「馬鹿は風邪ひかないってのは迷信だったんですねー」

「なにこの人?冷やかし?」

「やだなーセンパイが風邪ひいたって聞いたからお見舞いに来てあげたんですよ」



よっこいしょーと言ってベッドのすぐそばにあるイスにフランは腰かけた。絶対遊び半分で来たよこいつ、ちょっと笑ってるもん。フランの笑いって大抵人が失敗したときとか苦しんでるときとかに見せるもので少なからずもサディスティック的な意味合いが含まれている。嫌なやつだよなホント、はやく帰れー!



「聞くところによるとー、センパイ薬飲まないらしいじゃないですか」

「あんな苦いの飲めるか」

「ガキかよー」

「寝てたら治るからいいの!もうあっちいけ」

「心配してるっていうのに随分な言われようですねー」

「あんたの場合は違うでしょ。ほれほれガキはとっとと任務にでも行きなさい」

「へえー」



しっしっと手で払う動作をしていたらふいにその手を掴みフランは私に覆い被さってきた。口元はにやりと弧を描いていて、普段は見せない彼の表情におもわず私はぎょっとした。



「あ…あの、フラン?」

「ガキなんかに襲われたらセンパイ面目丸潰れですよねー?」

「え…え?あ、私がガキって言ったこと怒ってんの?」

「別に怒ってませんけど」



いや、あきらかにムッとしているあたりやっぱりフランはガキだと思うんだけど、言ったら言ったでまた機嫌悪くなりそうだから黙っていた私ってかなり大人。



「うんうん分かったからさ、そこどいて重い」

「あー、どうしてこう鈍いんですかねー」

「え、なんの」



なんのこと?といい終える前にフランに唇を塞がれた。驚いて声も出なくて硬直したままでいたら口内に生ぬるい水と粒が注ぎこまれて、薬だと分かったけど抵抗する間もなくゴクンとそれを飲み込んだ。同時にフランの唇も離れて私はとっさに枕を奴に投げつけた。



「ばかばかばか!」

「あれーファーストキスだったんですか?」

「うるさい!薬飲んじゃったじゃん!」

「そっちかよ、ていうかまだ分からないんですかー?」

「何言って…」



「分からないなら分かるようになるまでキスしてあげましょーか?センパイ」



いつもよりも低音の声でにやりと笑って舌なめずりをしたフランの目が狂気的というか野獣的というか、とにかく危険を感じずにはいられなかったはずの私の顔が真っ赤になっているのは全部全部風邪をひいたからで決してこのカエルにドキドキしてるわけじゃないんだ!とかなんとか考えてるうちにフランがまた覆い被さってきて目の前が真っ暗になって、


その唇で融解




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