白い花だけが残されていた。
柔らかに風に揺らぐその花束が、ポツリと床に。
夢に落ちる寸前の言葉を思い出して、急いで駆けつけたら既に手遅れ。
一体どうしたら本の数日でこんな芸当ができるのかと現実から目をそらしたくなった。
何も残ってはいなかった。
画鋲を使うことさえしなかったから。
壁に小さな穴の一つでさえも残っていない。
ベッドもソファもテーブルも。
カーペットもテレビもキッチン用具も。
置いてかれた花束だけを残して、どこかへ消えてしまったらしい。
「……、さよな、ら、か」
その花束に挟まれたカードに走る金色が眩しかった。
あぁ、逃げ足ばかり早い人。
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どれくらいへたれかなと考えたら、多分これくらいのことはするんじゃないかっていうくらいのへたれですよ、という話。
カードには案外、口座番号でも書かれていたりして、とひとりで大笑いしていました。
無難なところで、琴ちゃんの名前とか。かなぁ。
余計な一言は書くにかけずじまいといった印象です。
いやぁ、ダメな男の鑑だね、あんた!と背中を叩いてやりたい!笑
mae/◎/tugi>