KIRIBAN | ナノ





My love





『ねぇ…。着替えをするのに部屋を取ってるんだけど…』



心なしか華帆ちゃんの声が怒ってる…

仕方ない…

今回は明らかに俺が悪い…



「…うん。俺も行くよ〜♪」



二人並んで会話もなくエレベーターに乗り込んだ

無言の空間がすごく不気味…

小さなバッグから部屋のキーを取り出す様子を見る

今、何を考えて俺とこの空間にいる…?

彼女を抱きしめたくて手を伸ばそうとした時、扉が開いて彼女が先にエレベーターを降りた

行き場のなくなった手をポケットに突っ込み彼女に続いて降りる

部屋のドアを開け、先に俺が入るように促される

ドアの閉まる音を聞く前に後ろから抱きしめられた…



「…なっ…、華帆ちゃ…?」

『ごめんなさい…明彦。黙ってお見合いした事、怒ってるよね…』



わずかに震えてる彼女の小さな腕…

同じ事考えてたんだ…

そう思うと愛しい気持ちが湧いてくる



「…華帆ちゃんの事、信用してるよ。でも…勝手に乗り込んで行くのはルール違反だよね…。…俺の方こそ、ごめんね…?」



彼女の震える腕にそっと手を添えると、ビクッと反応する



「ねぇ?抱っこしてギューさせて?」

『…え?』



彼女の答えを聞く前に細い腕を掴み部屋に向かって歩く

ベッドの端に腰掛けると、両手を彼女に向かって大きく広げた



「…ギュー…させて…?」



彼女より低い目線で、今日やっと華帆ちゃんの顔を見れた…

泣くのを我慢してるみたいに、眉間に力が入ってる



『…あきひ…』



最後まで俺の名前を呼べずに華帆ちゃんが飛び込んできた

それを…

受け止めて彼女の背中に腕を回す…

あれ…?

あ、そうか…着物…



『…あ、明彦…』

「な〜に〜?ムラムラしてきちゃったぁ?」



何を言おうとしてるかなんでお見通しだよ



『手の位置が…』



顔を真っ赤にして、モゾモゾと体をよじる



「ん〜?だって華帆ちゃん着物だからさ〜。背中に手を回したくても帯に邪魔されてんだよね〜」

『だからって…』



可愛いなぁ…



「だって抱っこしてギューしたいんだからさ〜。…仕方ないなぁ、それじゃ取っちゃうねぇ〜。…これ」



彼女が恥ずかしがっていた理由は、俺の手がお尻の位置にあったから…

帯締めをスルスルと手際よく解いていく



「…へっくしゅ…」



鼻がムズムズして思わずくしゃみ



『ちょ、明彦!…髪が濡れてる…』



あぁ、まだ乾いてなかったんだ



「ん?ちょっとねぇ…」



心配するその顔…

眉をハの字にして俺を明らかに煽ってるよね?



「じゃー、華帆ちゃんがあっためて?」

『へっ?』

「フフン♪一緒にシャワー浴びよ♪」



真っ赤になった彼女の頬にチュッとリップ音をさせる



「最近、コミュニケーション不足なんだよねぇ♪…華帆ちゃんは?」

『…も、もう!…聞かないで…』



耳まで真っ赤になって…

こんな彼女を見たら、さっきほんの一瞬でも裏切られたかもと思ってしまった事を激しく後悔する







ちゃんと繋がってるよね?

華帆ちゃん…



俺は君を…

君は俺を…

いつも想っている…



ボタンは掛け違えてなかった








-end-

2010.08.11



華帆様に捧げます

30000番フミフミありがとうございました

これからもよろしくお願いいたします

華帆様のみお持ち帰り可です

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