KINDAN | ナノ





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自分達の順番がきて、私たちは乗り込んだ

最後に選んだのは、定番の観覧車…

向かい合って座ると、彼が口を開く



「今日は、どうでしたか?」



少し疲れたのか、ため息混じりに聞かれた



『うん、楽しかったよ!杏平、貴重な時間をありがとうね…』

「いえ…次はいつこんな時間を作れるかわかりませんからね…」



少し上がったゴンドラから外を眺めてそういう彼は、夕焼け色に染まっていて…



『疲れた…?』

「…?いえ、別に…」



――会話が…続かない…?



『ねぇ…私、何かしたかな…?』

「…えっ?…いえ…」



――やっぱり端切れが悪い…



つい先ほどまで夕焼けで染まっていた空が、だんだんと濃い藍色に支配されてきている

もうすぐ頂上に着く…

楽しかった1日の終わりに私は淋しさを感じていた

彼も私と同じ様に淋しさを感じて無口になってしまったんだろうか…

ゴンドラから地上を見下ろし、イルミネーションに包まれた乗り物を見る

今度はいつこんなふうに会えるのかな…

学校に行けば顔を見ることができる

だけど、教師と生徒に戻らないといけなくて…



「また、来ましょう…」



杏平の言葉にハッとする

まさか、聞けるとは思ってない言葉だったから…



「もう、私とは来たくないんですか?」



益々、低くなる彼の声に首を横に振る事しかできなくて…

すると、彼は私の隣に移動してきて



「今度は…お化け屋敷は、勘弁してください。あれは…ダメです…」



杏平が中指でメガネを直す



「ちょっと…貴女の前で強がってしまいました。私にだって苦手なものはあるんですよ」

『クスクス…』



堪えきれなくて笑ってしまった

その時、私の唇に杏平の長い指が触れる



「貴女って人は…全く…」



ため息をついたと思うと私がかけていた伊達メガネをはずした



「これで…貴女を黙らせる事ができる…」



そう言うと自分のメガネも外し、私の視界は杏平でいっぱいになった



「目を閉じて…」



私の唇に温かいものが触れた瞬間、彼の舌が私に絡みついてきた



『…ん…はっ……』



呼吸をすることも奪われ、必死にもがく…

だけど、彼は私をなかなか離してくれなくて…

やっと唇が離れた時、私は肩で息をしながら彼の胸に顔を埋めていた



「…美花…」



不意に名前を呼ばれ顔を上げると、メガネ越しではない彼の瞳に釘付けになった

おでことおでこをくっつけるような形になり、益々私の視界は杏平でいっぱいになる



「今日は楽しかったです。
いろんな貴女の表情が見れて…なかなか面白かった…ですが…
私がお化け屋敷が苦手だという事は、くれぐれも他言無用です…」



彼の瞳に私がうつっている

私の瞳にもきっと彼がうつっている



『私も今日は楽しかった。ありがとう…。それから、誰にも…言わない。私だけが知っている、杏平だよね?』

「はい…貴女しか知りませんよ」



そして、杏平は私のおでこに優しいキスをしてくれた



















ねぇ、高校生の貴方に夢中なんだよ…私…

いつも余裕でいる貴方から、目が離せないでいる…

想うだけで溢れる涙

支配される喜び

骨まで溶けてしまいそうな甘さも…飢えも…

どちらの温度かわからなくなる位交ざりあう肌も…

誰も教えてくれなかった

そんな気持ち

そんな感覚

好きなだけ…

本当にただそれだけ…




















帰りの電車で彼女は疲れてしまったらしく、私の肩にもたれて眠ってしまった

彼女の存在が私の中でどれほど大きいのか毎日実感している







学校で貴女が向ける笑顔にどれほどの影響力があるかなんて…貴女は知らないんだ

貴女は私のものだとわかってはいてもいつも不安なんですよ






何も考えないでいい

思考にフタをして…目を閉じて

私の声だけを聞いてほしい…









貴女の一番に、私はなれているんでしょうか…



私の一番は…美花…貴女です
















-end-

2009.04.22


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