蒼狼アルミナイズ | ナノ

オツキミ山合戦1



「………何、あの全身黒タイツ……」
「いや、んなこと言ってる場合かよ…」


オツキミ山とやらに到着すると、入口付近に何やらクソだせえ黒タイツの集団がわらわらといらっしゃった。

ご退場願えねぇかな…無理だろうな…

剣山と糸目が神妙な顔をして俺を奴らの死角の岩陰に引きずりこむ。首根っこをひっつかまれて思わず噎せ掛けたので思い切り剣山の足を蹴っておいた。

「痛ェよ!」
「知るか。で、何なのいきなり」
「あれはロケット団の団服だ。あの《R》のエンブレム…間違いない」
「タケシも無視かよ…」

その場に胡座をかいて座り込む。ぶつぶつうるさい剣山を放置し、糸目は事情を知らない俺に声を潜めて説明した。



………つーか、アレだな。

さっきのが、俺の探してたロケット団か。


「約五年ほど前か。ここカントーで、ロケット団という秘密組織が出来た。
裏社会を掌握した彼らは追って大々的な行動に移り始め、ポケモンの乱獲や実験、街の主要施設の襲撃など数多くの悪事を働いた。
俺たちジムリーダーはポケモン協会の指令はもちろん、自分の街の安全を保つ為にそれに立ち向かったんだが…リーダーの中にも、ロケット団の息がかかった人間が数人いてな。下手に動けずにいたんだ。
俺たちの代わりにロケット団を潰したのは前リーグチャンピオン、マサラタウンのレッド。彼の活躍で組織の頭領は姿を消し、組織自体も事実上の解散となった…………筈なんだがな」
「まあ実際、目の前にいるしね」

ちらりと岩の隙間から黒タイツ集団の方に目を向ける……………女はスカートか。かろうじて。

「それだけじゃないぜ。ジョウトの方でつい最近、ロケット団復活未遂みたいなもんがあったんだ。幹部筆頭にラジオ塔占拠して、雲隠れしてる頭領を呼び出そうとしたらしいが……それも、今のセキエイリーグチャンピオンに阻まれてる。
まだ日も浅いのに、どうして奴らはまた活動を………」

そこまで聞いて少し解った気がした。

ギルの手紙の宛先である『サカキ』を黒タイツ共が呼んで、計画は失敗したものの呼びかけ自体は届いていたのだろう。そしてロケット団が再び蘇った。
根拠はこの状況と、後一つ。

ギルバートは、『ロケット団のボスだ』と言った。

あのおっさんが、
・・・・・・・・・・・・・
元と言わなかったのが証拠だ。

職業柄だかなんだか知らないけど、あのおっさんは人の肩書きを間違えることは絶対にしない。
そんなこんなで妙な確信を持った俺は、険しい顔をする剣山と糸目を何処か蚊帳の外で眺めていた。

「とりあえず警察に連絡を………」
「無理みたいだぜ」

ポケギアを取り出した糸目に剣山が首を振る。不思議そうな目をした糸目に、剣山は自分のポケギアを見せた。

「繋がんねえよ。まさかと思ってラジオの方にしてみたら………ビンゴだ」

表示された番組名は、《なぞのでんぱ》。
流れる趣味の悪いBGMに眉を顰めると、剣山は溜息をついてオツキミ山を見遣った。

「前回のジョウトでの一連の事件の中にもこんなのがあったらしい。
チョウジタウン、いかりの湖………

この《なぞのでんぱ》は、ポケモンを強制進化・暴走させるロケット団の電波だ」
「なんてことだ……」

強制進化、ねえ。そんなもんがあるのか。
剣山達との間に乗り越えられないテンションの差があるのは俺が場慣れしているせいか、それとも別に理由があるのか。自分の善悪の基準が普通の人間と大幅にずれていることは自覚している。

「……よし、じゃあ役割分担だな。俺とゼロが中に入って奴らを倒してくから、タケシは入り口を塞いで外にいる連中が中に加勢にこられないようにしてくれ。イワークとかで入り口を封鎖するんだ」
「了解」
「………ちょっと待ってよ、何で当然の如く俺まで戦力に数えられてんの」
「ん?大丈夫だよ。お前あんだけ戦えるんだから、ロケット団にも引けは取らないし」

そういう意味で言ったんじゃないんだけど。

人の話を当然聞く筈もない剣山に言う気力も無く、俺は内心ため息をついた。









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