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救われたくない少年(凌牙)
 

突き放しても突き放しても、纏わりついて後ろを追いかけてくる遊馬に、とうとう凌牙は怒りの声を上げた。
「ウゼェんだよ!俺に関わるなって言ったろ!」
「そんなことできるわけないだろ!借りを返すって何?一体何があったんだよ!?」
足をを止めた凌牙に、必死に言い募ってくる。純粋に心配して尋ねてくれる遊馬を前にして、凌牙は唇を噛んだ。
「うるせえっ……お前には関係のない話だ」
「シャークのことなら関係ないわけないだろ!」
さも当然とばかりに返してくるものだから、たまらなくなる。誰もかもが見放した凌牙を真っ直ぐに見つめてくるのは、この紅い瞳を持つ少年だけだ。心配されるのを嬉しく思う気持ちもあったが、今は放っておいてくれという思いのほうが強かった。
北野右京という教師は、遊馬のことを「太陽のような少年」と表現した。それを聞いた時、凌牙の中にストンと納得が降りてきたのを覚えている。
九十九遊馬というのは不思議な奴だ。こちらのことなど関係なしにズカズカ踏み込んできては、その強烈な輝きで暗く澱めく闇を霞めさせてしまう。
最初は反発心を抱いただけの遊馬の人間性も、あのタッグデュエルで一番深い部分に光を照射されて以来、見方が変わった。遊馬の輝きで、纏わりつく重い闇が浄化されていくように感じた。確かにあの時、凌牙は救われたのだ。
だが今、復讐に燃える彼にその輝きは不要だった。むしろ邪魔だ。この暗く激しい怨念だけは浄化されたくない。
「これ以上関わるようなら、遊馬……お前は仲間なんかじゃねえ。俺の、憎むべき敵だ」
低い声音で吐き捨てると、遊馬がひゅっと息を呑んだ。
「どう……して……?シャーク……」
本気で拒絶されていると悟り、伸ばされた手が力なく下がる。傷ついた瞳を揺らす少年に背中を向け、暗がりへと足を踏み出した。
太陽の光なんていらない。遊馬と一緒にいると、怨嗟の念で凝り固めた心が溶かされそうになる。Wへの報復は必ずしも荒っぽい手段を用いる必要はない。他にもやり方があるなんてこと、誰に言われずとも気付いている。
けれど、どうしてもこの怒りだけは、自分の手を傷めて相手をぶちのめさなければ気が済まなかった。
(頼むから遊馬、俺に関わるな)
闇の力を求める者に、光など鬱陶しいだけだった。



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