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……………
「や、だから俺はな」
「だから何なの!?」
「んな、怒んなって…」
上手く誤魔化そうとしても、怒るばかりで弁解する余地もない。
逃げようと思っても、あまりに距離が近くて逃げ出す隙もない。
どうすればいい?
絶好のチャンスが巡ってきたにもかかわらず、やはり今更になって自信がなくなってきた。
やはり、俺は俺だ。
とびきりのイケメンでもなければ金持ちでもない。
そんな俺にコイツが…
「ジムッ!!」
急に怒鳴った彼女に、思わず体がビクンと反応した。
「なっ…何ですか?」
「言いたい事はハッキリ言う!例えそれが良い事だろうと悪い事だろうと!それが男ってもんでしょ!?」
「ッ…」
・
・
・
ふと、我に返る。
ビッキーは、なんとなくわかってるんじゃないのか?
彼女の顔を見ていると今更ながらそう感じてきた。
コイツは俺が自分を好いている事を既に知っていて
その言葉を言ってくれるのを、ずっとずっと待っていたんじゃないのか?
だとすると…
俺はなんて情けない男なんだ。
そう思った途端、握っている手に自然と力がこもった。
俺は…
「ビッキー!」
「…ッ」
意識しすぎてやたら声が出てしまい、少し驚いて彼女は目を見開いた。
しかし、今はそんな事どうでも良い。
今まで何を俺は、上手くやろうとか失敗しないようにしようとか
馬鹿みたいにあれやこれや複雑に考えていたんだ。
答えは簡単だ。
ただ、一言だけ口に出せれば良い。
「おっ…俺は………その…お前がな…」
「………。」
真剣に聞いてくれているビッキー(と野次馬3人)
今度こそ真っ直ぐに目を見て、声に出して
「すっ…す…」
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