのもそうでないのも変わらない。せめて遊馬の不名誉な憶測を防ぐためにも、仲のいい姿を見せたほうがいいかもしれなかった。
「俺ならこのまま行くつもりだぜ?」
「は?」
きょとんと見上げる遊馬に、凌牙は呆気に取られた。メイド服のまま校内を散策するつもりらしい。
「いや……それじゃ目立ちすぎるだろ。制服は?持ってきてんだろ」
「あるけど、だって夕方にはまた店に立つんだぜ。いちいち着替えるの面倒くさい」
遊馬の意見はもっともだったが、凌牙には諾えなかった。彼女に対する独占欲をたった今確認したばかりだ。他にも同じ格好の女子がいる店内ならともかく、可愛らしいメイド姿の遊馬を他の男に晒したくなかった。
「あ……でも、凌牙の好みじゃねえかな?この格好見せた時から眉間に皺寄ってるし……俺、似合ってない?」
乗り気でない凌牙の心情を察して遊馬は言ったが、その内容は全くの見当違いだった。
「いや、似合ってるぜ」
「本当?……可愛い?」
「……ああ」
可愛すぎて手放したくないくらいだ。頷く凌牙に、遊馬は嬉しそうに頬を染めた。
「へへっよかった。凌牙に褒めてもらいたくて頑張ったんだぜ!」
「よく出来てるよ」
凌牙によく見せようとしてくるくる回る。彼女が身動きするたびに揺れるスカートが可愛いかった。そこから覗く白い太腿にそそられて、背中を見せた遊馬の腰を引き寄せた。
「凌牙?」
「ちょっと味見させろ」
「え?何を……んっ」
振り向いた彼女の唇に、触れるだけのキスをした。とたんに顔を真っ赤にして固まる姿も可愛い。調子に乗って太腿に手を這わせると、焦った様子でその手を捕まえられた。
「なっななななな……!」
「俺のために作ったんだろ?いいじゃねえか」
「よ、よくない!こんなことのために作ったんじゃねえよ!」
それは分かっているけれど、今、無性に遊馬に触れたい気分だった。遊馬は自分のものだと彼女の体に刻み込みたいのかもしれない。こみ上がる欲のままに肩口へ唇を寄せた。邪魔なスクエアネックが憎たらしい。肌と布地との間に舌を入れて首筋を舐めると、大きく遊馬が背中を震わせた。
「凌牙!悪ふざけはほどほどに……!っ!」
濡れた肌を吸い上げると、一瞬走った痛みに遊馬が眉を寄せた。唇を離せば、スクエアネックのフリルに隠れるか隠れないかというところに朱い花が咲いたのが見える。所有印をつけたことに幾分か溜飲が下がるのを感じた。
「なあ……入店の時のあれ、もう一度言ってくんねえか?」
「え……?」
「お帰りなさいませ、ご主人様ってやつ。あれ、かなりぐっときたぜ」
真っ赤な顔で瞠目した遊馬は、言おうか言うまいか迷っているようだった。口にすればなおさら放してもらえないと感じているのだろう。凌牙は考える間を与えないように、捕まえられたままの手を腿の内側に滑らせようとした。
「うわああっ!い、言う!言えばいいんだろ!」
目論見どおりの反応を返す遊馬に口角を上げた。そんな凌牙を恨めしげに見上げながら、遊馬はぶっきらぼうに口を開く。
「お帰りなさいませ……ご、ご主人、様……」
「っ……」
恥ずかしそうな様子がなおさら凌牙の心を刺激した。たまらなくなって、腕の中で反転させた遊馬の胸元に吸い付く。メイド服では隠れない部分にふたつみっつと赤い痕を残すと、満足げにそれらを舌でなぞった。
「ちょっ……何てことすんだよ!」
凌牙が顔を離して、キスの痕が目立つことに気付いた遊馬が慌て出した。凌牙の腕を振り払い、胸を見下ろして情けない顔になる。
「これじゃ人前に出れねえじゃん……!」
「出れるだろ。制服に着替えればな」
「それが目的かよ!」
「他の男にはもう充分奉仕したろ。今度は俺を構えよ、遊馬」
――お前は、俺だけのものだ。
口にはしない独占欲を赤い花に変えて遊馬に刻み込んだ凌牙は、恥ずかしいやら恨めしいやらで唇を震わせる遊馬のそこに、再び顔を寄せた。



そしてたぶんひっぱたかれる(笑)
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