蒼狼アルミナイズ | ナノ

Stand by ok?



「エイド、れいとうビーム!」
「キッキュウゥゥゥッ!!」

早朝、朝7時。
俺は昨日叶わなかったエイドの調整を行っていた。

エイドはうちの手持ちの中で一番起きるのが早い。たまにボックスから出して野宿してると、俺やお嬢が起き出す頃には周囲からきのみを沢山集めて朝飯のためにスタンバってるのが常だ。
そんなエイドに合わせて俺の代名詞たる低血圧を気合いで返上し、今日は朝練と洒落込んだ。

ポケセンの建物から離れた庭の片隅、そそり立つ岩の塊を発見したのでそれに向かって技を放つ。特攻が高いエイドの技は芝生を焦土にしかねない威力だから、砕いても文句を言われそうにないものが無難だ。

「そのまま破片に十万ボルト」
「キュウッ!」
「………ん、よし」

寸分違わぬ位置に放たれた電撃を見て頷く。コンディションはいつも通りみたいだ。
ぱちぱちと未だに静電気を帯びる頭をふるふる振って、エイドが此方に向かってぽてぽて歩いてくる。俺はその頭に指をかけて撫でた。

「キミ、また電気技のコントロール良くなったね」
「キューウ」
「今日は頼むから」
「キッキューウ!」

戦意十分。一時間ほど経っていたので意気揚々と返事をするエイドと一度ポケモンセンターに戻り、漸く起き出した他のポケモン達と一緒に朝飯を食べた。

さて、カントーでの初陣だ。

派手に華麗に圧倒的に、全力で叩き潰そうか。


***


手持ちをお嬢、シュラウド、エイドの三体に戻した後、俺はポケモンセンターを出た。
物資の補給は…まぁ要らないだろうとフレンドリィショップをスルーして(一体になっているイッシュのポケモンセンターがどれだけ便利か解った。このノリだと俺はこの旅の間面倒だという理由で補給をサボる)港をぼうっと眺めながらその先のジムを目指す。奥にポケモン大好きクラブの看板が見えたが興味がない。

さあ行くかとジムにたどり着くとまたしてもジムの前に小さな木。昨日斬ったよな俺。畜生驚くべき無駄な生命力め。
人通りも多いこの時間帯にナイフを出すのは些か遠慮したいので、俺はお嬢につばめがえしで真っ二つにしてもらった。本来ならいあいぎりが必要?知るかよそんなの。常識が来い。

「……さ、行くよエイド。目指すは達磨以外のジムトレーナーの全タテだ」
「キューウ」
「昨日ぶっ倒れたことで気なんて使ってきた奴がいたら殺すぞ」
「キ、キュー……」
「つーかあわよくば達磨も全タテだ」
「キュウ!」

ジムのドアの前でエイドに適当に気合いを入れる。中のアドバイザーに俺の言葉が聞こえたらしくびくっとされたが、まぁ気にしない。マジで勝負にそんなこと持ち出されたら殺す。
士気が十分高まったところで――――――――


バタァァァァアン!!!

「頼もー」
「普通に入ってきて!」
「何だ何だ!?」

勢いそのままにジムの扉を蹴破ったところ、アドバイザーからキレの良い突っ込みが飛んできた。中々やるじゃん。
中のジムトレーナーも何やかんや騒いでたけど、来たのが俺だと解ると「あああいつか」みたいなノリで持ち場に戻っていく。どうやら昨日一日で俺のこのジムにおける知名度がかなり高くなったらしかった―――嬉しくねー。

「き、気を取り直して。ようこそトレーナー!ここはクチバジム、リーダーのマチスは電気を使う……」
「知ってるから良い」
「俺の唯一の仕事!!良いから聞いて!」

押しきられた。
アドバイザーの話を仕方なく聞いていると、ジムのあちこちにあるゴミ箱を漁り達磨へのゲートを開くボタンを探すということだった。実に面倒だがこのアトラクション染みた仕掛けはジム特有だから仕方ない。むしろ大砲で壁に激突したり蜜の壁を無理矢理通り抜けて年齢制限がかかりかねない容貌にされることもないだけカントーのジムは良心的だ。
まあでも今日の目的は、正直八割方俺のストレス発散にある訳で―――――

「面倒だ。ジムトレーナー全部潰してから悠々とスイッチ探してやる」
「話聞いてた!?なるべく戦わないように探すのが醍醐味なんだけど!」
「売られた喧嘩は借金してでも三倍返し。俺は自分のポケモンにそう教えている」
「キューウッ!」
「教育方針の方向変えるべきだよ」

ぶつぶつ言っていたが、結局アドバイザーはおいしいみずをくれなかった。聞き損だ。


***


「エイド、かえんほうしゃ」
「鬼―――!!!」

失礼な。俺は悪魔だ。

全タテ快勝。基本力押ししつつ、PPが切れたら他の技で対処。そんなこんなで今最後のトレーナーを倒した。

「ゼロお前何でそんなに強いんだよ!」
「さって、スイッチスイッチ」
「無視すんな!!」

ったくうっせえな電気オタク共。エイドが強いのなんて当たり前でしょ………あ、発見。見つけたスイッチを押すと達磨のとこへ繋がる通路の電気バリアが一段階消えた。

「ゴミ箱じゃなくて宝箱とかにしろよ、手ぇ突っ込むの嫌すぎんだけど」
「ゲーフリに言え」
「ちょ、独り言に返事すんの止めてくんない?敗者その3」
「呼び方に悪意があんだよてめえ!!」

達磨のジムの面々は皆突っ込みが上手かった。漫才の稽古でもしてんのかな?チェレンを講師に招けばきっと素晴らしい授業になると思うんだけど、まぁ実際にそんなことしてたら俺は軽蔑の視線を送るね。
とにもかくにもそんなことを考えながら、俺は二つ目のスイッチを見つけて押した。とたんに達磨への道は完全に開く。

「お、開いた」
「リーダー!こいつ負かして下さいよ!!」

バリアが消えたのを確認したトレーナー達がそんなことを達磨に言うが、まあ正直負けてやる気はこれっぽっちもない。当たり前だろうが。

「さァて……やってやろーじゃん、ね?エイド」

ホルダーの一番前に付けたボールが揺れた。エイドのボールを取って手で弄りながら達磨の前へ。昨日のちょっと抜けた様な雰囲気は払拭され、不敵な笑みを浮かべている。

………いーねぇ。そうこなくっちゃ。

「もう昨日の事は気にしねーぞ坊主。

俺はクチバジムジムリーダーマチス!勝負だ!」

そう叫んで達磨がボールから出したのはオレンジ色の鼠みたいなポケモン。頬に電気袋があるのか、バチバチと電気を散らしている。
………準備万端ってか。


「俺はブラックシティのゼロ。
始めようか……行っておいで、エイド!」
「キュ―――――ゥッ!!!」

エイドはボールから出ると、力強く応えた。


……さあ、イッシュのポケモン見たこと無くたって、昨日も今日も散々エイドは見ただろ?
言い訳は聞かないぜ。

「使用ポケモンは四体!途中交代は挑戦者のみ許されます!

ジムリーダーマチス対、挑戦者、ブラックシティのゼロ!………リーダー、負けないで下さいよ!」
「解ってらァ」

ニヤリと笑った達磨に、俺は同じ様に返す。

「行くぜ?」
「とっととしろよ」

審判のフラッグの音と同時に、俺達は声を上げた。


「エイド!」
「ライチュウ!」






「「十万ボルト!!!」」











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