失いたくないモノ


「俺と、付き合って下さい…!」

2人だけの教室、重なりあう視線、君との距離は1メートル


自分の顔の火照りが暑さのせいなのか、君に想いを伝えたからなのかさえわからない

そんな状況のなか真っ直ぐに見つめあう…


先に沈黙を破ったのは君だった

「ごめんなさい…。私、好きな人がいるの」

…分かっていた君が時々、その「好きな人」を見つめていた事、1番 近くで見てたから

「…そっか。俺こそ、ごめんな」

全て分かっていたシナリオ

だけど後悔することだけは嫌だった

君はペコリと頭を下げて教室を出て行った

俺は自嘲的な笑みを浮かべ床に座り込む

あーあ、俺もバカだな

失恋気分に浸ってると空気の読めない携帯電話

しかも流れてる曲は
「Good By My Love」

おいおい…、変なとこ空気読むなよ

まぁ設定したのは俺だけど

ポチッと通話ボタンを押すと、聞き慣れた健吾の声

「おーい亮太?お前どこに居るんだよ」

そう言えば先に校門で待っててと言っておいたんだった

「…フラれてきた」

数秒の間があって、いきなり健吾の声が響く

「はぁ!?まさか葵ちゃんに…?」

うっ、図星

しばらく俺は黙っていると、健吾は何かを察したようで、長い長い溜め息の後、静かに淡々と話はじめた

「あのなぁ…、少しくらい俺に相談してくれてもいいんじゃねぇの?頼りねぇけど、応援くらいはできたしよ」

怒ってるような心配してるような複雑な声のトーン

そんな健吾の声に、ふっと笑ってしまった

「わりぃ、わりぃ。…ありがとうな」

本当あいつは、お人好しだよな

俺と同じくらいバカで頭悪いけど、どうしようもなく真っ直ぐで、いつもニコニコしてて、んでもって半端なく友達思い

そんな健吾はダチとしてすげーいい奴



…まぁ、これじゃ
葵ちゃんも惚れるよな



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