MYSTERIOUS THIEF | ナノ





あの日の天使


自分の一番触れてほしくないとこに、ガキだからってズカズカと割り込んでほしくなかった…
だけど…
気がついた時にはチビをどなりつけてて
目からボロボロと涙をこぼすチビの姿が目に焼き付いた



『う…うぅ…うわああああああああん!』



堰を切ったように泣き出して…



「お、おい!…泣くな!つうか、ああ…どうしよ…」



ここに来る前にじいちゃんに飴をもらった事を思い出し、泣き止んでほしくて



「んっ!」



チビに差し出した



「やる!」



飴を見た途端、袖口でゴシゴシと涙を拭くと



『あ〜ん』

「は?」



小さな口を一杯に開けて俺が飴を口に入れるのを待っている
人の口に物を入れるなんてした事ねーし…
しかたなく、包みから飴を取り出してチビの小さな口に放り込んだ



『ん〜、おいし〜ね〜♪』



機嫌が直りホッと安心する



「もう、泣くなよ…」

『うん♪』





□■□■□■□





俺の記憶があるのはここまで…
いつの間にか遊び疲れて眠っていたらしく、気がついた時はじいさんと車に乗っていた
めんどくさいと思ったけど、無邪気な顔で【おにいちゃん】なんて呼ばれて
しっかりと手を繋がれると
胸の奥の方があったかくって…

あれから会う事もなかったけど、何故か鮮明に覚えてる
コロコロと変わる表情に
変な歌…
可愛いわけでもないのに印象的な笑顔が俺に強烈な影響を与えた
どんだけ女が寄ってきても、チビと比べるとブスばっかで…
ま、俺に近づく奴なんて柳瀬や健兄、宙目当てだとわかってるから余計に中身がブス!
チビは本当に純粋で…

俺の天使…

って…、隣で大きな口開けて寝てるコイツだし…
天使…とはかけ離れてるかもしんねーけど
笑顔はあの時のまんまだし、中身なんて最高だし…
コイツが…美花が
柳瀬狙いの女じゃなくてホントに良かった
つーか、俺の女を見る目、バッチリだし!
覚えてるわけねーよな…
俺でも記憶は曖昧で、分かったの最近だし…



『…ん…、拓斗さん?…』

「すんげー、イビキ!俺、寝れねーし!マジ最悪」

『え?…ウッソ…ごめんなさい…』



寝起きなのに俺の冗談も本気で切り返すとか…



「…かわい…」

『え?…拓斗さん!もう一回言って』

「ぜってー、言わねーし!」



あぶねー…焦った…
心の声が洩れてるとかありえねー



『も〜…、せっかく天使の夢見てたのに…』

「はっ?天使?」



何、コイツ!



『うん、子供の頃に会った天使なんだけど、久しぶりに夢見ちゃった』



…おい、ちょっと待て…



「何?美花の初恋の相手かよ…」



どこまで好みが似てんだよ、初恋の相手を天使と呼ぶって…



『初恋…なのかな?』



寝起きで目をこすりながら、まだ少し虚ろな感じで考える



『目付きが悪くて…怖かったんだけど、すごく優しくて…
そうだ!飴もらったんだ!私、怖くて泣き出したから…だけどもう会えなかった…』



なんだよ…、俺だと分かってないけど思い出してんじゃん
なんか、すげー美花の事が愛おしくなってギュッと抱き寄せた



『…?…拓斗さん?…』

「黙ってろ…」

『もしかして…ヤキモチですか?』

「うるせー」



ホントはヤキモチなんかじゃない…
コイツの初恋が俺で
俺の初恋も美花で
2人して、初恋の相手の事を【天使】なんて呼んで…
なんかわかんねーけど、理屈じゃなく繋がってると思った…
俺と美花は恋に落ちる運命だったんだと



『ふふ♪私には拓斗さんが天使ですよ?』

「!…お前、マジむかつく…可愛い事言いやがって」



コイツにはかなわない…
いーよ、それでも…
お前が俺の天使…



『今も昔も私の天使は拓斗さんだけですよ?』

「あ?…お前、気がついて…」

『フフフ♪』






-end-

2012.02.24

xxx ヒヨコ様に捧げます

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