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特等席(凌ゆま♀)
 

凌牙の体の部位でどこが一番好きかと聞かれたら、遊馬は迷わず鎖骨だと答える。
制服でも私服でも凌牙は首元をくつろげているから、抱きしめられると首筋に顔が埋まる。肩口に額をくっつけて擦り寄ると、目を落とした先にあるのは鎖骨だ。
ほんのりと香る凌牙の匂いを吸い込んでいると、すぐそこにある窪みに口付けたい衝動が湧き起こる。勢いに抗わず唇を寄せると「くすぐってえ」という笑い声が頭上から降ってきた。
「そんなところにキスするなよ。こっちにしろ」
抱きしめる腕を緩め、凌牙は首を屈めると顔を近づけてきた。唇にキスしろと言っているのだ。
遊馬の背中を抱いていた右手が移動してうなじを抱え込み、生え際を掻き分けた指先が頭皮を撫でる。こそばゆい感触に遊馬は笑いながら首をすくめた。
「やだよ。俺は凌牙の鎖骨と仲良くしてたいんだ」
「なんでそこ限定なんだよ」
「俺のお気に入りだから!」
首に腕を絡めて、僅かに開いていた距離をゼロにした。襟口に鼻を突っ込み、素肌にピタリと頬を寄せる。こうしてくっつくのが近頃の遊馬のお気に入りだった。
(ここは俺の特等席なんだ)
凌牙の鎖骨は誰だって見ることができるけれど、こんな触れ方は遊馬しかできない。首は敏感な場所だ。よほど親密に思っている相手でないと近づけない。嫌悪感があれば肩に力が入ってしまう。
けれど凌牙の首筋は、擦り寄っても、キスをしても、緊張せず受け入れてくれた。それが嬉しくてたまらなかった。
「ったく……自分の鎖骨に妬くとか、どんな冗談だよ」
背中を抱き返す凌牙が零した嘆息に、遊馬は小さく笑い声を上げた。



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