山吹さん、結構子供っぽいですよね。だって。それは、僕がその分、君に心を許してるからだよ、なんて言ったてこで、ころころと笑うだろうか。
がじりと噛んだままだったストローから口を離す。確かに、こんな癖にもならない癖があるのは…言われてみれば子供っぽいのかもしれない。
僕だっていい歳なんだよ?なんて言ったとこで、犯罪行為をそうと分かりながら続けるような人がですか、だなんて、なかなか厳しいお言葉。まぁ、それもそうかもね。
でも、ほら。その方が距離が近い感じですいいんじゃない?まぁ、もっとクールで大人な人が好きっていうなら、流石に考えるかもしれないけど。
携帯がまぬけに光る。着信。今、忙しいんだけどなぁ。琴ちゃんに促されて仕方がなく耳に当てる。仕方がなく。
やかましい女の声。同期の一人だ。更に後ろのほうから複数人の声が聞こえる。ろくでもない。なんだい、と聞いてあげる僕優しい。ねっとりと気持ち悪い声で、こっちに来ない?だとさ。行くわけねぇだろ。
「その子とはお茶するのに?」
「…ないわ」
電話ごしでも顔を顰めたくなるのに、さらにすぐ近くから同じ声が聞こえては…ひどい顔だろうなぁ。ははは。
「ほらぁ、あんた以外はみんないるのよ?」奥の個室に同期やらなんやらがわいわいわいわい。何人かがにやにやこっちを見ている。鬱陶しい。女はぐいっと僕の袖を引いた。空気読めよ。向こうから不良みたいな奴も来た。散れっ!散れー!こっちくんな!押し問答しているうちに、名も忘れてしまった同期Bが琴ちゃんに近づいて、その肩に、手を。
ぱしん。
「…」「つれないわね!もう!」「山吹ぃ…ちょっとくらいいいじゃねーの、なぁ?」
吐き気がする。その首切り裂いてやろうか。元々嫌いなタイプだ。勢いよく振り払えば、醜い顔でこちらを睨みつけてくる。あーあー、もう。これだから、嫌なんだよ、鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい!
困った様にこっちを見る琴ちゃん。癒し。その手を掴んで、彼女の肩に触れた男を蹴りつける。その手を切り落としたいのを我慢してるんだから、やれやれ、感謝してよ、なんてね。この店には来にくいなぁ。残念。
店をでても、しつこく電話がかかって来るもんだから、ついつい「殺すぞ」だなんて、今時子供でも言わないか。あー、恥ずかしい。琴ちゃんが一緒でした。見なかったことにしておいてね、ごめんね、こんな予定じゃなかったんだけど、ね。また着信。携帯は川にぶん投げた。データなら移してあるから大丈夫大丈夫。山吹さん、と焦った声も可愛いね。天使。間違いない。携帯が沈んだあたりをじっと見つめてる琴ちゃん。新しく買うからいいよ。
「……山吹さん、本当に子供ですね」
よしてよ、照れるだろ。君にそんなに言われるほど見られてるなんて!ははは、冗談冗談。言ってみたかっただけさ。さ、さ、仕切り直し。アイスでも食べに行こうよ。近くに美味しいところがあるんだ!
*
気にしなくていいよ。
見なくていいよ。
知らなくていいよ。
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