一回しか言わねえからな
コイツ何を言い出して…
『一度挑戦させてください♪』
両手で拳を握って闘志をオレに見せてくる
真剣な顔で懇願してきて
マジコイツって…
かわ…かわ…
「やってみれば?」
ちょっと体を動かして場所を譲る
コインを投入してクレーンとぬいぐるみをジッと見る真剣な表情の美花
こんな顔も出来るとか、初めて知ったし
何かを決めたのか、眉にクッと力が入った瞬間
ボタンを押しクレーンが動き始めた
あまり確認をすることなく
オレから見てもとても大雑把に動かしたクレーンはぬいぐるみへと一直線に進み
『えい♪お願い、ホラエモン!』
なんか恥ずかしい台詞を吐き出し、掛け声と共にボタンを押す
そんなお願いでホラエモンがあっさり取れたら警察いらねーっての
ため息を付き、視線を後ろのクレーンゲームに移す
シッフィーか…
ゴトン!
『キャー!!拓斗さん、やった♪取れましたよ』
その声にまさかと思い、視線を戻す
「…ゲッ…マジかよ…」
『はい♪これは拓斗さんにプレゼントです!』
「…い、いらねーし…」
精一杯の強がりを美花にぶつけた
「こっちのホラエモンのがでっかいし、オレ狙ってんのそっちだし…」
いくらつぎ込んだと思っ…
なんか…急に覚めた…
「…やめた…やっぱ、こっちするし…」
シッフィーのクレーンゲームの前に立ちコイン投入
ガラスに映る美花が視界に入って…
何?コイツ祈ってんの?
バッカじゃね?
チャンスは…3回…
1回目
ダメ…
2回目
カスリもせず…
3回目
またガラスに写った美花に視線をやる
まだ、祈ってるし
クッソ…
ええっと、なんだ?
えい、おねがいしっふぃー(棒読み)
こんなんで取れるか、バーカ
ゴトン!
『拓斗さん、凄い!!』
あ?
今、何が起こった?
取り出し口から小さいシッフィーを取って美花がオレに差し出す
『はい♪拓斗さん、凄いです!』
ちょ、バカ!
そんな笑顔をオレに向けるな!!
めちゃくちゃ…
「かわいい…」
『拓斗さん…?』
は?
オレ、今何を口走った?
ちょ、待て待て!!
『そんなにシッフィーちゃん好きだったんですね!マスターも見抜いていたとは凄い!』
なんか、わかんねーけど勘違いってやつか?
美花の差し出すシッフィーじゃなく、ホラエモンを取った
「やる、シッフィー…オレ、ホラエモン派だし…、あと…」
口を閉ざしたオレに視線を外さない美花
顔を近づけ、そっと囁く
「今のはシッフィーに言ったわけじゃねーし…美花がかわ…かわいい…」
『え?』
真っ赤になる美花は、やっぱ…かわ…かわ…
『拓斗さん、よく聞こえなかったのでもう一回言ってください…』
「っ!…一回しか言わねーし」
『もう、拓斗さんの意地悪!』
「そんなん今更だし」
偶然にも同じ大きさのホラエモンとシッフィーは
結局、オレん家に置いてて…
いつも目に付くパソコンデスクに仲良く並んでる
ほんとは一回じゃなくて
何度も言いたい
かわいい…
好きだ…
って…
でも、ガラじゃねーし!
諦めろ!
つか、オレがキモイ…
-end-
Title:確かに恋だった様
2011.12.01
もの凄いゲーマーなたっくんなのに
クレーンゲームがヒロインちゃん以下だったらクソ萌える(#^.^#)
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