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はじめてのデュエル(トロン兄弟)
 

「ちっくしょー!また俺の負けかよ!」
ライフポイントがゼロになり、Wは手札を投げ出すとソファに沈み込んだ。対戦相手の兄に全く勝てず、ふて腐れたようだ。Vは笑いながら弟のカードも集めてやった。
「随分いいデュエルをするようになったじゃないか。初めてとは思えない上達振りだよ」
「えっ」
起き上がったWの目が輝いた。近ごろのWはやんちゃに磨きがかかって、悪さばかりするため、Vは叱ってばかりだった。その兄に褒められることなど滅多になく、Wも嬉しかったのだろう。
「へっへーん!俺様の才能なら、デュエルチャンピオンだって敵じゃないぜ!」
「おや、大きく出たね」
「わぁっ、W兄様凄いです!」
横で見ていたVが無邪気に喜ぶ。兄弟の声にWがますます鼻を高くした。
「まずはV、お前から倒してやる。もう一戦だ!」
「え?W兄様、次は僕の番ですよ」
「俺がやるの。V、お前は黙って見てろ」
「えええー!?兄様ずるい!僕もデュエルしたいです!」
Wの服の裾を掴んで強請るVを、Wは「あっち行け」と肘で小突く。弟達の争いをVは優しい笑顔で宥めた。
「W、順番は守りなさい。Vの次はお前とやると約束するから」
「……ちぇっ」
「さあ、V。お前の番だ」
「やった!V兄様、僕はお父様からもらったこのカードを使いたいです」
「それならオーパーツデッキを組もうか。好きなカードを選んでいいよ」
デュエルモンスターズをストックしてあるボックスからカードを出して、机の上に広げた。Vがそう言い出すことは予想できたため、あからじめ関連するカードを用意してあった。
Vが頬を熱くしてカードを手に取る。
弟に席を譲ったWは拗ねてそっぽを向いていたが、カードが気になるようで、Vの背後に回ると一緒になって覗き込んでいた。
「兄様!クリスタルスカルのカードがあります!」
「ただの水晶ドクロじゃんか。お前、こういうの好きだよなぁ」
「オーパーツにはロマンが隠れてますから」
「このカードにロマンねえ……」
Vの手からカードを取って高く掲げる。Vが小さな背を懸命に伸ばして取ろうとした。
「W兄様、返して下さい!」
「さあ?どうしようかな」
「こらこら。W、意地悪するんじゃない。そんなんじゃ、いつまでたってもお前の番はこないぞ?」
Vの言葉にWは約束を思い出したのだろう。存外素直にカードをVに返した。
「さっさとデッキを組めよ。……ああもう、ちんたらするな。俺が作ってやる」
「もうっ……W兄様、邪魔しないで下さい!」
「邪魔?俺は親切心で――」
「やめなさい、お前達」
再び喧嘩が始まりそうな弟達をVが制した。



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