MUSICIAN | ナノ





耳朶を焦がす魔法






係の人に言われたまま、私は客席で瑠禾を待っていた

広くて誰もいなくなったホールは少し怖い…


恐さを紛らわせる為に私はステージに上がった

瑠禾が弾いていたグランドピアノが置いてある

さっきまで回りにいたスタッフも今はここにいる気配がない

震える右手の人差し指を鍵盤に落とす



ポ〜ン♪



静まり返ったホールに響き渡るピアノの音…

気持ち良さそうだったな…瑠禾…

何よりも音楽を愛し、ピアノを愛し…

いろんな事があって、その為にたくさん悩んで

それでも彼がピアノを弾きつづけたのは、何よりも大好きだったから



ポ〜ン♪



『…いいね…瑠禾にたくさん愛されて…たくさん触れてもらって…』

「ヤキモチ?」

『え?』



その声に振り向くと、そこには瑠禾が立っていた



「…俺は、美花の事愛してるし、たくさん触れているつもりだけど…?」



私の独り言をまさか本人が聞いていたなんて思わなくて、恥ずかしくて彼の視線から逃れる



「ねぇ…?…ヤキモチ…?」



少しずつ縮まる彼との距離に

ほのかに香る彼の香水に


久しぶりの瑠禾だと自覚させられる



『…ヤキモチっていうか…』



視界に入った彼の足元

そのまま彼を見上げて



『今日は招待してくれてありがとう…瑠禾、すごく素敵だった』



私の全部で一番に伝えようと思っていた言葉を彼に伝える

だけど、彼の表情はそんな言葉を待っているんじゃないと訴えている



『…会えなくて…寂しかったから…』

「ふーん…」



彼の真っ直ぐな視線にドキリとして…

戸惑う…



「そのワンピース、やっぱりよく似合う…」



良かった…

気がついて、喜んでくれた



「あっ…」



何かを思い出した彼の表情…

私をピアノの椅子に座らせて、その後ろに立つ



『…どうしたの…?』



そう聞いた私の唇に瑠禾の人差し指が立てられて、その後の言葉を塞がれてしまった

瑠禾の手が私の手と重なると、彼の唇が私の耳に触り…



「…俺は、誓う…

50年後の君を…今と変わらず愛してる…」

『………』

「…美花…?」



何て言葉を返していいのかわからない…

あ…



『瑠禾…今の台詞って…』



数ヶ月前、瑠禾がはまっていた昔のトレンディードラマの台詞…



「…返事…は…?」



返事…



『あ…』



重なっていた瑠禾と私の手が離れると…

私の左手薬指には指輪が輝いていた



「結婚して…?…美花…」



瑠禾の腕が私を後ろから抱きしめてくれる

瑠禾の頬に手を伸ばして、私から唇を重ねた


ほんの一瞬の出来事に瑠禾の大きく開いた目がとても印象的で…



『…私がおばあちゃんになっても、キスしてくれる…?』



その言葉に私の大好きな笑顔を浮かべる


耳に唇を寄せて…



「うん…」

『フフ♪…よろしくお願いします』



瑠禾が囁いた耳がアツくなって思わず触れる


数えきれないほどの言葉とメロディーを瑠禾に貰って

いつも心をあったかくしてもらっていた



もう

瑠禾のいない人生なんて考えられない



朝も夜も貴方を感じていたい

大切な瞬間も一緒に…

















「…美花…ねむ…い……」

『…もう、瑠禾…?』



私の肩に置かれた彼の顎

体に絡み付く彼の腕

首筋にかかる息



大好きよ…

瑠禾が…



『私の為に頑張って準備して、寝てないんでしょ?』



彼の寝息を聞きながら髪を指で梳く






目を覚ましたら

もう一度囁いて

魔法の言葉を










俺は、誓う

50年後の君を

今と変わらず愛してる…

















-end-

title by : 空想アリア様



2010.10.06

※ルカちんは『101回目の○ロポーズ』にはまり、DVDをかなり見た設定です(^q^)w

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