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……………
サラから見合いの話を聞かされ、驚いたのはつい先日の話。
カレンダーの日付は某月の土曜日。
彼女が見合いをする前日の夜だ。
「はーい、皆ディナーよ!」
ビッキーはいつもと同じハイテンションでテーブルへ料理を運んできた。
今日のディナーはチキンソテーだ。
彼女の声を聞き、徐々に仲間達が集まって食事が始まる。
「んで…そいつが…」
「え!本当に!?信じられないー!」
いつものように絶え間ない会話。
いつものようにくだらない話題。
笑って食事を楽しんでいるいつもの光景。
「ごちそうさま」
そんな中、食事が始まって10分足らずで席を立ったのは一番端に座っていたサラだった。
皿の上にはまだライスが半分程度残っている。
「ん?サラもう食べないのか?」
「ええ…あんまりお腹空いてなくて。食べていいわよ」
隣に座っていたジムの前に皿を持っていく。
普段からクールな奴だが、今日は増して元気がないな。
「あ!そういえばお前明日見合いをするんだったな。もしかして緊張してるのか?」
彼が思い出したように問いかけると、彼女は若干動揺した顔でそっぽを向く。
「してないわよ」
…してるな(笑)
「サラ、お前本当に見合いなんてすんの?」
向かい側に座っていたナイジェルが、夕食のチキンを食べながら口を挟んできた。
「すんの?じゃなくてしないといけないの。言っとくけど今更やめてくれなんて言ったって無理なんだからね」
「わーってるよ」
3人で話していると、会話に興味を持ったらしくビッキーとボビーとリッキーもこちらを向いてきた。
「あ!サラ明日はお見合いだったね!相手の人はどんな感じ?イケメン?」
ビッキーはスプーンを置いて、ニコニコしながら訊いてくる。
「かもね」
「かもって何ですか?」
「私もまだ見た事ないの。だから顔も性格も何にも知らない」
仲間達の「えっ?」という表情。
一時的に食事がストップしてしまった。
「本当か?」
「嘘言ってどーするのよ」
「顔も知らない人とお見合いするって怖くないのかい?」
「どうかしらね」
そっか…とボビーが呟き、ナイジェルは軽く水を口に含んだ。
「でも…私、この縁談を断るつもりないから」
「え?なんで!?」
「大人には色々と事情があるのよ」
大してまだ歳を重ねていない小娘が何を言っているんだ。
ジムが眉をひそめて首を傾げると、彼女は開き直ったように笑って椅子を後ろに下げた。
「まぁ。ウチのお父さん頑固だから、断ろうとしても無理だと思うけどね」
食べ終わって空になった食器をキッチンへと運ぶ。
お皿を水につけ、手をタオルで拭…
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