外ではじりじりと太陽がアスファルトを照りつけていて、だいぶ気温が上がっている。クーラーが効いている図書館だから何も感じないものの、そういえば今日は30℃越えるんだっけ、と今朝の天気予報を思いだしながら手に持っていたシャーペンをノートの上に転がしたら、それが視界に入ったのか黙々と夏休みの宿題を解いていた耀がふと顔を上げた。



「お前ほんと集中力ねーあるな」

「私は充分勉強したよ。今日はここらへんで終わろう!」

「7月中には宿題終わらせるって言ってたのはどこの誰あるか」

「私ですねすいません」



分かっているなら続きをやるよろし、と再び耀は問題集に目を向けた。しかし一度やめようと決めたらなんだか本当にやる気が削がれてしまって、何をしようかと考えながらぼんやりとガラス張りの大きな窓の外を眺めた。外では小学生らしき男の子数人がプールバックを片手に走っている。いいなあ、プールか。夏だもんな。



「ね、ね、耀」

「なにあるか」

「プール行こう」

「一人で行くよろし」

「ひとり!?」

「…宿題終わらせたら考えてやってもいいあるよ」



ずっとノートに目線をおとし手を動かしながらも器用に会話する耀。まったく真面目すぎるぜ!とヨンスの口調を真似したら真顔で頭をはたかれた。なんて冷めている人なんだろう。退屈した私は頬杖をつきながら黙って耀を観察することにした。伏し目がちの目が瞬きするたびに揺れる長いまつげ。いつもと違って高めの位置に結い上げている髪はなんだか夏らしい。ぱっと見女だよなあと考えていたら、ばっちり耀と目が合った。



「集中できねーある」

「私と一緒か」

「お前が見てくるからある」



ふん、と鼻を鳴らして耀はカバンに教科書やらノートやら詰めはじめた。どうやらよっぽど集中力が欠けたらしい。



「ほら、いくあるよ。」

「え?どこに?」

「プールに決まってるある」

「え!ほんと?」



もたもたするなら我は帰るある、なんて言うもんだから私は慌ててカバンの中に筆箱やノートを雑につっこんだ。その様子を見た耀はまたひとつため息をついて呆れていたが、頬を緩ませた彼を見てしまった私はぽかんとして耀を見つめた。すると私の視線に気づいたらしい彼はハッとして頬を染めると私のカバンを奪って歩きはじめた。なんだかんだで耀は優しい。嬉しくて顔がほころびそうになりながら小走りで彼の背中を追いかけた。


溶けちゃいそう




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